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第二章 神の気まぐれ
死神の恋心 3
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「では、弓羽さん。
お父さんの身体をお借りしますよ。
杏、ああ、水上さん。またご挨拶に。
妖精王、その雫さんの補佐をしっかりするんだね。
では……」
「待ってーー」
弓羽の制止の声を無視して、死神は消えて行った。
彼女の父親の肉体と共に‥‥‥
「お父さん、挨拶だけしたかったのにーー」
すすり泣く弓羽を雫がそっと抱きしめてやる。
もう大丈夫だから、私が守るからね、と。
「しーちゃん、ごめんなさい。
弓羽が悪いのに、弓羽の為に……」
「いいの、弓羽は悪くない。
誰も悪くないよ。
もういいの。
エンバー、ねえ、助けてくれるよね?
直接どうこうなんて言わない。
でも、補佐はしてくれるよね?
それとも見捨てていく?
私はどっちでもいいよ。
やることをするだけだから。死んでも、弓羽だけは助ける」
妖精王は何も言えない。
契約を交わしてもいいし、精霊使いになればどうにでもできる。
そんな問題だからだ。
「でも、しーちゃん触ってるじゃん。
もう、エンバーの負けだよ。
王様なら、それくらいけじめつけなよ」
それを言われてもう後には引けない。
いまこの光景を多くの妖精や精霊が見ている。
見えない場所で、悪魔や神々すらも。
「雫、精霊使いになってくれないか。
弓羽も救える。
わたしは失った世界の形を取り戻したい。
かつて、友であった人間の精霊使いたちのように。
もう一度、語り会いたい」
「はあ、本当にエンバーって勝手だよね。
しーちゃんにノーなんて返事あるはずないじゃん。
それになりたくてなりたくてなりたくて。
必死になって追いかけてたのに。
弓羽はおまけだったことくらい知ってるよ。まあ、おまけってのも言い方変だけど」
これには雫が驚いた。
全部、知ってて愛してるなんて言ってたの、と。
ある意味、利用したのは自分なのに。
そう、雫の目に流れる涙が語っていた。
「知ってるよ。
しーちゃんは誰よりも貪欲だもん。
独占欲も強いし、その分、犠牲になろうなんて馬鹿なことするし。
自分の欲望に魂売り渡してでもなりたいくせに、出来ないないかもしれないなんて。
勝手に孤独になるし。ほんと、めんどくさい」
「弓羽、あんた、全部知っててーー??」
「だから、最初から言ってるでしょ?
弓羽の全部あげるから、最後まで頑張ってって」
「雫ーーわたしたちの負けだ。
弓羽の愛情には誰も勝てない。
もう止めよう、わたしもお前も自分のことだけに思いが行き過ぎてた。
すべてを見ていた弓羽の勝ちだ。
お前はいまからもう精霊使いだよ。
わたしの全てを受け取ってくれ」
「だってーー」
「しーちゃん、うるさいよ?
はいって言えば?
弓羽の我慢、無駄にする気?」
「うーー!!
弓羽の意地悪!!
はい、契約するわよ‥‥‥でも毎朝、殴るからね」
「いや、それはーー」
「エンバーサンドバッグかあ。
大変だねー妖精王も。
しーちゃん、どんどん強くなるから逃げないと怪我するねーー」
「弓羽、止めてくれ……」
「やだーしーらない」
そんな掛け合いの横で一人、杏は呆然としていた。
「どうしよ、契約しちゃった……。
もし、墜とされたらあの世行き?
まだ、誰にも抱かれてないのにーー」
そんな問題じゃないだろ。
イブローズは突っ込みたかったが、黙っていた。
世界に大きな変革が始まる。
どうするのさ、妖精王様。
そう、イブローズはぼやいていた。
お父さんの身体をお借りしますよ。
杏、ああ、水上さん。またご挨拶に。
妖精王、その雫さんの補佐をしっかりするんだね。
では……」
「待ってーー」
弓羽の制止の声を無視して、死神は消えて行った。
彼女の父親の肉体と共に‥‥‥
「お父さん、挨拶だけしたかったのにーー」
すすり泣く弓羽を雫がそっと抱きしめてやる。
もう大丈夫だから、私が守るからね、と。
「しーちゃん、ごめんなさい。
弓羽が悪いのに、弓羽の為に……」
「いいの、弓羽は悪くない。
誰も悪くないよ。
もういいの。
エンバー、ねえ、助けてくれるよね?
直接どうこうなんて言わない。
でも、補佐はしてくれるよね?
それとも見捨てていく?
私はどっちでもいいよ。
やることをするだけだから。死んでも、弓羽だけは助ける」
妖精王は何も言えない。
契約を交わしてもいいし、精霊使いになればどうにでもできる。
そんな問題だからだ。
「でも、しーちゃん触ってるじゃん。
もう、エンバーの負けだよ。
王様なら、それくらいけじめつけなよ」
それを言われてもう後には引けない。
いまこの光景を多くの妖精や精霊が見ている。
見えない場所で、悪魔や神々すらも。
「雫、精霊使いになってくれないか。
弓羽も救える。
わたしは失った世界の形を取り戻したい。
かつて、友であった人間の精霊使いたちのように。
もう一度、語り会いたい」
「はあ、本当にエンバーって勝手だよね。
しーちゃんにノーなんて返事あるはずないじゃん。
それになりたくてなりたくてなりたくて。
必死になって追いかけてたのに。
弓羽はおまけだったことくらい知ってるよ。まあ、おまけってのも言い方変だけど」
これには雫が驚いた。
全部、知ってて愛してるなんて言ってたの、と。
ある意味、利用したのは自分なのに。
そう、雫の目に流れる涙が語っていた。
「知ってるよ。
しーちゃんは誰よりも貪欲だもん。
独占欲も強いし、その分、犠牲になろうなんて馬鹿なことするし。
自分の欲望に魂売り渡してでもなりたいくせに、出来ないないかもしれないなんて。
勝手に孤独になるし。ほんと、めんどくさい」
「弓羽、あんた、全部知っててーー??」
「だから、最初から言ってるでしょ?
弓羽の全部あげるから、最後まで頑張ってって」
「雫ーーわたしたちの負けだ。
弓羽の愛情には誰も勝てない。
もう止めよう、わたしもお前も自分のことだけに思いが行き過ぎてた。
すべてを見ていた弓羽の勝ちだ。
お前はいまからもう精霊使いだよ。
わたしの全てを受け取ってくれ」
「だってーー」
「しーちゃん、うるさいよ?
はいって言えば?
弓羽の我慢、無駄にする気?」
「うーー!!
弓羽の意地悪!!
はい、契約するわよ‥‥‥でも毎朝、殴るからね」
「いや、それはーー」
「エンバーサンドバッグかあ。
大変だねー妖精王も。
しーちゃん、どんどん強くなるから逃げないと怪我するねーー」
「弓羽、止めてくれ……」
「やだーしーらない」
そんな掛け合いの横で一人、杏は呆然としていた。
「どうしよ、契約しちゃった……。
もし、墜とされたらあの世行き?
まだ、誰にも抱かれてないのにーー」
そんな問題じゃないだろ。
イブローズは突っ込みたかったが、黙っていた。
世界に大きな変革が始まる。
どうするのさ、妖精王様。
そう、イブローズはぼやいていた。
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