華の剣士

小夜時雨

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新たな生活

おかしな芸人

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 次の日の早朝にハヨンは目覚めた。もう少し寝ていても良かったのだが、どうやら緊張しているらしい。いつもより睡眠が浅い。昨日は食事や風呂に入るとき、見慣れないからか女官や下女達から注目を浴びるはめとなり、心が休まる場所は自分の部屋だけだった。また、自分の歩む道が決して平坦では無いことがわかっているので、気をはりつめていたのだろう。

「これから先、こんな神経ではもたないな…。」

とハヨンは自分に喝を入れてから寝台から起き上がった。
 昨日ハイルから受け取った制服に袖を通し、いっそのこと今から城内のことを知っておこうと部屋を出る。そして王族以外の者でも足を踏み入れることが許されている、庭に足を向ける。
 しかしそこにはもう先客がいた。官僚の誰かだろうかと身を強ばらせたが、出で立ちがどうも軽装で、次第に侵入者という考えが浮かんでくる。

「やぁ、朝早いね。馬の世話にでも行くの?」

 当の本人はのんびりとそんな挨拶までしてくる。どう対応すれば良いものか、と迷ったがとりあえず名のってもらうことにした。

「あの、あなたは…。」

 彼は酷く驚いた様子だったが、再び元の笑顔になる。

「俺はただの芸人だよ。よく王宮の宴会に呼ばれるんだけど…。あんた、もしかして新人?白虎隊の人なら俺の顔を知っている人多いと思うんだけど…。」
「そうなんですか。たしかに、私は最近入ったので、まだ城のことには疎くて…。」

 彼が笛を取り出すのを見て、本当かもしれないと少し警戒を緩める。

「しかしなぜ今この場所に?宴会はとうに終わっているでしょう。」
「実は秘密にして欲しいんだけどね。」

 と彼は声をひそめる。何事かと少し彼に近づけばとんでもないことを明かした。

「実はある女官の子に気に入られちゃってね。ちょっと夜を共に過ごしたと言いましょうか…。」

 思わず彼から数歩離れてしまう。

(軽い…)

 彼の印象が悪い方へと転がっていった。しかし、驚いた?と確信犯のような顔をしていたので遊ばれただけかもしれない。

「もしそれが本当なら、あなた、処罰を受けなければならないかもしれませんよ?」

 女官は基本、妃候補とも言われる。王族と見えるまみえる機会も多いため、見初められて妃となることが多いのだ。そのため女官達は他の男と関わりがあると妃となる機会を失うので、女官達の恋愛禁止は暗黙の了解とも言える。

「おお、怖いなぁ。」

 そう脅してもおどけて答えて、いかにも楽しそうなので彼の真意は全く掴めなかった。

「これじゃあ嘘かわからないので城の人には何も言いませんけど…。」
「いやぁ、そりゃ助かるよ。ところであんたの名前は?」
(私が名乗れば彼も名乗るかもしれない。それに、女官と会っていたのを見かけたらその名前を上に報告すればいいし…。)

 名乗るか迷ったがそう考えたハヨンは自分の名を明かす。

「ハヨンです。」
「やっぱり女の子なんだ。女の子の兵士って珍しいな。俺はリョン、よろしく。」

 握手を求められ、思わず素直に応じてしまう。彼の優しい笑みが原因かもしれない。

「さて、俺はそろそろ帰るとしますか。」

とリョンは裏門に向かって歩き出す。しかし途中で何か思い出すように足を止め、振り返った。

「敬語、止めてね。」

 そう言われてもハヨンには戸惑うしかなかった。

「だってあなたは武官で俺は一介の芸人なのに、俺が敬語なしで喋ったら悪いだろ?」
(自分も敬語にするって考えは無いんだろうか。)

 ハヨンの考えをよそに、じゃあ決まりだからな!と手をふって姿を消したリョンに呆然とした。







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