漆黒の霊帝~魔王に家族を殺された死霊術師、魔界の統治者になる~

星ふくろう

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第二章 ダンジョンの死霊術師

「最果ての地」の死霊術師

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「おおっ? なんだこりゃ‥‥‥?」
「な――いいものだろ? あれが全部、地下世界だよ」
「これが‥‥‥? 俺は魔界なんて言っててもてっきり――王国の王都程度のものが地下深くまでずっと下がっている塔のようなものかと想像していたのに」
「それが、このメディウムの大迷宮なんて呼ばれている塔だよ。もしくは各階層ごとに広がるダンジョンさな」
「どういうことだ?」
「だからな?あれ、見てみなよ。遠くて分かりづらいが、一番下のボタンから次まで随分と空いていると思わないか?」
「空いている?? あ、確かにそうだな。空いてるってことは‥‥‥大迷宮ってのは地下世界の天井から地上世界の地表までも間にあるわずかな隙間のような部分に広がっているってことか??」
「いやいや、それは誤解だ。この塔の一部が接する部分と、ここから見えている地下世界の地上部分。そして、その下にはまだダンジョンがあるらしいぞ? 詳しくはわからんがな?」

 いや、待ってくれ。そうアーチャーは言いたくなっていた。
 なら、アリス・ターナーの最果ての土地ってのはどこにあるんだと。

「最下層なら、どこまで下がればいいんだ??」
「最下層? そんなもの、行った人間がいないから分からんな。お前さんの言う最下層ってのは、あそこに広がる地上というか。地下世界の地表だと思うぞ? ほれ、青く広がっている丸いものがあるだろ?」
「ああ、あるな。しかし、高山もあれば海や雲まで――太陽や月まであるのかよ‥‥‥」
「不思議な不思議な世界さな。あのドームの中が最果ての地、アリス・ターナー様の結界の中だな」
「あー‥‥‥つまり、あれがタイレス辺境国、だと? そういうことかな」
「そうだよ、あれが最果ての地なんて呼ばれてるところだ。あの外にでると、いろいろと人間には大変らしい。行ったことが無いから分からんがな」
「広いな‥‥‥王国の領土より広大なんじゃないのか? 海や高山の一角すらも封じているように見える」

 確か――と、その話しかけていた行商人はあごに手をかけて考えていた。
 聞いた話しだと、三倍の面積があったはずだ、そんな返事を受けてアーチャーは軽く頭痛を感じていた。
 家来が五十人?
 それだけでおさめれるはずがない。
 誰しもが逃げだしたくなる理由が分かった気がしたからだ。

「最低で最悪な人事だ‥‥‥」
「兄ちゃん、なんか言ったか?」

 行商人がアーチャーの呟きを耳にしたのか怪訝な顔をしていた。
 いや、なんでもないよ。
 疲れ切った顔をしたアーチャーを見て、行商人はこの圧巻な光景に憔悴したんだろうなと勝手に納得してしまっていた。
 事実、地下世界を訪れた人間の何割かはそうなるからだ。
 そして、アーチャーはふと、気付く。
 この塔を下る箱の中では、まったく魔法の気配がしないことに。

「どういうことだ? なんで魔素の反応がこの壁の外から感じれないんだ??」
 
 魔素は全ての生命の生きていくうえで必要な要素。それが地上世界の常識だった。
 もちろん、そんなことはなくて例えば人間はその体内で魔素をいくらか蓄えているし自身でも精製することができる。それには太陽の光や月光、大気といったものが必要だが、これには魔族も亜人も関係ないはずだった。
 しかし、ここにはあっても壁の向こうには感じられなかった。
 もしくは、遮断されているのかもしれない。
 そう仮設を立てれたのは魔界にも太陽があることを目にしていたからだ。
 そして階層が下がるにつれて地上世界の魔族や動物の一種によく似た鳥類のようなものが羽にそれを受けて飛んでいる様も見て取れた。
 普通の人間には捉えられない魔素も、アーチャーは感じ取る、あるいは視ることができる。
 つまり、この箱の中だけが遮断されているという仮説は正しかったわけだ。

「まさかの‥‥‥アスティラ鉱石、か?」
「あれ、知っているのか? さすがに魔導士様だな。博学だ」
「おっさん、あんたが知ってるのも驚きだよ‥‥‥」
「そうか? ここをよく利用する商人や役人の間じゃ常識だぞ? 一時期はそれをどうにかして手にしようと目論んだ連中がいたが‥‥‥どうやっても塔の中に張られているのかそれとも鉱床があるのか。まあよくわからんが、成功したやつはいないな」
「だろうなあ。アスティラ鉱石は世界一硬い鉱石と言われているダマダイトや、オリハルコンよりも‥‥‥希少でさらに価値があると言われているからな。そんなものが手に入ったら億万長者になれる」
「だが手に入らないわけじゃないんだろ? 聞いた話しだが、魔導士の収監所の壁には加工されて張り付けられているとか。本当かどうかは知らんけどな」
「俺も知らんよ、そんな話」

 と、否定したものの脳裏では肯定していたアーチャーだった。
 アスティラ鉱石。
 ありとあらゆる魔素や魔法の作用を打ち消す、魔族や神、魔導士。
 超常的な異能を操る者にとって、それは天敵ともいえる物質でもあり、逆にいえば万能の武器にもなる鉱石だった。
 残念ながら、硬度はそれほど硬くないから武器――刃にそれを加工して貼り付けても衝撃で剥がれてしまうと聞いている。この鉱床でも発見できれば、経済的には豊かではないと聞いている地下世界の発展にも貢献できるんだがな、とアーチャーは歯噛みするのだった。
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