放逐された間違われ聖女は世界平和に貢献する

星ふくろう

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放逐された聖女

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「いってぇ、なんでぇ‥‥‥こりゃあ???」
 そこはー‥‥‥荒野ではなかった。
 いや、荒野ですらなかった。
 その光景を目にした時。
 ミレイアを抱えたクロウがそう呟いたのも、無理はなかった。
 転送の先に待つのは荒野と雪ばかりの荒れ果てた北の高地。
 そう、神殿を発つ前に言われていたからだ。
 しかし、いざその場に来てみたら‥‥‥
「盛況だなあ、おい、姫さんよ?」
 ミレイアです、クロウ様。
 恥ずかしそうに彼にしだれかかっているのを行き交う人々にじろじろと見られ、彼女は自分からその場に下りた。
「でも‥‥‥本当に、ここは国境付近でしょうか?
 こんなに整った街並みに、王都のような建物に行き交う種族の雑多なことーー」
「こりゃ‥‥‥あの魔導師、何か間違えてたんじゃねえのか?
 行き先とか、よ?」
「そのようにしか思えないですねえー」
 ミレイアはのんびりとしたもので、どうやらいきなりな戦闘がないことと、この場の雰囲気が王都と変わらずに暖かいことに安心したらしい。 
 クロウの腕にしがみついてはいるものの、辺りをしきりに見渡しては物珍しさに驚いていた。
  
 彼らがそう言い、呆れるのも無理はなかった。
 グレイシア王国の王都ハズーンはこの東方大陸でも三番目ほどに賑わう整備された都市機構を持っている。
 ここはそれには及ばないものの、その半分以下の建物や城壁もあれば、北側には城も見え、都市を取り巻く城壁の高さ、四方に見える長さからしてもやはり、
「おいらは、魔導師の送り間違い、だと思うんだがな?」
 まあ、気にしても仕方ねえか。
 クロウは真紅の髪に緑の瞳が映える、どうみても目立ちすぎる王女の恰好をまずはなんとかするか。
 そう考えたらしい。
「まあ、よくよく見りゃあ人間もそこかしこにいる。
 言葉が通じるかだよなあ‥‥‥」
 大陸の公用語か、エルフの公用語、古代帝国のどれかがこの大陸では使われる。
 さてどれが通じたものか。
 少しばかり先にあるけば開けたところがある。
「そこまで歩くかい?」
 足元に何も履いていないのでは可哀想だ。
 そう言い、クロウはミレイアを抱き上げると歩き始めた。
「ク、クロウ様‥‥‥」
 ん?
 気にすんなよ。
 そう左頬に大きな刀傷のある侯爵は優しい笑顔で応える。
「かまうこたあねえょ。
 人間、どっかで大変な時はあらあな」
 困った時は頼ればいいんだよ。
 大柄な剣士は素朴にそう言い、ミレイアは申し訳ない気もちになる。
 それよりも周りに目と耳を澄ましておきなよ。 
 そう、クロウはそっと彼女にささやく。 
 
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