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武闘会
ベクホという男
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「すげえなぁハヨン、ついに決勝じゃねぇか。」
ハヨンが休憩所に立ち寄った時、ガンハンとドマンが真っ先に声をかけてきた。
「うん、頑張ってくるね。ところで二人はベクホってどんな人か知ってる?」
どうやらハヨンの対戦相手はその人物なのだが、同期ではガンハンとドマンしか交流を持っていないので、何も情報を持っていなかった。
「えっ、逆に知らないの。ハヨン。結構噂になってるよ、あいつのこと。」
ドマンが驚いたように言う。
「ばか、ハヨンは寄宿舎の場所がちげえから、そういうの届きにくいんだよ」
首を傾げているドマンにガンハンが焦ったようにつっこむ。ハヨンは微妙に気まずい思いをした。
「とりあえずだな、やつは将来有望で、いつかは隊長になれるだろうって噂されてんだ。」
二人の話によれば、貴族出身で容姿端麗、頭脳明晰、おまけに武術も朱雀の新入隊員の中で一番と言われる強者らしい。
(確かに、それは将来を約束されたも同然だな…。)
朱雀の隊長もそれはそれは彼のことを目にかけているようだ。
「彼の武器は何か知ってる?」
「刀だよ。俺、第一試合で当たって、たたきのめされちまった。」
各隊の中でも優秀な白虎にいるガンハンでさえその状況なのだから、彼がいかに強いかがうかがい知れた。
(刀か…。)
自分の十八番(おはこ)であり、彼の十八番でもある武器。これはそう簡単に先行きは読めなかった。
しばらくガンハンとドマンと3人で談笑していたが、彼らは同じく先に敗れてしまった隊員と観客席に行くこととなり、別れる。ハヨンはここで精神統一でもして心を落ち着かせようと考えていた時に、声をかけられた。
「お前がハヨンだよな?俺はベクホ。お前の次の対戦相手だ。」
決勝戦ということで、観客も多く集まるからか、会場を再度設営しなおすために、ハヨンはかなり長い休みをとっていた。
「そう。私がハヨン。よろしくね。」
ベクホに手を差し出されたので、素直に握手をした。
(…ずいぶんと鍛えてるんだな。)
握った彼の手はまめができていたり、何年も剣の練習をしていたのか、手の皮が人よりもずいぶんと固かった。
「俺はあんたには負けられないんだ。だから下見がてらにあんたに話しかけた。」
「随分はっきりと言うんだね。」
「それは俺がお前を認めているからだ。はじめに女が白虎の入隊を志願したと聞いたときは物好きがいるものだ。どうせすぐに辞めていくだろうと思っていたんだが、今日の試合を見て考えが変わった。あんたは俺にとって一番危ない人物だ。」
(彼には私がそんなに異常者に見えるんだろうか…。)
あけすけに、しかも自分のことを危険と言われてしまっては、さすがにハヨンも少しへこんだ。ハヨンが少し落ち込んだ様子をみせたせいかベクホは慌ててつけ加える。
「俺が言いたいのは、俺は少しでもはやく王に認められたいが、あんたはそれを妨げる大きな要因になるってことだ。別にあんたのことを変人と言っているわけではない。」
「ベクホは…。どうして王に認められたいの?」
「それは…。あまり多くは言えないが、近隣の国が最近不穏な動きを見せている。だから俺はそれをはやく抑えたいんだ。それにはできるだけ上の立場にならなければならない。」
だからお前に勝ちは譲れないんだ。そう言った彼の目は、燃えているような強い光を持っていた。地位が欲しい、富が欲しいと言って目指すものや、何となく入隊したものとは違う、真面目そうな雰囲気だ。少し無遠慮な物言いだが、ハヨンには好ましく見えた。
ハヨンが休憩所に立ち寄った時、ガンハンとドマンが真っ先に声をかけてきた。
「うん、頑張ってくるね。ところで二人はベクホってどんな人か知ってる?」
どうやらハヨンの対戦相手はその人物なのだが、同期ではガンハンとドマンしか交流を持っていないので、何も情報を持っていなかった。
「えっ、逆に知らないの。ハヨン。結構噂になってるよ、あいつのこと。」
ドマンが驚いたように言う。
「ばか、ハヨンは寄宿舎の場所がちげえから、そういうの届きにくいんだよ」
首を傾げているドマンにガンハンが焦ったようにつっこむ。ハヨンは微妙に気まずい思いをした。
「とりあえずだな、やつは将来有望で、いつかは隊長になれるだろうって噂されてんだ。」
二人の話によれば、貴族出身で容姿端麗、頭脳明晰、おまけに武術も朱雀の新入隊員の中で一番と言われる強者らしい。
(確かに、それは将来を約束されたも同然だな…。)
朱雀の隊長もそれはそれは彼のことを目にかけているようだ。
「彼の武器は何か知ってる?」
「刀だよ。俺、第一試合で当たって、たたきのめされちまった。」
各隊の中でも優秀な白虎にいるガンハンでさえその状況なのだから、彼がいかに強いかがうかがい知れた。
(刀か…。)
自分の十八番(おはこ)であり、彼の十八番でもある武器。これはそう簡単に先行きは読めなかった。
しばらくガンハンとドマンと3人で談笑していたが、彼らは同じく先に敗れてしまった隊員と観客席に行くこととなり、別れる。ハヨンはここで精神統一でもして心を落ち着かせようと考えていた時に、声をかけられた。
「お前がハヨンだよな?俺はベクホ。お前の次の対戦相手だ。」
決勝戦ということで、観客も多く集まるからか、会場を再度設営しなおすために、ハヨンはかなり長い休みをとっていた。
「そう。私がハヨン。よろしくね。」
ベクホに手を差し出されたので、素直に握手をした。
(…ずいぶんと鍛えてるんだな。)
握った彼の手はまめができていたり、何年も剣の練習をしていたのか、手の皮が人よりもずいぶんと固かった。
「俺はあんたには負けられないんだ。だから下見がてらにあんたに話しかけた。」
「随分はっきりと言うんだね。」
「それは俺がお前を認めているからだ。はじめに女が白虎の入隊を志願したと聞いたときは物好きがいるものだ。どうせすぐに辞めていくだろうと思っていたんだが、今日の試合を見て考えが変わった。あんたは俺にとって一番危ない人物だ。」
(彼には私がそんなに異常者に見えるんだろうか…。)
あけすけに、しかも自分のことを危険と言われてしまっては、さすがにハヨンも少しへこんだ。ハヨンが少し落ち込んだ様子をみせたせいかベクホは慌ててつけ加える。
「俺が言いたいのは、俺は少しでもはやく王に認められたいが、あんたはそれを妨げる大きな要因になるってことだ。別にあんたのことを変人と言っているわけではない。」
「ベクホは…。どうして王に認められたいの?」
「それは…。あまり多くは言えないが、近隣の国が最近不穏な動きを見せている。だから俺はそれをはやく抑えたいんだ。それにはできるだけ上の立場にならなければならない。」
だからお前に勝ちは譲れないんだ。そう言った彼の目は、燃えているような強い光を持っていた。地位が欲しい、富が欲しいと言って目指すものや、何となく入隊したものとは違う、真面目そうな雰囲気だ。少し無遠慮な物言いだが、ハヨンには好ましく見えた。
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