放逐された間違われ聖女は世界平和に貢献する

星ふくろう

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二人の聖女

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「エミリオ様‥‥‥」
 この方ならばわたしを受けとめて下さる。
 例え王族の末子でも。
 聖女になることが出来なかったとしても。
 そのままの自分を受け入れてくれるはずだ。あの優しい言葉と二人の記憶が真実ならば。
 エミリオ皇太子はミレイアの元にたどりつくと、そっと膝をついた。
 その手を差し伸べ、優しい笑顔をミレイアに向ける。
「さあ、ミレイア。
 わたしの手を取りなさい」
 そうささやく彼のまなざしは、つい先日の愛をささやいた時となにも変わらなかった。
「はい、エミリオ皇太子殿下‥‥‥」
 ミレイアはその手を握りしめて、エミリオ皇太子と共に立ち上がる。
 ああ、これで帝国へと行くことが出来る。
 聖女になれなくても、この愛する男性だけがいればそれでいい。
 ミレイアは幸せの絶頂に浸っていた。
 そしてエミリオ皇太子はその場に居合わせた各国の要人を含む衆人環視の前で宣言する。

「今日は良き日ゆえに、できることならば王国と帝国。
 その双方に仇となるような発言は控えたかった。
 しかし、お集りの御一同。
 どうか、この帝国の次期皇帝補としてのわたしの声をその御耳に入れて頂きたい。
 我が帝国は、王国よりこの、ミレイア第二王女様とわたしの婚儀をなすはずでした。
 だが、先程の女神フィオナ様の大神官様および、王国のリブル男爵殿の御説明によりーー」
 え?
 なんですか、エミリオ皇太子様。
 その前置きは?
 婚儀をなすはずでした‥‥‥?
 あなた様は、地位など関係なくこのわたしが大事だと、そう言われていたのでは??
 ミレイアの視線は次第に怒りを帯びたものに変わる。
 そして、エミリオ皇太子の宣言は続いた。
「ミレイア第二王女は、その実、王族ではあるものの。
 王女を名乗れない身分であることが判明いたしました。
 これは明らかな詐欺的行為であり‥‥‥まだ、聖女としての格があればよかったのだが。
 せめて、この事実を君から先に聞いておきたかったよ、ミレイア。
 そうすれば、僕は君をいくらでも守れたのにーー」
「そんな!?
 だって、わたしもつい先ほど!!」
 だめだよ、そうエミリオ皇太子はくびをふる。
「もう分かっているだろう?
 僕たちは国の指導者の一族なのだ。
 知らなかった。それで両国の関係にひびを入れることは許されないことを」
 では?
 では、この宣言は何なのですか?
 婚約破棄を成そうとするその宣言こそが、両国にひびを入れるのでは!?
 ミレイアはそう叫びたかったが、もう押し黙るしかなかった。
 これ以上の発言は、傷口を広げるだけだ。
 その程度には、理解をしていたからだ。
「国王陛下ならびに王国の貴族諸侯どのたちにお詫びを申し上げたい。
 我が帝国は、この度の婚約を破棄させていただく。
 どうかこれにて、ミレイア王女の王女を名乗る権利が無かったことに対する言及・詰問・両国間の賠償など。
 その全てをここで終わらせていただきたい。
 我が帝国は王国とも、永年にわたり良き友でありたいと願っております」
 見事な場の治め方だった。
 両国に恥をかかせず、また国際問題にも発展しない。
 エミリオ皇太子の政治的手腕の片鱗を見せつけた。
 そんな一場面だった。   
「さらばだ、ミレイア。
 君への愛は嘘ではなかった。
 どうか幸せに」
 エミリオ皇太子は静かに言い放った。



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