少しだけ狂った世界線で僕らは愛を語らう

星ふくろう

文字の大きさ
19 / 23
第三章

異質な愛の胎動 1

しおりを挟む
 ふーん、どこまで本気なんだろう?
 樹乃の心は意外と冷静になり始めていた。
 考えたのはほんの数十分だし、確かにあの拷問? はやりすぎた。
 でも、それってこの女の性欲&ストレス解消にしかなってないんじゃないの?
 佳南の奴隷歴は三年。
 七星と樹乃の壊れた愛は六年。
 依存なのかそこを自ら望んで選ぶのかは、とても大きな差があることを樹乃は知っていた。
 佳南が本気で生涯尽くすのならそれにかかるお金、飼育費用。
 それに割かないといけない時間と心。
 愛玩用の犬や猫でも最低限の保護と管理、そして愛情が必要になる。
 それを与えながら七星との愛を深めれるのか‥‥‥
 一切の愛情も何も与えないけど、そこにいろ。
 それだけでこの女は満足する?
 犬だって愛情がなければ去っていく。これは人間だ。
 社会の歯車で大学生なんてその一員としての役割を担っている。
 どこまで本気なんだろ?
 試すしかないか。
 七星によくやるように、頬を数度平手打ち。
 そして髪が‥‥‥短い?
 これじゃ、御団子も作れないし、ポニーテールにもできないじゃん。
 ああ、なんだ。そういうことか。
 樹乃はようやく現実に気づいた。
「動くな、いいね?」
「へ‥‥‥?
 はい、御主人様」
 ふーん‥‥‥返事だけはまとも。
 奴隷としては、だけど。
 遠矢の部屋からあの悪趣味な手足にそれぞれできる拘束具を持ってきてそれを佳南に自分でつけさせる。
「よいしょっと!」
「ちょ、きつい‥‥‥」
 あー身体柔らかい。無理して気絶されなくて良かった。
 少しだけ不安があったがまあ、うまくいった。
 首の後ろで両足首を交差させたのだ。
 まるで顔だけが浮き出たみたい。
 そして両手をその前に引き出してそれぞれを首輪に接続具で嵌め込む。
「うん、これでいいわ。
 ねえ、佳南?
 あんた、処女?」
「そう、です」
「まあ、人間語話せとは命じてないんだけど。いまは許す」
「ありがとうございます‥‥‥」
 どこから切り出そうかな?
 こいつは穴を開けるための準備をしてる。
 そう思ってるはずだ。
「樹乃の腕くらいなら、入るよね?」
 あ、少しだけ顔が青ざめてきた。
 樹乃は冷静に観察していく。
「ま、さか‥‥‥」
「後ろなんて言わないよ?
 前。所有物なるんでしょ?
 物をどう扱おうが、樹乃の勝手だよね?」
 ほらね、どんどん顔がこわばっていく。
 仙骨辺りを先にマッサージしておけば、痛みも快楽へと変わる。
 そんな知識を興味本位で七星と二人で仕入れてきた。こんな時に役立つなんて。
「だらしないメス豚。
 なんでよだれ垂らしてんの?
 怖いんでしょ? いじられてなんで?」
 煽ってみて反応はどうかな?
 返事はちゃんとするはずだ。そういうふうに躾けられてるんだから。
「それ、は‥‥‥樹乃様にいじめて欲しいからーー」
 ふうん、そう言ってればみんな満足するもんね? 佳南、頭いいんだ。
 男の心の捉え方、よく知ってる。
 ついでに女も。
「あっそ。
 樹乃、前も言ったけど。覚えてる?」
「な、なにをでしょうか?」
「彼氏も家族も作るな。一生、樹乃の犬になれ」
「はい、そのことを理解しています。
 あ‥‥‥」
 そんな甘い声で鳴かないでよ、こっちが引くわーー
 そう樹乃は心で叫んでいた。七星がいい。七星だけがいいと。
「なら、お金も住む場所も全部自分で用意するんだよ?
 樹乃が好きな時に好きなように遊ぶから、まあ、仕事もするだろうから連絡は入れたげるけど。
 愛情は全部、七星だけに捧げる。痛みだけ、お前に与えてやる。
 それで満足できるの?」
「それは、だって、飼って下さるって‥‥‥」
「飼うとは言ったけど、愛するとは言ってないよ?
