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剣士への一歩
試験参
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しかしハヨンには弱点がある。ヘウォンはその弱点にはとうに気がついていた。
細身のために素早いが力は弱い。
これが町人の力比べなら勝算はあるが、白虎では敵国の鍛えぬかれた刺客や武人と戦わねばならぬときもある。そのようなとき、この者はどのようにして王達を守り抜くのだろうか。彼にとってそれは一番の疑問だった。
ヘウォンは力一杯拳でハヨンに殴りにかかる。これで対応できなければ、こいつは失格だ。ヘウォンはそう考えながら拳をハヨンの腹に叩き込もうとする。
しかし気がつけば彼の視界は反転し、床に転がっていた。
「ヘウォン様、膝をつかれましたので私の勝ちと言うことでよろしいでしょうか。」
ヘウォンは何が起こったのかしばし解らなかったが、だんだん頭の中で整理がつき、ハヨンに尋ねる。
「この武術、燐には無いものだな?」
「はい。私の師匠は遙か東の国から渡ってきたかたで、私は師匠の国で一般的な武術を教えていただいておりました。」
遙か東の国か。
ヘウォンにとっては他国は王の外交で関わるだけで何も学んだことはなく、文化についてはほぼ未知と言ってよかった。
「どのようにこんな巨体をひっくり返せたのか、なかなか興味深いな。また教えてはくれないか、少年よ。」
ヘウォンがそう言うと、ハヨンは目を瞬かせ、審判をしていた副隊長のハイルがぷっ、と吹き出した。ヘウォンが何がおかしいのだろうと首を傾げていると、ハイルが笑いながら指摘した。
「ヘウォンさん、彼女はれっきとした女性ですよ。」
「じょ、女性だと⁉」
ヘウォンは思わずハヨンの頭から足下まで穴があくほど見てしまう。こうなることを予測していたからか、ハヨンはそのことをさほど気にしていない様子だ。
「確かに、女性と言われればそう見える。」
混乱しているからか、女性に向ける言葉としてはかなり失礼な言葉をヘウォンは呟いた。ハヨンは豊満な体型でもなく、背も高い。そして、男ものの服を着ていたから間違えられても仕方はなかった。
「ヘウォンさんが鈍いのは知ってたんですけど、これはもう、鈍いどころでは無いですね。こんなんだから女性に振られてしまうんですよ。」
ハイルはなおもおかしそうに肩を揺らしながら笑っていた。
「何人もの女と浮き名を流しているお前には言われたくないな!」
ヘウォンは面白くないといった顔だ。
「申し訳ございません。入隊試験ではある程度激しい運動をするだろうと見こんで男物の服を着てきたのです。それと女であると申しあげた方がよろしかったのでしょうか」
ハヨンの言葉に、ハイルは頭を振る。
「いやいや、そんな身分を名乗るたびに女です、なんてつけるものではないものだし、それはしょうがないことです。ただ問題があるとすればヘウォンさんの見る目のなさでしょう。」
「お前なぁ、もう少しましな言い方をしてはくれないか。」
ハイルという男は、どうやらヘウォンに軽口を叩けるような間柄のようだ。年の差はそれなりにありそうだが、それだけ信頼している関係なのだろう。
細身のために素早いが力は弱い。
これが町人の力比べなら勝算はあるが、白虎では敵国の鍛えぬかれた刺客や武人と戦わねばならぬときもある。そのようなとき、この者はどのようにして王達を守り抜くのだろうか。彼にとってそれは一番の疑問だった。
ヘウォンは力一杯拳でハヨンに殴りにかかる。これで対応できなければ、こいつは失格だ。ヘウォンはそう考えながら拳をハヨンの腹に叩き込もうとする。
しかし気がつけば彼の視界は反転し、床に転がっていた。
「ヘウォン様、膝をつかれましたので私の勝ちと言うことでよろしいでしょうか。」
ヘウォンは何が起こったのかしばし解らなかったが、だんだん頭の中で整理がつき、ハヨンに尋ねる。
「この武術、燐には無いものだな?」
「はい。私の師匠は遙か東の国から渡ってきたかたで、私は師匠の国で一般的な武術を教えていただいておりました。」
遙か東の国か。
ヘウォンにとっては他国は王の外交で関わるだけで何も学んだことはなく、文化についてはほぼ未知と言ってよかった。
「どのようにこんな巨体をひっくり返せたのか、なかなか興味深いな。また教えてはくれないか、少年よ。」
ヘウォンがそう言うと、ハヨンは目を瞬かせ、審判をしていた副隊長のハイルがぷっ、と吹き出した。ヘウォンが何がおかしいのだろうと首を傾げていると、ハイルが笑いながら指摘した。
「ヘウォンさん、彼女はれっきとした女性ですよ。」
「じょ、女性だと⁉」
ヘウォンは思わずハヨンの頭から足下まで穴があくほど見てしまう。こうなることを予測していたからか、ハヨンはそのことをさほど気にしていない様子だ。
「確かに、女性と言われればそう見える。」
混乱しているからか、女性に向ける言葉としてはかなり失礼な言葉をヘウォンは呟いた。ハヨンは豊満な体型でもなく、背も高い。そして、男ものの服を着ていたから間違えられても仕方はなかった。
「ヘウォンさんが鈍いのは知ってたんですけど、これはもう、鈍いどころでは無いですね。こんなんだから女性に振られてしまうんですよ。」
ハイルはなおもおかしそうに肩を揺らしながら笑っていた。
「何人もの女と浮き名を流しているお前には言われたくないな!」
ヘウォンは面白くないといった顔だ。
「申し訳ございません。入隊試験ではある程度激しい運動をするだろうと見こんで男物の服を着てきたのです。それと女であると申しあげた方がよろしかったのでしょうか」
ハヨンの言葉に、ハイルは頭を振る。
「いやいや、そんな身分を名乗るたびに女です、なんてつけるものではないものだし、それはしょうがないことです。ただ問題があるとすればヘウォンさんの見る目のなさでしょう。」
「お前なぁ、もう少しましな言い方をしてはくれないか。」
ハイルという男は、どうやらヘウォンに軽口を叩けるような間柄のようだ。年の差はそれなりにありそうだが、それだけ信頼している関係なのだろう。
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