19 / 29
第一部 朔月の魔女
太陽神の聖女と宵闇の魔女 4
しおりを挟む
「愛してはいたさ。
だが、そうしなければ‥‥‥僕は殺されていた。
あの大司教閣下にな?」
「そう、自分の命だけが大事なのですか?
それとも、その行動の先にある想いは誰に向けられていたのですか、殿下?」
「とうとう、旦那様から殿下に格下げか!?
誰だと?
決まっている‥‥‥この国の――」
「王位?
それとも、枢軸連邦への参加?
それともー‥‥‥」
「お前はこの半年間、僕のなにを見てきたんだ。
なあ、シェイラ。
まだ僕たちは夫婦なんだぞ。
仮初の、初夜を過ごす前の状態だがな?」
「大敵は二人、でしたわね、殿下?
処女でなくなった聖女は利用価値が半減する、でしたかしら?
そのエリカのお腹の子供がそれほど大事ですか‥‥‥旦那様」
「聞いて、いたのか‥‥‥」
そりゃあ、聞くでしょう。
目の前であの女は不要だの、手に入れる為にどれほど苦労しかただの。
おまけに夫が他の女に愛を語って入れば‥‥‥
「聞いておりましたよ。
あの扉を破壊したその時から。
まあ、時間を越えれるというのはなかなかに便利ですね、旦那様?
どこから来たかと言われましたが、時間と空間の裂け目をうまく利用すれば時間すら好きにできるのですからたいしたものですわ、神々というのは‥‥‥」
やれやれ、その結果がこの腕を無くした愚かな聖女ですけどね。
嫉妬に駆られたらこうなる、いい勉強になりましたわ。
そう、シェイラはさめざめとした顔でエリカの方をにらんでやる。
「その子供、さてどんな希望になるのでしょうね?
楽しみですわ、大司教閣下にはきちんと伝えておきましたから」
「なん、だと!?
お前、何を‥‥‥」
あらら、顔が真っ青ですね、王太子殿下。
救国の英雄が情けない。
そう、シェイラは侮蔑の目を向けてやる。
「何と言われましても。
さんざん、わたしを好き勝手に操って来たんですから。
その罪と罰は受けていただかなければ困りますわね、旦那様?
お二人のあの会話をそのまま、大司教閣下にお伝えしただけですわ。
まあ、生き残れるかどうかは貴方達次第かと?」
「このー‥‥‥ッ、悪魔があ!!!」
「ええ、悪魔で結構です。
それよりもそろそろ気づいてくださいよ、殿下?
遅いと思いませんか、この城の騎士たちが来るはずなのに。
誰も来ていないことに」
そう言われリクトは、ハッとなる。
確かに言われてみればー‥‥‥。
「城の者たちには全員、眠って頂きました。
そう、国王夫妻から大司教閣下、そしてー」
「まさか、来賓の各国の方々まで‥‥‥???」
「ええ、正解ですわ、殿下。
全員が人質。
そして、もし何かあれば?」
「追われるのはお前も同じだぞ、シェイラ!?」
はあ、やっぱり頭悪いわ、この王太子殿下。
なんでこんなしょうもない男を好きになったんだろ。
追われるなら、まだサク様の従者にでもなってこの世界から去った方が幸せかも‥‥‥
シェイラはそう思ってしまう。
いろいろと脅しすかして言うことを聞かせようと思っていたけど。
焼き尽くすよりも、いい方法があったことにも気づいてしまっていた。
彼等、親子三人を永遠の牢獄に入れるよりも残酷で素晴らしい復讐の方法を。
「そうね?
でも勘違いしていない、リクト様?
寝ていても、知ることは出来るんですよ?
この会話を夢で見たり、ね?」
「それこそ、魔族の御業ではないか!!
この魔女が!!」
「はあ‥‥‥リクトの相手をするのは疲れたわ。
いい、貴方のいまの話は全部、この寝ている王宮の中にいる人間以外の存在にも伝わっているの。
起きた彼等がどうするか、考えるのね‥‥‥。
それと、もう一つ。
エリカのお腹の子供だけど。
わたしが生かしていくと思ってるの?
ここまで恥をかかされて、黙っているとでも?」
リクトの顔が暗く沈んでしまう。
ここまで言われたら‥‥‥それはつまり。
「呪い、か。
いかにも魔女らしいな。
それだけは許さん、アギト神にこの身の全てを捧げても守り抜く!!」
「その言い様と態度だけは、まさしく救国の英雄ね‥‥‥。
なら守り抜いてみればいいわ。
永遠に続く闇の牢獄に二人揃って幽閉してやるつもりだったけど、そこまで言うならチャンスを上げますわ」
「チャンスだと、お前も追われるというのに‥‥‥???」
「わたしはどこにでも逃げれるのよ、リクト?
