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序章 死霊術師、追放される
死霊術師、追放される。
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「残念だが、それには及ばないよ、アーチャー。そこまで言われたら、俺たちがまるで無能じゃないか。これは‥‥‥戻すさ。なあ、みんな?」
「おい、おい、おいっ!? よせ、ライル。いまそれを外すのは、よせ! 魔力の制御を戦闘時に失うぞ? まだ調整をしていない……よくて二か月しかもたなくなる」
「だってさ? どうする、みんな?」
ライルの問いかけに、パーティーメンバーの返答は簡単だった。
誰もが無言でアーチャーが渡した指輪や腕輪やネックレス。
剣の柄につける飾りや魔女であればとんがり帽子の帯につけていた飾り、ピアスなどを外し始めたからだ。
「そうか。そこまで信用がないか? なら‥‥‥好きにしろ」
「ごめんね、ライル。ああまで言われたら、わたしたちにも誇りがあるの。それを踏みにじられた気分だわ‥‥‥」
それらを全て集めて持ってきたのは、魔女のクラレだった。
受け取ったアーチャーが数を確認する。
一つだけ、欠けていたが彼はそれを黙って受け取り、懐にしまいこんだ。
「いいさ、仕方ない。みんな‥‥‥悪かったな」
「もう遅いよ、アーチャー。さよならだ」
「そうだな、ライル。好きにすればいい、魔王との戦いで負けても即死で終わるだろうな。俺にはもう、関係ない」
悲し気に、アーチャーは呟いた。
信じて貰えないんだな‥‥‥仲間なのに、と。
アーチャーは国王に再び向かうと、その指示を仰いでいた。
「陛下、どうかこの場を去る許可を頂きたいと思います。よろしいでしょうか?」
「ああ、構わん。先ほどの魔道具の件はそなたの功績に免じて忘れることとしよう。それと、これはもう決めたことだ。受け取ってくれ」
「‥‥‥? 爵位と領地は頂きかねます。無能な死霊術師には荷が重いかと」
「しかし、南の地のピアソン市はそなたの故郷ではないか?」
ああ、それか。
いや、それは違いますよ陛下。
俺のじゃない。俺の恩師の故郷です。
俺は――両親を早くになくした孤児だ。
故郷なんてありませんよ。
誤解です、そう言おうとしたがもうどうでも良かった。
「ピアソンなら――異存はございません」
ピアソンは比較的平和で静かな市だ。
半島の内湾に面していて、漁業も貿易も盛んな都市だ。
静かに生涯を終えるには良い場所だろう。
それに、彼女を迎えるにも――都合がよかった。
あそこは密林地域に近い。エルフも多く住む都市だからだ。
と、そこで異論が上がった。
あの聖女様だ。いきなり、お待ちをなんて声を張り上げて彼女は泰然としゃべりだした。
「お待ちください、国王陛下。そんな勇者様に対して失礼な言動をした者に、交易都市の管理などまともに務まるはずがありません!」
「ミリア‥‥‥では、どこならばいいというのだ? 彼の功績は大きい。勇者たちがこの大陸内で他の魔族との衝突をうまく避けてこれたのも事実だ。爵位と封地は譲れんぞ?」
その時だ。
アーチャーははっきりと見ていた。
あの聖女様が清楚な笑顔の裏に浮かべた、どす黒く、いやらしい人間臭さを全開にさせた欲望の素顔を。
「地下世界があるではないですか。はるか昔から、我が王国と青の魔人様との間に結ばれた協定の地。アリス・ターナーの地が」
「ミリア‥‥‥お前という子は。あの地は魔界の果てだぞ?」
国王がそれはだめだと言おうとした時だ。
聖女はこれ見よがしにアーチャーを見、そして、国王を見た。
同時に、あらかじめ調べておいたかのように書類を国王に差し出していた。
「陛下。あの地の領主から移動の願いがでております。魔界の管理こそ、遺体を扱う死霊術師にはもってこいの役職ではありませんか?」
「お前という子は‥‥‥。どう思う、死霊術師よ? 彼の地もまた、重要な場所だ。そなたならば務まるとも思うのだが、受けてくれるか?」
「ええ‥‥‥そうですね、陛下。仰っている通りです。その御裁可に従いますよ‥‥‥所詮、俺は無能な死霊術師ですから」
もう疲れた。
あいつらを陰ながら応援してきたつもりだが、ここまで言われたら尽くす義理もないだろ?
愛想が尽きたぜ。
アーチャーがそう思った時だ。
勝ち誇ったように王女ミリアが叫んでいた。
「いい覚悟ですわ、死霊術師殿。役立たずはいりませんわ、せいぜい地下で働きなさい!」
「ミリア!? なんだ、忠義を尽くしてくれた家臣に対してのその態度は!?」
「陛下! 良いのです、失礼します――」
そう静かに言うと、死霊術師は一礼してその場を去った。
一言、彼女にしかわからない方法で、済まない。それだけを告げると地下世界へと向かう決意をしていた。
もう、どうでもいい。
それが望みならそうしてやろう。
最果ての地、か。
魔族の聖地。
義父の仇討ちの機会を得るにはもってこいの場所だ。
こうして、死霊術師アーチャー・イディスはこうして勇者パーティーを追放された。
「さて‥‥‥どうするかなあ? まずは、人事院で魔界の領地への移動辞令をもらう、かな」
ふう、そう大きなため息がでてしまう。
あいつ、俺とともに来てくれるかな?
