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第一部 朔月の魔女
エピローグ
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はいはい、そうですね。
わたしは魔女ですよ。
ええ、それでいいわ。
もう馬鹿馬鹿しいから。
シェイラはこの会話に飽きて来ていた。
さっさと、失った腕をくっつけたいのに。
そう思いながら、リクトを呆れたように見てやる。
「そうね、朔月の魔女?
宵闇の魔女でいいわ。
宵闇の魔女、朔月の聖女シェイラ。
いい響きだし、この王国はこれから二十年。
わたしがいただいたも同然。
守るのね、その子供とあなたを最後には裏切ろうとしたエリカを、ね?」
「裏切ろうとした‥‥‥?
そんな馬鹿な事があるわけがない!!
エリカの腹には僕の子供がいるんだぞ??」
「子供がいても、大司教閣下の力を考えたらあなたを最後は裏切るわよ。
だって、子供が一番だものそれが母親だし、女だから。
殺されないように、きちんとした愛を育むのね?
罪人の血筋の王子様?」
「罪人‥‥‥だと?」
「勝てば英雄、負ければ罪人。
そのどちらでもある王族貴族、国の支配層は全員、罪人の血筋よ。
‥‥‥わたしもね。
では、そろそろ、眠りを覚まそうかしら。
頑張ってね、愛したリクト様。
二十年。
人殺しが人殺しのままか、本物の救国の英雄になるか。
楽しみですわ、では‥‥‥御機嫌よう」
さようなら、愛した王太子殿下。
そう、声だけを残し、シェイラは消えてしまった。
リクトはまだ目覚めないエリカを抱き寄せながら、押し寄せる騎士たちの足音を孤独に迎えるのだった。
「あれで良かったのか?
殺されるぞ、あの三人」
サクが虚無の高原と呼ぶその闇の世界の中を、背にシェイラを乗せて空を駆けながら問いかける。
どこまでも甘い奴だ、そう呆れている黒狼にシェイラはどうですかね、そう涼し気な顔をしていた。
「リクトは騎士の百や二百。
それにあの剣に残していた宝玉の魔力もまだまだありましたし。
部下の騎士たちと共に前線にある自軍に戻り、体制を立て直したんではないでしょうか。
向かう先はー‥‥‥」
「王城と神殿か。
王太子が国王と大司教に謀反を起こすわけだ。
そして、その理由は――」
「わたしが大司教のせいで闇の神の呪いを受けて錯乱し、あんな騒ぎを引き起こした、と。
来賓の方々に対する責任を求めて王に退位を、大司教には死を。
でも、その前には暗殺されるでしょうね、叔父様の放った刺客に」
「結果、誰も救われない、か。
で、その腕はもういいのか?」
ああ、これ?
シェイラは大丈夫ですよ、と手を握ってみせた。
何も問題はありません、と。
「でも、サク様?
良かったのですか、わたしなんかをサク様の聖女にしてしまって?」
「‥‥‥家族だ、シェイラ。
残念だったな、お前の家族は。
あの大司教、先手を打っているとはな」
「‥‥‥仕方ありません。
無事に天に召されていったと思うことにします。
もう、涙は流したくないので。
それより、これからどうするんですか、サク様?」
そうか‥‥‥。
黒狼の声は重く、どこか自分にも責任がある気がしているようにもシェイラには思えた。
ありがとうございます、サク様。
この命を救って頂いて。
シェイラはそう思い、ぎゅっと柔らかい彼の背に顔を埋めていた。
「これからな。
ある人間を探しに行く。
我らが姫君が、戻らずにどこかに行ってしまった。
何千年、何億年かかるかわからんが‥‥‥来るか?」
「つまり、無限に近い時間を共に過ごして頂ける、と?
まるで夫婦のようですね、サク様?」
朔月の魔女になりますわ、サク様?
喜んでお手伝い致します。
シェイラはそう微笑んで答えるのだった。
わたしは魔女ですよ。
ええ、それでいいわ。
もう馬鹿馬鹿しいから。
シェイラはこの会話に飽きて来ていた。
さっさと、失った腕をくっつけたいのに。
そう思いながら、リクトを呆れたように見てやる。
「そうね、朔月の魔女?
宵闇の魔女でいいわ。
宵闇の魔女、朔月の聖女シェイラ。
いい響きだし、この王国はこれから二十年。
わたしがいただいたも同然。
守るのね、その子供とあなたを最後には裏切ろうとしたエリカを、ね?」
「裏切ろうとした‥‥‥?
そんな馬鹿な事があるわけがない!!
エリカの腹には僕の子供がいるんだぞ??」
「子供がいても、大司教閣下の力を考えたらあなたを最後は裏切るわよ。
だって、子供が一番だものそれが母親だし、女だから。
殺されないように、きちんとした愛を育むのね?
罪人の血筋の王子様?」
「罪人‥‥‥だと?」
「勝てば英雄、負ければ罪人。
そのどちらでもある王族貴族、国の支配層は全員、罪人の血筋よ。
‥‥‥わたしもね。
では、そろそろ、眠りを覚まそうかしら。
頑張ってね、愛したリクト様。
二十年。
人殺しが人殺しのままか、本物の救国の英雄になるか。
楽しみですわ、では‥‥‥御機嫌よう」
さようなら、愛した王太子殿下。
そう、声だけを残し、シェイラは消えてしまった。
リクトはまだ目覚めないエリカを抱き寄せながら、押し寄せる騎士たちの足音を孤独に迎えるのだった。
「あれで良かったのか?
殺されるぞ、あの三人」
サクが虚無の高原と呼ぶその闇の世界の中を、背にシェイラを乗せて空を駆けながら問いかける。
どこまでも甘い奴だ、そう呆れている黒狼にシェイラはどうですかね、そう涼し気な顔をしていた。
「リクトは騎士の百や二百。
それにあの剣に残していた宝玉の魔力もまだまだありましたし。
部下の騎士たちと共に前線にある自軍に戻り、体制を立て直したんではないでしょうか。
向かう先はー‥‥‥」
「王城と神殿か。
王太子が国王と大司教に謀反を起こすわけだ。
そして、その理由は――」
「わたしが大司教のせいで闇の神の呪いを受けて錯乱し、あんな騒ぎを引き起こした、と。
来賓の方々に対する責任を求めて王に退位を、大司教には死を。
でも、その前には暗殺されるでしょうね、叔父様の放った刺客に」
「結果、誰も救われない、か。
で、その腕はもういいのか?」
ああ、これ?
シェイラは大丈夫ですよ、と手を握ってみせた。
何も問題はありません、と。
「でも、サク様?
良かったのですか、わたしなんかをサク様の聖女にしてしまって?」
「‥‥‥家族だ、シェイラ。
残念だったな、お前の家族は。
あの大司教、先手を打っているとはな」
「‥‥‥仕方ありません。
無事に天に召されていったと思うことにします。
もう、涙は流したくないので。
それより、これからどうするんですか、サク様?」
そうか‥‥‥。
黒狼の声は重く、どこか自分にも責任がある気がしているようにもシェイラには思えた。
ありがとうございます、サク様。
この命を救って頂いて。
シェイラはそう思い、ぎゅっと柔らかい彼の背に顔を埋めていた。
「これからな。
ある人間を探しに行く。
我らが姫君が、戻らずにどこかに行ってしまった。
何千年、何億年かかるかわからんが‥‥‥来るか?」
「つまり、無限に近い時間を共に過ごして頂ける、と?
まるで夫婦のようですね、サク様?」
朔月の魔女になりますわ、サク様?
喜んでお手伝い致します。
シェイラはそう微笑んで答えるのだった。
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