そう言ったでしょ、さっきもそうだけど。
時間と空間の狭間に生きれると。
あなたたちがきちんとこの国を大司教閣下の暗躍と諸外国の圧政から守れるなら。
そうね、あと二十年。
その間、きちんと出来ればその子供の命は助けてあげる。
二十年後、見に来るわ。
それがわたしが誰かはわからない。
親子三人、無事に生き延びたければ‥‥‥頑張ることね、英雄として」
「なんたる暴言だ。
そして、拒否すら‥‥‥許さんとはな‥‥‥魔女が!!」
救国の英雄は力なく叫んだ。
シェイラによる最悪の復讐が始まったことを理解しながら――
だが、そうしなければ‥‥‥僕は殺されていた。
あの大司教閣下にな?」
「そう、自分の命だけが大事なのですか?
それとも、その行動の先にある想いは誰に向けられていたのですか、殿下?」
「とうとう、旦那様から殿下に格下げか!?
誰だと?
決まっている‥‥‥この国の――」
「王位?
それとも、枢軸連邦への参加?
それともー‥‥‥」
「お前はこの半年間、僕のなにを見てきたんだ。
なあ、シェイラ。
まだ僕たちは夫婦なんだぞ。
仮初の、初夜を過ごす前の状態だがな?」
「大敵は二人、でしたわね、殿下?
処女でなくなった聖女は利用価値が半減する、でしたかしら?
そのエリカのお腹の子供がそれほど大事ですか‥‥‥旦那様」
「聞いて、いたのか‥‥‥」
そりゃあ、聞くでしょう。
目の前であの女は不要だの、手に入れる為にどれほど苦労しかただの。
おまけに夫が他の女に愛を語って入れば‥‥‥
「聞いておりましたよ。
あの扉を破壊したその時から。
まあ、時間を越えれるというのはなかなかに便利ですね、旦那様?
どこから来たかと言われましたが、時間と空間の裂け目をうまく利用すれば時間すら好きにできるのですからたいしたものですわ、神々というのは‥‥‥」
やれやれ、その結果がこの腕を無くした愚かな聖女ですけどね。
嫉妬に駆られたらこうなる、いい勉強になりましたわ。
そう、シェイラはさめざめとした顔でエリカの方をにらんでやる。
「その子供、さてどんな希望になるのでしょうね?
楽しみですわ、大司教閣下にはきちんと伝えておきましたから」
「なん、だと!?
お前、何を‥‥‥」
あらら、顔が真っ青ですね、王太子殿下。
救国の英雄が情けない。
そう、シェイラは侮蔑の目を向けてやる。
「何と言われましても。
さんざん、わたしを好き勝手に操って来たんですから。
その罪と罰は受けていただかなければ困りますわね、旦那様?
お二人のあの会話をそのまま、大司教閣下にお伝えしただけですわ。
まあ、生き残れるかどうかは貴方達次第かと?」
「このー‥‥‥ッ、悪魔があ!!!」
「ええ、悪魔で結構です。
それよりもそろそろ気づいてくださいよ、殿下?
遅いと思いませんか、この城の騎士たちが来るはずなのに。
誰も来ていないことに」
そう言われリクトは、ハッとなる。
確かに言われてみればー‥‥‥。
「城の者たちには全員、眠って頂きました。
そう、国王夫妻から大司教閣下、そしてー」
「まさか、来賓の各国の方々まで‥‥‥???」
「ええ、正解ですわ、殿下。
全員が人質。
そして、もし何かあれば?」
「追われるのはお前も同じだぞ、シェイラ!?」
はあ、やっぱり頭悪いわ、この王太子殿下。
なんでこんなしょうもない男を好きになったんだろ。
追われるなら、まだサク様の従者にでもなってこの世界から去った方が幸せかも‥‥‥
シェイラはそう思ってしまう。
いろいろと脅しすかして言うことを聞かせようと思っていたけど。
焼き尽くすよりも、いい方法があったことにも気づいてしまっていた。
彼等、親子三人を永遠の牢獄に入れるよりも残酷で素晴らしい復讐の方法を。
「そうね?
でも勘違いしていない、リクト様?
寝ていても、知ることは出来るんですよ?
この会話を夢で見たり、ね?」
「それこそ、魔族の御業ではないか!!
この魔女が!!」
「はあ‥‥‥リクトの相手をするのは疲れたわ。
いい、貴方のいまの話は全部、この寝ている王宮の中にいる人間以外の存在にも伝わっているの。
起きた彼等がどうするか、考えるのね‥‥‥。
それと、もう一つ。
エリカのお腹の子供だけど。
わたしが生かしていくと思ってるの?
