華の剣士

小夜時雨

文字の大きさ
40 / 221
暗躍する者嫌う者

嫌がらせ

しおりを挟む
(あれ…?)

  ハヨンはガンハンとドマンと共に馬小屋を掃除した後、いつものように後宮に戻ってきた。ハヨンは女官でも下の位である女性達と寝食を共にしているので、後宮とはほとんど関わりがない。
  しかし、ここにいる女官は王族の目にとまれば妃になれる事があるので、多くの少女は、着飾ったりしていた。そのなかでも隊服や、訓練服を着ていたハヨンは目立ったに違いない。しかし、彼女達はハヨンを遠巻きに、奇異の目で見てはいたものの、嫌がらせはなかった。
いつも彼女たちより遅くに食事をとるハヨンに、食事は残しておいてくれるし、風呂もちゃんと湯を張ったままになっていた。

(食事が、無い…。)

   厨房の釜や鍋の蓋を開けてみたが、何も入っていなかった。そしてこれがリョンの言っていたことか、と察した。しかし彼女たちに食事を取り上げられるような悪いことをしただろうか。

(いや…私に嫉妬されてもな…)

  ハヨンは諦めて、今日は自室にあるもので腹を満たすことにする。たまに職場の上司にもらう差し入れが残っていたはずだ。兵士だからかなんなのか、それも日持ちのする干し肉ばかりだが。

(たしか、今日はなぜかリョンに林檎を貰ったし。)

  リョンと話を終えて、立ち去ろうとしたとき、これをやる、と渡されたのだ。もしかすると彼は女のやり口がわかっているのかもしれない。

(後宮に恋人がいるだけに…。)

なんてことを、ハヨンは少し考えた。
  この様子ならもしかすると風呂も入れないかもしれない。

(どうなっているか見ておこう)

ハヨンは踵を返し、風呂場に向かった。
   結局風呂も浴槽の湯は抜かれていたので、ハヨンは少しだけ張り直して体を清める程度しかできなかった。

(なんか、腹立つって言うよりも、めんどくさいからやめてほしい…。)

  ハヨンは次の日、そう考えながら目覚めた。どうすれば彼女らの攻撃を避けられるか。今日は彼女たちと同じ時間に食事をとって、何を話しているか聞いてみることにする。それに一緒に食事をとれば、食事を捨てられることも無いのだ。
しかしやはり女というもの大声で噂をする勇気はないのか、ひそひそと囁きながらハヨンを見てくるばかりだ。

(決定的なことをしたら、私に仕返しされると思っているのかな…。)

  仮にもハヨンは兵士だ。他の女性よりは腕っぷしも強いし、彼女たちからすれば恐いのだろう。

(結局みんながなに話してるのか聞けなかったな…。)
「ちょっと、あなた。まちな。」

ハヨンが食堂を出たとき、後ろから声をかけられた。振り向くとこの寮を取り仕切る中年ぐらいの女性が立っていた。彼女は女官としては珍しい、妃にはならないと宣言し、仕事だけで位を上げていった女官だ。さすがにハヨンもここの責任者でもある彼女とは話したことはある。しかし、特に用事も無さそうな日に声をかけられるのは珍しかった。

「なんでしょう。」
「あなた、昨日ご飯とお風呂どうしたの?」

  どうやらハヨンが嫌がらせを受けているのに気がついたようだ。

「昨日は貰い物の林檎と干し肉食べました。お風呂場少し張り直して体を清める程度に…。でもすいません、燃料の無駄遣いでしたか?」
「いえ、あなたが悪い訳じゃないのよ。あの子達の中に問題な人がいるだけで。ごめんなさいね。昨日見回りの時に気がついたのよ。あなたの食器だけ使われていなかったり、昨日の薪を使った量が少し違ったから。」

ハヨンは彼女がこんなにも周りを見ていたことに驚いた。









しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編) 王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編) 平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。  発端は彼女の父親が行方不明となり、叔父である父の弟が公爵邸に乗り込んで来たこと。  何故か叔父一家が公爵家の資産に手を付け散財するが、祖父に相談してもコロネに任せると言って、手を貸してくれないのだ。  そもそも父の行方不明の原因は、出奔中の母を探す為だった。その母には出奔の理由があって…………。  残された次期後継者のコロネは、借金返済の為に事業を始めるのだ。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

処理中です...