アーチャーの記憶は一月前の、ある夜に飛んでいた。
「おい、おい、おいっ!? よせ、ライル。いまそれを外すのは、よせ! 魔力の制御を戦闘時に失うぞ? まだ調整をしていない……よくて二か月しかもたなくなる」
「だってさ? どうする、みんな?」
ライルの問いかけに、パーティーメンバーの返答は簡単だった。
誰もが無言でアーチャーが渡した指輪や腕輪やネックレス。
剣の柄につける飾りや魔女であればとんがり帽子の帯につけていた飾り、ピアスなどを外し始めたからだ。
「そうか。そこまで信用がないか? なら‥‥‥好きにしろ」
「ごめんね、ライル。ああまで言われたら、わたしたちにも誇りがあるの。それを踏みにじられた気分だわ‥‥‥」
それらを全て集めて持ってきたのは、魔女のクラレだった。
受け取ったアーチャーが数を確認する。
一つだけ、欠けていたが彼はそれを黙って受け取り、懐にしまいこんだ。
「いいさ、仕方ない。みんな‥‥‥悪かったな」
「もう遅いよ、アーチャー。さよならだ」
「そうだな、ライル。好きにすればいい、魔王との戦いで負けても即死で終わるだろうな。俺にはもう、関係ない」
悲し気に、アーチャーは呟いた。
信じて貰えないんだな‥‥‥仲間なのに、と。
アーチャーは国王に再び向かうと、その指示を仰いでいた。
「陛下、どうかこの場を去る許可を頂きたいと思います。よろしいでしょうか?」
「ああ、構わん。先ほどの魔道具の件はそなたの功績に免じて忘れることとしよう。それと、これはもう決めたことだ。受け取ってくれ」
「‥‥‥? 爵位と領地は頂きかねます。無能な死霊術師には荷が重いかと」
「しかし、南の地のピアソン市はそなたの故郷ではないか?」
ああ、それか。
いや、それは違いますよ陛下。
俺のじゃない。俺の恩師の故郷です。
俺は――両親を早くになくした孤児だ。
故郷なんてありませんよ。
誤解です、そう言おうとしたがもうどうでも良かった。
「ピアソンなら――異存はございません」
ピアソンは比較的平和で静かな市だ。
半島の内湾に面していて、漁業も貿易も盛んな都市だ。
静かに生涯を終えるには良い場所だろう。
それに、彼女を迎えるにも――都合がよかった。
あそこは密林地域に近い。エルフも多く住む都市だからだ。
と、そこで異論が上がった。
あの聖女様だ。いきなり、お待ちをなんて声を張り上げて彼女は泰然としゃべりだした。
「お待ちください、国王陛下。そんな勇者様に対して失礼な言動をした者に、交易都市の管理などまともに務まるはずがありません!」
「ミリア‥‥‥では、どこならばいいというのだ? 彼の功績は大きい。勇者たちがこの大陸内で他の魔族との衝突をうまく避けてこれたのも事実だ。爵位と封地は譲れんぞ?」
その時だ。
アーチャーははっきりと見ていた。
あの聖女様が清楚な笑顔の裏に浮かべた、どす黒く、いやらしい人間臭さを全開にさせた欲望の素顔を。
「地下世界があるではないですか。はるか昔から、我が王国と青の魔人様との間に結ばれた協定の地。アリス・ターナーの地が」
「ミリア‥‥‥お前という子は。あの地は魔界の果てだぞ?」
国王がそれはだめだと言おうとした時だ。
聖女はこれ見よがしにアーチャーを見、そして、国王を見た。
同時に、あらかじめ調べておいたかのように書類を国王に差し出していた。
「陛下。あの地の領主から移動の願いがでております。魔界の管理こそ、遺体を扱う死霊術師にはもってこいの役職ではありませんか?」
「お前という子は‥‥‥。どう思う、死霊術師よ? 彼の地もまた、重要な場所だ。そなたならば務まるとも思うのだが、受けてくれるか?」
「ええ‥‥‥そうですね、陛下。仰っている通りです。その御裁可に従いますよ‥‥‥所詮、俺は無能な死霊術師ですから」
もう疲れた。
あいつらを陰ながら応援してきたつもりだが、ここまで言われたら尽くす義理もないだろ?
愛想が尽きたぜ。
アーチャーがそう思った時だ。
勝ち誇ったように王女ミリアが叫んでいた。
「いい覚悟ですわ、死霊術師殿。役立たずはいりませんわ、せいぜい地下で働きなさい!」
「ミリア!? なんだ、忠義を尽くしてくれた家臣に対してのその態度は!?」
「陛下! 良いのです、失礼します――」
そう静かに言うと、死霊術師は一礼してその場を去った。
一言、彼女にしかわからない方法で、済まない。それだけを告げると地下世界へと向かう決意をしていた。
もう、どうでもいい。
それが望みならそうしてやろう。
最果ての地、か。
魔族の聖地。
義父の仇討ちの機会を得るにはもってこいの場所だ。
こうして、死霊術師アーチャー・イディスはこうして勇者パーティーを追放された。
「さて‥‥‥どうするかなあ? まずは、人事院で魔界の領地への移動辞令をもらう、かな」
ふう、そう大きなため息がでてしまう。
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