ここまで恥をかかされて、黙っているとでも?」
リクトの顔が暗く沈んでしまう。
ここまで言われたら‥‥‥それはつまり。
「呪い、か。
いかにも魔女らしいな。
それだけは許さん、アギト神にこの身の全てを捧げても守り抜く!!」
「その言い様と態度だけは、まさしく救国の英雄ね‥‥‥。
なら守り抜いてみればいいわ。
永遠に続く闇の牢獄に二人揃って幽閉してやるつもりだったけど、そこまで言うならチャンスを上げますわ」
「チャンスだと、お前も追われるというのに‥‥‥???」
「わたしはどこにでも逃げれるのよ、リクト?
そう言ったでしょ、さっきもそうだけど。
時間と空間の狭間に生きれると。
あなたたちがきちんとこの国を大司教閣下の暗躍と諸外国の圧政から守れるなら。
そうね、あと二十年。
その間、きちんと出来ればその子供の命は助けてあげる。
二十年後、見に来るわ。
それがわたしが誰かはわからない。
親子三人、無事に生き延びたければ‥‥‥頑張ることね、英雄として」
「なんたる暴言だ。
そして、拒否すら‥‥‥許さんとはな‥‥‥魔女が!!」
救国の英雄は力なく叫んだ。
シェイラによる最悪の復讐が始まったことを理解しながら――
1
あなたにおすすめの小説
これで、私も自由になれます
たくわん
恋愛
社交界で「地味で会話がつまらない」と評判のエリザベート・フォン・リヒテンシュタイン。婚約者である公爵家の長男アレクサンダーから、舞踏会の場で突然婚約破棄を告げられる。理由は「華やかで魅力的な」子爵令嬢ソフィアとの恋。エリザベートは静かに受け入れ、社交界の噂話の的になる。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
『龍の生け贄婚』令嬢、夫に溺愛されながら、自分を捨てた家族にざまぁします
卯月八花
恋愛
公爵令嬢ルディーナは、親戚に家を乗っ取られ虐げられていた。
ある日、妹に魔物を統べる龍の皇帝グラルシオから結婚が申し込まれる。
泣いて嫌がる妹の身代わりとして、ルディーナはグラルシオに嫁ぐことになるが――。
「だからお前なのだ、ルディーナ。俺はお前が欲しかった」
グラルシオは実はルディーナの曾祖父が書いたミステリー小説の熱狂的なファンであり、直系の子孫でありながら虐げられる彼女を救い出すために、結婚という名目で呼び寄せたのだ。
敬愛する作家のひ孫に眼を輝かせるグラルシオ。
二人は、強欲な親戚に奪われたフォーコン公爵家を取り戻すため、奇妙な共犯関係を結んで反撃を開始する。
これは不遇な令嬢が最強の龍皇帝に溺愛され、捨てた家族に復讐を果たす大逆転サクセスストーリーです。
(ハッピーエンド確約/ざまぁ要素あり/他サイト様にも掲載中)
もし面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録・いいねなどしていただけましたら、作者の大変なモチベーション向上になりますので、ぜひお願いします!
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
婚約破棄された氷の令嬢 ~偽りの聖女を暴き、炎の公爵エクウスに溺愛される~
ふわふわ
恋愛
侯爵令嬢アイシス・ヴァレンティンは、王太子レグナムの婚約者として厳しい妃教育に耐えてきた。しかし、王宮パーティーで突然婚約破棄を宣告される。理由は、レグナムの幼馴染で「聖女」と称されるエマが「アイシスにいじめられた」という濡れ衣。実際はすべてエマの策略だった。
絶望の底で、アイシスは前世の記憶を思い出す――この世界は乙女ゲームで、自分は「悪役令嬢」として破滅する運命だった。覚醒した氷魔法の力と前世知識を武器に、辺境のフロスト領へ追放されたアイシスは、自立の道を選ぶ。そこで出会ったのは、冷徹で「炎の公爵」と恐れられるエクウス・ドラゴン。彼はアイシスの魔法に興味を持ち、政略結婚を提案するが、実は一目惚れで彼女を溺愛し始める。
アイシスは氷魔法で領地を繁栄させ、騎士ルークスと魔導師セナの忠誠を得ながら、逆ハーレム的な甘い日常を過ごす。一方、王都ではエマの偽聖女の力が暴かれ、レグナムは後悔の涙を流す。最終決戦で、アイシスとエクウスの「氷炎魔法」が王国軍を撃破。偽りの聖女は転落し、王国は変わる。
**氷の令嬢は、炎の公爵に溺愛され、運命を逆転させる**。
婚約破棄の屈辱から始まる、爽快ザマアと胸キュン溺愛の物語。
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろうにも掲載中です)
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる