漆黒の霊帝~魔王に家族を殺された死霊術師、魔界の統治者になる~

星ふくろう

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序章 死霊術師、追放される

「虚言」を吐く死霊術師

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 王はそれでも、現状を維持することを選んだようだ。
 王女に向かい、ため息交じりに言葉を告げていた。

「では、聞いておこう。いまはアミュエラ様が我が国の守り神だ。なにを承ってきた?」
「賢い判断ですわ、国王陛下。ではお伝え致します、アミュエラ様からの神託は、わたしが勇者ライル様のパーティーに参加し、先王を怒らせた魔王アバン・ゲムドを討て。そういう内容です」
「ああ‥‥‥なんと愚かな。魔族とは共存すべきなのだ。あの魔王を討つのではなく、他の魔王たちと協定を結び、同盟を組んで動きを封じる。それこそが、世界を平和に導く道だというのに‥‥‥」
「でも、お父様。もう神託は下されました。御裁可を‥‥‥」

 国王は娘を見、大臣たちを見渡し、最後に勇者ライルの一行を見て――そして、静かに決断を下した。
 それは、アーチャーにとってはまさに、晴天の霹靂そのものだった。

「死霊術師アーチャー・イディス。勇者ライルより、そなたのパーティー離脱願いが出されておる」
「はっ‥‥‥? 陛下!? 俺が、いえ――わたくしが、ですか‥‥‥?」
「そうだ、死霊術師よ。そなたはこの三年間、勇者ライル一行の成長を支えてきたことは周知の事実だ。しかし、これからの激戦地には不向きだと。それが主な理由のようだな‥‥‥」
「しかし、陛下。わたくしはこれまで一命を賭してパーティーに尽くして参りました。それも認めて頂けないと‥‥‥??」
「すまぬな、死霊術師よ。そなたでは、これより先の魔王との戦いには力不足だとそういうことだ。しかし、これまでの功績に免じて爵位を授け領地を封じる。受け取ってくれるか?」

 おいおい‥‥‥こんな形で裏切るのか、お前ら?
 アーチャーは唖然としていた。確かに自分の能力は低い。
 それに、治癒にしても再生にしても、武装神官にも及ばないだろう。
 それが真実なら‥‥‥だが、そこには理由がある。

 何より――魔法と仲間たちが思って使っている術式。
 それは古代に魔法と呼ばれた莫大な魔力を使役するものとは異なるもの。
 いわば、魔術にしかすぎないのだ。
 純粋な魔力を有して使いこなす魔王にかなうわけがなかった。
 しかし、その事実を知る存在はこの王国政府の要人には‥‥‥いない。
 いるとすれば、パーティーメンバーのうちの一人。
 アーチャーの恋人のハイエルフだけだった。

 アーチャーは聖女が持ってきた神託に呆れてしまう。
 女神アミュエラはなにを考えているのか、と。
 魔王を討伐?
 その前に殺されるか、封印されるのがオチだろ?
 勇者や聖女は確かに無敵に近いが――封印する方法はいくらでもあるからだ。

「陛下。発言の許可を頂けますか?」
「許可しよう」

 アーチャーは言うべきではないとも思った。
 だが、自分の能力を過小評価しかできないパーティーメンバーにも飽き飽きしていた。
 真実が見えてないなんて、これだけの素質と才能と神々の恩寵を受けた勇者一行だというのに。
 せめてもの助言で彼らに目を覚まして欲しかったのだ。
 
「申し上げます。自分は確かに、力不足かもしれません。しかし、パーティーメンバーに戦闘の補助として魔道具をわたしてきました」
「それが‥‥‥どうかしたのかね?」
「勇者と聖女の魔力や神力に制限はありません。それをまず、お伝えしておきます」
「ふむ‥‥‥だからこそ、神に等しいと言われる魔王と対等に渡り合える、と? そういうことかね?」
「御明察、痛み要ります。しかし、その発動できる力。一度に使えるものには限りがあります‥‥‥」
「なんと!?」

 国王は驚愕の叫び声を上げていた。
 それが事実ならば、攻撃と攻撃の合間の虚を突かれたらパーティーは壊滅してしまう。
 その程度の結果は予測できるからだ。

 しかし、そこに皮肉に満ちた嘲笑と、あり得ないという否定の声が上がった。
 それは勇者本人からでもあり、聖女の声でもあった。
 その時のライルは――アーチャーが知るあの性根の良い快男児ではないように、アーチャーの目には映っていた。 

「陛下、それはアーチャーの妄想です。これまでに二度、魔王に近いと言われた魔族と戦いそれを退けて来ましたが、その時に発動した魔力に制限はありませんでした。そうだよな、みんな?」

 そして上がる、仲間からの同意の声。

「お前ら‥‥‥」

 パーティーメンバー、勇者、魔女、武装神官、聖騎士、盗賊に一番仲の良かった前衛の武装騎士まで。
 ハイエルフの恋人以外の全員が、勇者ライルの発言を肯定し、アーチャーの言い分を否定した。
 自分たちも含めて、アーチャーの貢献は戦いには関係しなかったと。
 彼はそれ以外の外交や下準備などの才覚を発揮しました。
 そう、口々に証言していた。
 王はそれらを聞き終えると、アーチャーへと顔を向けた。

「どうかな、死霊術師よ。彼らはみな、一様にああ申しておる。そなたは嘘偽りを申しているのか?」
「いいえ、いいえ‥‥‥陛下。それは全て、俺が作り上げた魔道具の補助があってのものです。あれは魔力がほぼない人間でも、最下級の魔法使い並みには魔力を増幅できる代物。いなくなれば――メンテナンスも、基礎となる魔素の補充もできません。それに――」
「それに、何かな?」
「‥‥‥いいえ、何でもありません。ライルがそう言うのであれば、そうなのでしょう。ええ‥‥‥最後に。せめて、仲間に渡した魔道具の調整だけでもさせて頂けませんか?」
 
 いまは裏切られても、かつての仲間だ。
 数年間の命のやりとりをする戦場で支え合ってきた気ごころの知れた連中だった。
 せめて‥‥‥彼らが魔王の元に辿り着いたときに。
 その魔力を失わない程度にまでは、自分の魔道具は仲間を助けるはずだ。
 そう、アーチャーは思っていた。善意からの発言だった。
 だが、その思いは簡単に破られてしまう。
 仲間には‥‥‥彼に対する感謝なんてものはどこにもなかったのだから。



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