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第一章 愛の奇跡
翼の欠けたラハミーム 4
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誕生日まで、あと数日を切ったある日。
弓羽の父親は自宅で血を吐いて、倒れこんでいた。
弓羽がアルバイトを終えて帰宅した時、乾き始めた血の海の上に彼は浮かんでいた。
「お父さんっ!?」
ここ一月ほど、体調は良かったのに。
一時期は入院するほどまでに悪かったが、ようやく退院できたのに。
父子家庭の援助を国から受けて、病院にも通えていたのに。
「お父さん、なんでー‥‥‥。
なんでそんなに苦しいならもっと早く言ってくれなかったの。
なんで、ねえ、ねえ‥‥‥お父さんーー」
語り掛けても返事は帰ってこない。
携帯で緊急電話をかけて救急車を呼んだが、それはすぐには来なかった。
血の海の中から父親を抱き上げてなく弓羽。
父親を抱きしめて泣く彼女を、駆け付けた緊急隊員が発見したのはそれから20分後の事だった。
どう声をかけても患者から離れない少女を引きはがし、救急車で病院にたどり着いたのあとーー
弓羽は血だらけのままで、待合室で緊急手術を受けている父親を待っていた。
翌朝、手術室から出てきた執刀医だか、担当医だかよくわからない人に呼ばれて、弓羽は説明を受ける。
「とりあえず、容体は安定したけど。
もうお父さんの意識は戻らないです、塩飽さん」
「えーー???
先生、それどういうこと???」
弓羽には意味が分からない。
「脳に大きな動脈瘤。
ああ、なんて言えばいいかな。血液が溜まったコブみたいなものができててね。
以前の入院記録はここにはないから、分からないけど。
退院できたということは、その時点では見つからなかったか。
脳の検査をしてなかったんだろうねーー」
「だから、なんで意識が戻らないの、先生!???」
説明なんてどうだっていい、結論を教えて!!
弓羽はそう叫びたかった。
「脳に大きな障害があるんだ。
それとー‥‥‥。血を流し過ぎてる。
いや、それよりもなんで前の病院は退院させたんだい?
お父さんの身体は、もうもたないって言われたから??」
「先生、意味わかんない。
だって、元気だからって。
そう言って退院したのに!?」
医師は悲しそうに、そうじゃないよ、と首をふって言った。
「君のお父さんは末期ガンだ、普通なら痛みで動けないほどにひどい状態だよ。
なぜ、ここまでもったのかが不思議なくらいにね。
もう後、数日かもしれない。
心の準備をしておいたほうがいいーー」
その後のことは覚えていない。
どうやって医師の部屋から出て、父親の病室に行ったのか。
ただ、こう言ったのだけは覚えている。
「先生、なら連れて帰ります。
一緒に、最後までいたいから‥‥‥」
弓羽が医師に言った、最後までいたいから。
その言葉の本当に意味をその医者は知らない。
弓羽は考える。
病室で寝ている父親を見て、何度も何度も心で呟く。
(ねえ、お父さん。わたしが死ぬのも、あと少しだから。
だから、それまで頑張って。
本当に‥‥‥苦しいと思うけど。
一緒に死にたいよ、ねえ、お父さんーー)
そして父親を呼んだタクシー運ぼうとしていた時。
弓羽は見てしまう。
あの、影細工のような男女たちが、その階に集まっていた。
その階はもう先が長くない、緊急治療を優先に受けるための患者たちの専用病棟。
黒い男女たちはーー
光るなんだろう、あれは、魂?
それともーー???
弓羽は見てしまう。
それを大切に運び、丁寧に案内する黒い男女がやがて空間に消えて行きーー
そして、その光の出てきた病室から聞こえてきた、残された家族の泣き声。
弓羽は悟った。
彼らは安らかな死後の世界への案内人。
死神、だと。
弓羽の父親は自宅で血を吐いて、倒れこんでいた。
弓羽がアルバイトを終えて帰宅した時、乾き始めた血の海の上に彼は浮かんでいた。
「お父さんっ!?」
ここ一月ほど、体調は良かったのに。
一時期は入院するほどまでに悪かったが、ようやく退院できたのに。
父子家庭の援助を国から受けて、病院にも通えていたのに。
「お父さん、なんでー‥‥‥。
なんでそんなに苦しいならもっと早く言ってくれなかったの。
なんで、ねえ、ねえ‥‥‥お父さんーー」
語り掛けても返事は帰ってこない。
携帯で緊急電話をかけて救急車を呼んだが、それはすぐには来なかった。
血の海の中から父親を抱き上げてなく弓羽。
父親を抱きしめて泣く彼女を、駆け付けた緊急隊員が発見したのはそれから20分後の事だった。
どう声をかけても患者から離れない少女を引きはがし、救急車で病院にたどり着いたのあとーー
弓羽は血だらけのままで、待合室で緊急手術を受けている父親を待っていた。
翌朝、手術室から出てきた執刀医だか、担当医だかよくわからない人に呼ばれて、弓羽は説明を受ける。
「とりあえず、容体は安定したけど。
もうお父さんの意識は戻らないです、塩飽さん」
「えーー???
先生、それどういうこと???」
弓羽には意味が分からない。
「脳に大きな動脈瘤。
ああ、なんて言えばいいかな。血液が溜まったコブみたいなものができててね。
以前の入院記録はここにはないから、分からないけど。
退院できたということは、その時点では見つからなかったか。
脳の検査をしてなかったんだろうねーー」
「だから、なんで意識が戻らないの、先生!???」
説明なんてどうだっていい、結論を教えて!!
弓羽はそう叫びたかった。
「脳に大きな障害があるんだ。
それとー‥‥‥。血を流し過ぎてる。
いや、それよりもなんで前の病院は退院させたんだい?
お父さんの身体は、もうもたないって言われたから??」
「先生、意味わかんない。
だって、元気だからって。
そう言って退院したのに!?」
医師は悲しそうに、そうじゃないよ、と首をふって言った。
「君のお父さんは末期ガンだ、普通なら痛みで動けないほどにひどい状態だよ。
なぜ、ここまでもったのかが不思議なくらいにね。
もう後、数日かもしれない。
心の準備をしておいたほうがいいーー」
その後のことは覚えていない。
どうやって医師の部屋から出て、父親の病室に行ったのか。
ただ、こう言ったのだけは覚えている。
「先生、なら連れて帰ります。
一緒に、最後までいたいから‥‥‥」
弓羽が医師に言った、最後までいたいから。
その言葉の本当に意味をその医者は知らない。
弓羽は考える。
病室で寝ている父親を見て、何度も何度も心で呟く。
(ねえ、お父さん。わたしが死ぬのも、あと少しだから。
だから、それまで頑張って。
本当に‥‥‥苦しいと思うけど。
一緒に死にたいよ、ねえ、お父さんーー)
そして父親を呼んだタクシー運ぼうとしていた時。
弓羽は見てしまう。
あの、影細工のような男女たちが、その階に集まっていた。
その階はもう先が長くない、緊急治療を優先に受けるための患者たちの専用病棟。
黒い男女たちはーー
光るなんだろう、あれは、魂?
それともーー???
弓羽は見てしまう。
それを大切に運び、丁寧に案内する黒い男女がやがて空間に消えて行きーー
そして、その光の出てきた病室から聞こえてきた、残された家族の泣き声。
弓羽は悟った。
彼らは安らかな死後の世界への案内人。
死神、だと。
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