 それに痛みを受けとめるのはあの場所でだけ。これからは好きなように焼くし、拷問もする。
 病院も全部自分で行くの。七星に出せない、怒りのサンドバッグが欲しいから」
 そう言って、部屋に設置してある筋トレ用のマシン裏のサンドバッグを思いっきり打ち抜く。
 ただし、左手で‥‥‥右手は痛いからだ。
 それでも、ボスンっ、とそこそこいい音が、身体の底に沈みこむような音が佳南を震わせる。
「もしかしたら、内臓破裂とかなるかも?
 まあ、自業自得だよね?」
「そっ、そんなこと、聞いて‥‥‥ない。
 ああっ‥‥‥」
「いじられてあえぐなメス豚」
「申し訳ございません‥‥‥」
「いま怖いよね?」
 短い髪を掴んで目の奥を覗き込んでやる。
 これはされたことがないはずだ。
 ガラスのような視線で覗き込んでやる。無表情の冷たい機械みたいに。
「ひっ‥‥‥」
「それでも気持ちいいの?
 こんな恐怖と怯えた目してるのに。いまにも泣きそうだよ、佳南?」
 ゴロンと後ろ向きにしてみる。
「ふーん、こっちには無いんだ、タトゥーもピアスも?
 前の御主人様の趣味じゃなかった?」
 上から体重をかけてやると、あはは。
 骨がミシミシ言ってる。もう少し、増やせないかな?
 そう思って目が行くのはやはりダンベルのディスク。重しだ。
「え?!」
 いきなり重しがなくなって不安になる佳南。そしてーー
「ぐっ‥‥‥」
「はーい、いまこれ四十キロね。
 もう一本、ほら、あげる‥‥‥こっちは倍の八十キロ」
 嘘である。両方とも四十だ。ただし、そこに樹乃が乗るが‥‥‥
「い、いだい、いだい、無理、やめで‥‥‥!!?」
「悲鳴あげるなら、あと二百キロくらい乗せようか?」
 耳元でそっと優しくささやいてやる。
 視界に部屋奥にある、重しの山を見せつけて。
「------!!!!??」
 そうそう、こんなことされたことないよね?
 大事に大事にお姫様みたいな調教されてきたんだもんね?
「これがあたしの調教。で、どうする?
 なる、ならない?
 いま、決めなさい」
 動けないように一番、きつくなるように首輪を引き上げながら追い込んでいく。
 死なないかなー、窒息死とかならないかなーー!!??
 樹乃の心が悲鳴を上げていた。
「あ、あう‥‥‥な、なる」
「なあに?
 じゅのきこえなーい!!」
 更に首輪を引き上げる。肉体も精神もそろそろこのお嬢様には限界のはずだ。
 片手でいじるのだけは続けているけど‥‥‥これで本当に良かったの?
 樹乃の心は大騒ぎでパニックになりそうになっていた。
 樹乃も七星もまともそうに見えて、サディストに見えてただ心の癒しが欲しい普通の十六歳なのだ。
 五歳も年上の佳南を相手に、しかも三年も調教に耐えてきた経験者に。
 どうすれば勝てるか。佳南と樹乃の心のせめぎ合いだった。
 しかし、どうやら先に崩れたのは‥‥‥
「なります、ならせて‥‥‥ください、樹乃様ーー」
 もう苦しい、解放してください。
 佳南はそう叫んでいた。
 全て好きにしてくれ、と。
「じゃあ、本音いいなよ。
 どうして欲しいの?」
 ここで手綱を緩めたら負けだ。
 前の穴に無理矢理、片手を突っ込みだす樹乃。更に首輪を引き上げる。
 佳南の顔色が真っ青になりかけていた。  
「ほら、言わないと死ぬよ!?」
「しはい‥‥‥しはいしてくださ、い。かな、んをーー」
 それが本音?
 まだまだ言わなきゃこれは止めない。
「嘘はいらない」
「うそ、げっ‥‥‥じゃない、ですーー」
「まだ、御主人様いるでしょ?
 女の?」
「--!!!??」
 なぜ、それを?
