華の剣士

小夜時雨

文字の大きさ
39 / 221
暗躍する者嫌う者

舌打ち

しおりを挟む
「…っ!なぜあんなところに奴がいる…」

  舌打ちをした男は誰もいない廊下を足早に一人でに突っ切っている。

(あの者がこの城にいるととんでもなく厄介だ。できることなら早く追い出さなければ…。)

  男が追い出したいと思っている人物は、短期間で新兵からリョンヤン王子の専属護衛となった女である。
  その時、笠を目深に被った男が廊下の角に断っているのが目にはいる。彼は男の間者だ。

「どうだった。」
「やはり、チュ家の血をひく者でした。簡単に辞めさせては後ろ楯が大きいので、内政を乱しかねません。」
「そうか、ご苦労だった。また何かわかったら伝えろ。」
「は。」

間者は一瞬のうちに姿を消す。間者が消えた時、男は少しの風圧を感じた。

(人がいないか確認して消えろと言ったのに…。まぁ、今回は誰もいなかったが。それにあいつの情報収集能力は稀なものだ。)

  男は何事もなかったかのように歩きだした。

(自分の正体に奴は気づいていないのか。気づいていたらかなり厄介だ。)

男は彼女の赤い瞳を思いだし、忌々しいと言わんばかりに顔を歪めた。

(奴も一緒に追い出してしまえる手だてはないか…。どうせ追い出すなら一人も二人も一緒だ。)

男は既にある人物を城から追い出す手だてを考え始めていた。

(もし奴を殺せたなら一番楽だが、奴を手にかけることは無理だ。)

男は自身の手から腕にかけての火傷の後を見る。

(もしあの書さえ手に入れば、この国は俺の者なのに。)

男はもうすぐ人通りの多い廊下に出るので、顔を笑顔に、そして歩調はゆっくりと優雅に変えていく。彼が暗躍していることは、まだ手下の者しか知らなかった。




しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編) 王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編) 平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。  発端は彼女の父親が行方不明となり、叔父である父の弟が公爵邸に乗り込んで来たこと。  何故か叔父一家が公爵家の資産に手を付け散財するが、祖父に相談してもコロネに任せると言って、手を貸してくれないのだ。  そもそも父の行方不明の原因は、出奔中の母を探す為だった。その母には出奔の理由があって…………。  残された次期後継者のコロネは、借金返済の為に事業を始めるのだ。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

処理中です...