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第二話 ハッシュバルの森
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しおりを挟む案内されたのは地下にすこしばかり深く潜った場所だった。
このラハールは帝国時代から存在する。
その時代の地下遺跡を利用している、とロッソは語る。
「さあ、どうぞ」
通された部屋は守っている、とロッソが言う通り、数人の歩き方や身のこなしからそれなりに手練れとわかる獣人数人が、部屋の周りを固めていた。
「あんた」
と、ロッソと共に降りてきたリザをアリシアは見下ろす。
これは身長差があるから仕方ない。
「なんでしょう?」
「あの連中はあんたより、強いのかい?」
リザはすこしばかり考えて口を開いた。
「まともにやり合うなら、私の負けかと。
暗殺なら、私かと」
「ふうん……、男の子が女の子のフリをして。
声変わりもしてない。まだ12歳くらいかい?」
「……十三です」
「ふん。なら、暗殺の技を磨くより、あんたは槍でも深く習うべきだね」
「槍……?」
自分の暗殺の腕は未熟だと言われた気がしてリザは不機嫌な顔になる。
「さっき掴んだ限りじゃ、あんたはあたしよりもいい体格になる。
ああ、これは言い方が悪いね。あんたは短剣を得意としてるだろ?」
「そうですけど……」
「もうじき、そうだね。
身長ならあたしどころか、ロッソの旦那より低い程度にはなるはずだ。
暗殺者には不向きな体格になる。
それなら、槍の方がいい。
あんたは界が広い」
「界、ですか?」
どう言い表したものか。
「間合い、と言い換えたほうがいいかもしれないね。
剣よりは広い。かといって体術では広すぎる。
やるなら、槍や矛がいいだろうね」
「あの魔法のような技を習いたいと思いますけど、それなら……」
あの時。
手首を掴まれた後に、刃先に首筋を近づけるまで。
どれもが自分の意思ではなかった。
まるで魔法で操られているような、そんな感覚だった。
リザはそれを言いたいのだろう。
「あれは魔法じゃない。
技でもないけどねえ。
まあ、いまは見ようじゃないか。
もう一人のダークエルフとやらを」
話をしているうちに、その被害者のダークエルフが横たわる部屋の中に入る。
「おいおい……。
なんだい、これは」
アリシアは言葉を失う。
そこにいたのは、両目を金糸で縫い付けられ、しゃべろうと口を開いたらすべての歯と舌が無い。
そんなアリシアの同族だった。
「拷問を受けたにしても、だ。
おかしいんだよ」
と、ロッソは言う。
「見つけた時、手足と首に巻かれていた枷と鎖はそこそこ上物だった。
それにな」
と、首輪をしていた被害者のダークエルフの首筋を指差す。
そこには焼き印がされていた。
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