 見えないが動揺は伝わってくる。
「それは樹乃じゃないよね?
 ほら、鞍替えするの、しないの?」
 ここで容赦なんかするもんか。秋穂を、兄貴たちを、七星を!
 苦しめたやつなんかに。
 遠慮なく指先から手首へと押し込んでいく。
 ほら、早く落ちなよ、じゃないと本当に‥‥‥
「決めないと、このまま死ぬよ?」
 その一言で決着がつく?
 どうにも何かが足りない。あと一歩、心の壁を壊せるものーー
 ここまで責められても崩れない信念はどこかに絆があるからだ。
 肉体の、それはどこ?
 それはーー
「貫通させたら、御主人様の旦那様の初めてになれないね?
 憐れな佳南‥‥‥」
「ぐっ、それはやめーーー」
 あー本当だったんだ。
 産めない代わりに産む? 
 違うか。共有される甘い夢を見てたんだね‥‥‥
「もう、夢は終わりだよ、佳南。
 覚悟しな」
「お願い、やめて、それだけは、捨てられるーー」
 うん、ありがとう。
 これで決心が着いた。
「そう、ならーー」
 最後の砦を貰うよ、樹乃が。
「さよなら、前の御主人様のメス犬佳南ーー」
 宣告と同時に。
 壊れる勢いで右手が佳南の中に吸い込まれて行く。
「あっ‥‥‥」
 悲鳴じゃないんだ?
 まあ、声でないくらい喉締めてるしね。
 そのまま、何度も何度も。
 中で腕を押し込んでやる。一番奥まで。
「はあ、うっぶーーーー」
 吐きそうだよねー、よくわかる。
 ああ、これがあれか。子供産むとこ。指先入る?
 二本が限界? 押し込んでみようか。
「もう、樹乃のおもちゃだね、佳南?
 返事は?
 ほーら」
 楽しそうに、その扉をこじ開けてやる。首輪を緩めてそれでも苦痛は緩めない。
「はあ、あ!?
 もう、やめ、て下さい、しむ、死ぬーー」
「だーめ、なんて言うの?
 もう、前の御主人様との繋がり、消えたよ?
 もう処女じゃない」
 言いながら左右へ、中で指を広げすぼめ。一番奥を指先で撫でてやる。
「どう、痛い? 気持ちいい?」
 痛みが快感に変わる方法なんていくらでもある。
 その為に仙骨マッサージ。ほら言いなよ。佳南。
 樹乃は責める手を休めない。この女が完全に服従するまで。
 家族を苦しめた恨みを晴らすこの第一歩をつかみ取るまで。
「き‥‥‥」
「き?」
「気持ちいいです、狂いそう、お願い、もう許して‥‥‥」
「だーめ。なんて言うの?」
 ほーら、と更に奥まで指先を入れて壁をこすりつけてやる。
 ああ、そうか。この卵みたいなのも握ると良かったんだっけ?
 ゆっくりとさすりながら、握り潰していく。
「もう、だめ、だ、めー」
 あ、イキそう。そう思って手を休める。
「な、なんで、なんでーー」
「なら言えよ、なんて言うの?」
「なります、もう全部、全部貰って下さい。
 捨てないで、お願い、もう行くとこない‥‥‥」
「なら、言えってば」
「佳南は、全部自分で‥‥‥はぁっー‥‥‥。
 自分で用意します、樹乃様のサンドバッグになります、一生、使って下さい」
「なら愛情は要らないのね?」
 とどめとばかりにあれを握っては離し、握っては離し‥‥‥
 樹乃、悪魔になってるな、そう心で泣くようにさけんでいた。
「いらない、いらないから捨てないで、そばに置いてください、お願いひとりはやだ……樹乃様」
「なら許す、イケ」
「はいっーー」
 うっわ‥‥‥部屋の床、ひっどいの。
 洪水みたい。フローリングで良かった。
 あれ?
「あ、おーい、佳南?
 ちょっ!?」
 うっわ。
 あり得ないくらい惚けた顔して気絶してる。
 これ、写メ撮ろうかな? 
「あ、そっか。
 佳南のスマホ、スマホ。
 げ、届かない。うーん‥‥‥」
 少しだけ考えて、ダンベルを退けると腕はそのままにーー
「よいしょっと。
 あー傷口が開いてる。あとからまた止血しなきゃ。
 あれ、まさかの、鮮血?
