正しい魔眼の使い方

星ふくろう

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第一章 愛の奇跡

死神の来訪 3

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「でも、急いだほうがいい。
 悪魔も近付いている、それに死神もーー」

「悪魔は分かるけど、なんで死神!?」

 まあ、いいわ。
 そう杏は話を切り上げると、担当する教室のドアを開けた。

「あ、杏ちゃんだーー」

「センセー遅刻ーー」

 そんな返事が返ってくる。
 教壇に立つと、杏は全員を見た。

「塩飽さんと溶目さんがもうすぐ、死ぬわ‥‥‥」

 その言葉に生徒たちは黙り込む。

「わたしは、最後を看取りに行きます。
 一緒に行きたい人は?」

 しかし、誰も返事をしない。
 杏は信じられないと声を上げてしまった。

「あなたたち!?
 友達じゃーー」

「ないよ、先生」

 どこかで声がした。

「あの二人のおかげで、どれだけ授業遅れたかーー」

「まあ、消えてくれるんなら、いいんじゃないっすかー!?」

 そんな内容の声がクラスのそこかしこから上がってくる。
 ああ、そう‥‥‥
 杏は黙って、黒板に自習。
 そうチョークで書き込んだ。
 教壇を降りて文句を言い続ける生徒たちに、出入り口の扉を開けながら振り返る。
 主霊をまだ消していないから、その様は赤い怒りのように生徒には映ったかもしれない。

「あんたたち。
 --最低よ」

 杏は最後に生徒全員を見渡して、言うと扉を閉めた。
 通勤用の愛車に乗り込むと、エンジンをかけ、カーナビを起動させる。
 主霊に尋ねた二人の居場所を探して、そう命じた。
 
「イブローズ、二人がどこにいりかわかる?」

 個別だと間に合わないかもしれない。
 できるなら、最後だけは看取ってやりたい。
 そしてーー

「なんだい、杏。
 まさか、死神がいるなら、やるつもりかい?」

 心配そうにイブローズが問いかける。

「当たり前でしょ!?
 生徒の魂を悪魔なんかに、やるもんですか!
 渡すなら、あの世への守護神。
 死神に渡すわーー」

 ああ、また杏の悪い癖が出てしまった。
 あんまり悪魔との協定に手をだすと、また妖精界の評議会からクレームが来る。
 イブローズは眩暈を感じながら、杏がだしたカーナビのある画面を指差す。

「ここに二人はいるよ。
 多分、これまでと同じ。
 ペアで、死を迎えようとしてるんだよ‥‥‥」

 そう悲しそうに言いながら。

「そのまま、魂を食べられるなら、守るのも教師の役目よ!!」

 杏はそう言うと、愛用の赤いスポーツカーのアクセルを踏み込んだ。



 弓羽は死神を恐れていた。
 死へのいざない人。
 魂の狩人。
 そして、死刑執行者。
 そう思っていたからだ。

 だから、死神の伸ばされた手を、自分が触れないと思いながらも無意識に払いのけた時。
 透き通るはずの彼女の手は、なぜか、死神の手に触れていた。
 その事に驚いてしまい、死への恐怖も相まって、座り込んだまま寝室の壁際まで後ずさってしまった。

「ほうー‥‥‥」

 彼はーー影絵だったその黒い影は驚いたように呟くと姿を変えた。

「だっだれーー!??」

 そこには30代の、金髪の背の高い白人の男性がたっていた。
 彼は、上品な仕草で被っていた帽子を取り、胸に手を当てると、丁寧に挨拶をする。

「私に触れた人間は、実に三百年ぶりだね。
 こんにちは、日本人のお嬢さん」

 彼はにっこりと笑い、そう、弓羽に会釈した。
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