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暗躍する者嫌う者
そんなはずはない
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「今日は初めて講義以外での護衛ですね。」
リョンヤン王子がハヨンのいる後ろを振り返って微笑んだ。
「そうですね、精一杯お守りさせていただきます。」
リョンヤン王子は小さく頷いて再び歩き出す。護衛も従者も、主の斜め後ろを歩いていく。横に立つものは彼らに劣らない力を持つものだけ。それは権力だったり財力だったりと様々だ。
(これはもし、リョンヤン王子と私がいくら打ち解けても縮まらない距離だ。でも女官の子達はそこに並びたいんだ…。)
何の目的かはわからないが、リョンヤン王子がいつか大事な人ができるなら、それはできるだけ心の優しい人がいい、とハヨンは考えた。
(美しい悪女もいるって言うし…。)
近隣の国で、美女を溺愛した故に身を滅ぼした王が何人もいることを思い出す。
(愛とかよくわからないな…。)
母チャンヒや師匠のヨウを大事に思う気持ちとはまた違うのだろう。ハヨンにはさっぱりわからないが、知りたい訳でもなかった。
(いつかあの人に恩を返せたら、私はそれで十分だ。)
ハヨンは腰に下げている刀の鞘をそっと撫でる。例え遠い未来でも、ハヨンには一歩ずつ近づいている実感があるので、なんとも心穏やかなものだった。
「すみません、書庫はここです。」
リョンヤンは鍵を開けて入っていく。ハヨンは中に何も怪しい人物はいないか確認した後、戸口に戻り、そこで見張りをする。
「持っていきたい図書がたくさんあるので少し時間がかかると思います。」
リョンヤン王子が少し離れたところから、声のを大きくして話す。
「わかりました。いくらでも待ちますので、気兼ねなくお探しなさってください。」
ハヨンは初めてのまともな警護に少し胸を踊らせた。
「お待たせしました」
半刻程経って、リョンヤン王子が戸に向かって歩いてきたとき、ハヨンは呆気に取られた。
「お、王子?その書物の量では歩くのは大変ではないですか?」
書物が重い訳ではない。どれも巻物なので、軽いのだが、丸めた巻物を潰さずにすべてを抱えて持っていくことに少々無理があると思うのだ。
「それはそうですが、これを全部小分けにして運んだら、私の執務の時間が無くなってしまいます。」
リョンヤン王子は卓上に置いてある大量の巻物をため息をつきながら眺めた。
「手伝いたいのですが私はリョンヤン王子を護衛する身です。何かで手が塞がるととっさの時に間に合いません。」
うーん、とリョンヤン王子が思案していると、入り口を誰かが稲妻のように素早く横切った。人並みではない速さなのでハヨンは思わず身構える。
しかしリョンヤン王子は臆せずに書庫を飛び出して、
「リョンヘ!急いでるところ悪いんだけど、手伝ってはくれないか!」
と大きな声で呼び掛けた。
(いつもの話し方と違う…!)
新鮮に感じながらも、ハヨンはリョンヤン王子が呼び掛けている相手がただ者でないことを悟る。
「いいけど、後で城を抜け出すとき、手助けしてくれるか?」
と何やら取引をする声がした。
(え、まさか…。)
ハヨンにはその声がいやと言うほど聞き覚えのあるものだった。
(ううん、そんなはずないだってあなたは…。)
ハヨンはその人物が近づいてくる足音が聞こえる度に緊張を高まらせていった。
リョンヤン王子がハヨンのいる後ろを振り返って微笑んだ。
「そうですね、精一杯お守りさせていただきます。」
リョンヤン王子は小さく頷いて再び歩き出す。護衛も従者も、主の斜め後ろを歩いていく。横に立つものは彼らに劣らない力を持つものだけ。それは権力だったり財力だったりと様々だ。
(これはもし、リョンヤン王子と私がいくら打ち解けても縮まらない距離だ。でも女官の子達はそこに並びたいんだ…。)
何の目的かはわからないが、リョンヤン王子がいつか大事な人ができるなら、それはできるだけ心の優しい人がいい、とハヨンは考えた。
(美しい悪女もいるって言うし…。)
近隣の国で、美女を溺愛した故に身を滅ぼした王が何人もいることを思い出す。
(愛とかよくわからないな…。)
母チャンヒや師匠のヨウを大事に思う気持ちとはまた違うのだろう。ハヨンにはさっぱりわからないが、知りたい訳でもなかった。
(いつかあの人に恩を返せたら、私はそれで十分だ。)
ハヨンは腰に下げている刀の鞘をそっと撫でる。例え遠い未来でも、ハヨンには一歩ずつ近づいている実感があるので、なんとも心穏やかなものだった。
「すみません、書庫はここです。」
リョンヤンは鍵を開けて入っていく。ハヨンは中に何も怪しい人物はいないか確認した後、戸口に戻り、そこで見張りをする。
「持っていきたい図書がたくさんあるので少し時間がかかると思います。」
リョンヤン王子が少し離れたところから、声のを大きくして話す。
「わかりました。いくらでも待ちますので、気兼ねなくお探しなさってください。」
ハヨンは初めてのまともな警護に少し胸を踊らせた。
「お待たせしました」
半刻程経って、リョンヤン王子が戸に向かって歩いてきたとき、ハヨンは呆気に取られた。
「お、王子?その書物の量では歩くのは大変ではないですか?」
書物が重い訳ではない。どれも巻物なので、軽いのだが、丸めた巻物を潰さずにすべてを抱えて持っていくことに少々無理があると思うのだ。
「それはそうですが、これを全部小分けにして運んだら、私の執務の時間が無くなってしまいます。」
リョンヤン王子は卓上に置いてある大量の巻物をため息をつきながら眺めた。
「手伝いたいのですが私はリョンヤン王子を護衛する身です。何かで手が塞がるととっさの時に間に合いません。」
うーん、とリョンヤン王子が思案していると、入り口を誰かが稲妻のように素早く横切った。人並みではない速さなのでハヨンは思わず身構える。
しかしリョンヤン王子は臆せずに書庫を飛び出して、
「リョンヘ!急いでるところ悪いんだけど、手伝ってはくれないか!」
と大きな声で呼び掛けた。
(いつもの話し方と違う…!)
新鮮に感じながらも、ハヨンはリョンヤン王子が呼び掛けている相手がただ者でないことを悟る。
「いいけど、後で城を抜け出すとき、手助けしてくれるか?」
と何やら取引をする声がした。
(え、まさか…。)
ハヨンにはその声がいやと言うほど聞き覚えのあるものだった。
(ううん、そんなはずないだってあなたは…。)
ハヨンはその人物が近づいてくる足音が聞こえる度に緊張を高まらせていった。
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