 本当に処女だったんだー樹乃さん悪魔ですなあ‥‥‥」
 そう言いながら、衣服からスマホ取り出して電源オン。
「左手やりにくい、でもこれ抜いてまた気絶されてもねー‥‥‥この顔が大事。
 さて、どれかな?」
 通信より、通話履歴?
 うーん? 少ない。電話帳、あーこれかな。番号ある、一人だけハートマークついてるし。
 なら、通信アプリかな?
「あった。
 あーあ、ガレージの中のことまで報告してる。佳南のばか。
 カメラ、カメラっと。あ、その前にーー」
 マジックだ。左手でも文字かけるかな?
「えーと?
 Yukina Slave?
 この通話アプリの名前のゆきなだし。
 誰だろ? 佳南可哀想。こんなお腹の下腹にタトゥーなんてされて‥‥‥」
 それを太い部分で消し消し‥‥‥お腹部分に
 めすぶた佳南、完成!!
 もらったぜ?
 と書いてピースしながら‥‥‥
「だめだ。映らない。しゃーない」
 佳南のイキ顔と全身、落書きを写メと撮りアップ。
「あ、既読着いた。
 あんたの佳南はもうっ貰ったよっと」
 名前を書くバカはいない。
 あーなんかなってる鳴ってる。
 起きるかな?
「ほら、佳南、起きろ!!」
 かなり強めにはたくとどうにか目を覚ましたよう‥‥‥
「え‥‥‥ああ、それ、いだい‥‥‥」
「あんた何様?
 感謝は?
 誰のものなの?」
 首輪を引き上げて、右手をさらにドスドスと‥‥‥やりすぎかな?
 そう思いながら突き上げてみる。
「ひいっ、樹乃様が御主人様です、ありがとうございます。
 佳南は樹乃様のメス豚です、ありがとうございますーー無理ムリーー!!!!」
 うーん、いい動画が撮れた。
「ほら、佳南、前の御主人様にお別れいいな?」
「え、どゆー‥‥‥!??」
 着信を拒否すると画面をスクロールさせて内容を見せる。
「で、どっち選ぶ?
 樹乃? ゆきな?」
「!?
 なんでその名前を!!??」
「いや、書いてるし。ほら、ここ」
 とアプリの名前を見せてみる。
「あ‥‥‥。
 そんなひど、いだい、いだいです、樹乃様。
 だめ、イグっーー」
「いや、イカなくていいから。
 イキたい?」
 そんなねだるよな顔で見ないでよ。本当のSMになるじゃん‥‥‥
 いや既になっているのだがーー
「御主人様に挨拶して。
 自分からお別れいいなさい」
「そんなーー」
 樹乃はこっちからかけてスピーカーにしてやる。
「佳南、あんたなにこれ?
 なにやってんの!?」
「あぐっ‥‥‥ごめんなさい、ごしゅっーーいだい!!」
「誰がいまの御主人様?」
 相手には聞こえないようにささやく。
「はい、すいません‥‥‥
 ゆきなさん、ごめんなさい。もう佳南は、じゅっムグ」
「名前出すなー。いい?」
 慌てて口を塞ぐ。佳南がうなづいた。
 信用できるのかなーーそう思いながら、ゆっくりと手を離す。
 続けろ、樹乃は合図をした。
 その間にも相手は叫んでいた。
「ちょっと!??
 なにしてんの、この役立たず!!
 返事は!?」
 あーあ、可哀想。役立たずなんて言われたの初めてだろうなあ。
 泣きそうな顔してる。さて、あと一押し。
 右手であの卵みたいなのをさすさすしてやる。
「あっ、それ好き‥‥‥ゆきな、っさよう、なら。
 もう、無理!!! あんたなんてーーだい、きらい‥‥‥!!」
 通話終了、と。
「これで良かったの?
 もう後悔しない?」
 さすさすしてやりながら問い返す。あーなんて樹乃は酷いんだろ。
 そう思いながら‥‥‥
「はい、樹乃様。
 佳南、全部します。サンドバッグでいい。大好き‥‥‥」
「え‥‥‥うん、そうだね、七星が一番だからね?」
「うー‥‥‥はい‥‥‥」
「不満そうな顔しない、ほらイケ」
「あうぐっ!!」
 あーあ、また洪水だ‥‥‥
 樹乃の全身は佳南のあれで水浸し‥‥‥
「幸せそうに、失神してるしーさて、あれしようかな」
 勢いよく引き抜いたら、うわー血だらけ‥‥‥
「先にあらってこよう。これは酷い」
 二階の手洗いで石鹸で落としながら雑巾とバケツと洗剤少し入れた水をもって部屋へ。
「これ佳南に掃除させるとして、ではやりますか」
 めんどくさいから、先に、雑巾巻き巻きして咥えさせて。
 ニードル、ニードル。
 んで、あれだ。そう樹乃が持ちだしたのは細長い、前後に丸い球がついて片方にだけ綺麗な宝石がついたやつ。
「バーティカル・‥‥‥フード。これ痛いだろな。
 佳南の普通のより大きい。小指はないけど。これなら余裕。
 えっと裏側からおへそに向かってか。
 この長さで、マジックでー‥‥‥こんなもん。
 じゃあ、開通式。せーの!」
「むふぉ!!??」
「うわっ!?
 なんで吹くのよー髪の毛までびしょぬれ‥‥‥あ、入れなきゃ。
 消毒、消毒、んで抗菌薬塗ってと。うし、完成。
 で、左側。右が三連だから左も三連だね。
 さっきのプラピアス使うか」
 大きめのニードルで、バス、バス、バス。
 と見ていたら目を背けそうなことを普通にしていく樹乃。
 七星がいたらさぞかし、引いていたことだろう。
「でっと。
 左右を閉じたら、完成!!
 おー綺麗じゃん。これで前は使えない、と。
 まあ、後ろはあとから考える。写メ撮って‥‥‥白目向いてる。
 樹乃、やりすぎた?」
 何枚か撮影して、佳南のスマホにも入れておく。
「逃げたら、肉にでもするかなーー」
 そんなことしないけど、開けてる動画も撮影したし、恐ろしいセリフも入れたし。
 こいつはまだ利用価値がある。
「やっぱり、ブロックしてんね、ゆきなさん。
 ちゃんと追い詰めてあげる。待っててね」
 佳南の拘束を解いてやり、七星にするみたいにぶん殴る。
「ほらっ!!
 起きろ!!!」
 この辺り、樹乃は殴り慣れているから容赦がない。
 本当、誇れない特技だわ。樹乃は悲しいかなそれを理解していた。
「えっ、いだい、痛いっ。」
「痛い?」
「あ、す、すいません樹乃様。
 申し訳ありませんー‥‥‥」
「へーよく躾けて貰ったんだ、ゆきな、に?
 これ覚えてる?」
「はい、話したとこまで、なに、なんで、いたっ!?」
 自分の下腹部に何があるかを理解して佳南は蒼白になる。
「なに? 
 好きにしていいんだよね?」
「そんな、こんなとこまで‥‥‥」
「文句ある?」
 容赦ない平手打ちが数度‥‥‥そろそろ、七星帰って来て。
 そう樹乃の心は叫んでいるーーはずだった。
「いえ、あ、ありません‥‥‥これで佳南、全部、御主人様のもの‥‥‥」
「あんたそんなに嬉しいの?
 年下だよ、樹乃。まだ高校一年なのに。
 大学生が飼われて喜ぶなんてー‥‥‥」
 呆れを通り越している。
「でも、それどうしようかな。バイト行けないよね?」
 うーむ、と樹乃が思案していると、佳南はあっさりと言った。
「あ、もうやめてきました。モデルのバイトが忙しいので‥‥‥」
「あ、そうーなら、足元見て?
 床掃除してね、それ道具」
 と、バケツなどを指差す。
「はい、御主人様!!」
 なんていい返事。
 うわー‥‥‥マジモノ飼っちゃいましたよ樹乃さん。
 七星、助けて???
 樹乃は心でそう叫んでいた。
 その頃、七星はーー
「あれ、道間違えた?
 まーいっか。峠攻めよ――」
 なんて自由を満喫していた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...