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城を離れて向かうのは
新たな任務
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「おはようございます、リョンヤン様。失礼してもよいですか?」
「構いませんよ」
朝礼が終わって、すぐさまリョンヤンの執務室に向かったハヨンは失礼します、といって部屋に入る。するとなぜかその場にはリョンヘもおり、ハヨンはたじろいだ。
リョンヘも目を瞠っていたが、すぐさま冷静な表情に戻る。
(王子の時のリョンヘ様はどうも冷静すぎて…失礼だけど、私としては面白くない。)
ハヨンには何だかそっけなくされているように感じるのだ。なぜかこちらの姿でももう少し仲良くなりたいという気持ちが以前からもたげてくるのだが、城の人に怪しまれるので我慢してきた。
(それに、公私もわきまえないとね。)
そう言い聞かせても、やはり面白くないのはなぜだろうか。
「二人とも揃ったのでお話しますね。私は二人にとても大事な頼みがあるのです。先ほどリョンヘにはジンホ王子との話を伝えたのですが、リョンヘは父上の使者として、ハヨンはその護衛として滓の国に同盟を結びに行ってはくれないでしょうか」
リョンヘに専属の護衛がいないのは有名だ。それでもそれほど追及する者はいなかった。何故なら彼の天賦の才能と言えるほど武術に長けているのと、リョンヘを落ちこぼれと見なして特に気にしていなかったからもあるだろう。
(でも何で私…?特にリョンヤン様の前ではリョンヘ様とろくに言葉を交わしたことも無いのに。)
せめてあのアンビョと言う鬱陶しい貴族を追い払った時ぐらいだ。それは彼も感じたようで、何やら妙な表情をしている。
リョンヤンはそんな二人を見て優しく笑った。
「なぜかと思っているようですが、ちゃんと理由はありますよ。まず一つめは、ジンホ王子があなたのことを気に入っているからです。」
「えっ。私を、ですか」
「はい。よく知った者が使者として訪れたら嬉しいとものですし、滓でも女性が後宮からではなく、役人等として働くことを検討してみたいとおっしゃっていました。あなたが訪問すればジンホ王子が国で提案するときも例として挙げて通りやすくなると思うんです。」
ハヨンはその言葉を聞いて彼の頭の回転の速さに舌を巻く。なるほどハヨンを向かわせれば、ジンホに貸しができると言うわけだ。
「二つ目はリョンヘ、いくらあなたが強くったって訪問先は他国です。何が起こるかわかりませんし、護衛がいないとはどう言うことかと滓の人達に問われてもどうしようも無いでしょう?」
「…。私は自分の身くらい守れる。しかし、確かにそうだ。リョンヤン、気遣いをありがとう。」
リョンヤンはにっこり笑ってハヨンの方へと向き直った。
「というわけなので、構いませんか?」
「はい。リョンヤン様の命とあらば何なりと。リョンヤン様のお顔に泥を塗らぬよう、精一杯使命を果たして参ります。」
正式な任務なので、ハヨンは跪き頭を垂れた。
その後は三人で滓の国での予定などを打合せ、リョンヘは先に退出した。
「ハヨン、実はまだ一つ頼みたい仕事があるのです。」
ハヨンはリョンヤンと共に、滓への道やその道中での休憩所などを打ち合わせていると、そう思い詰めたような声で話しかけられたので、はじかれたように顔をあげた。
「どうか無事でリョンヘと共に帰ってきてください…。」
(なぜあなたはそんな顔をなさっているのですか…)
そのすがるような目と、固く結ばれた口元を見て、ハヨンは何故だか、胸を締め付けられるような、とても切ない気持ちが沸き起こった。
他国の訪問と言えど、敵国に入る訳ではない。なぜそのような一生の別れのような顔をするのだろう。なぜそのような感情が不意に現れたのか。きっとハヨンは本能で何か危険なことが起きつつあるのを自覚していたのだった。
「構いませんよ」
朝礼が終わって、すぐさまリョンヤンの執務室に向かったハヨンは失礼します、といって部屋に入る。するとなぜかその場にはリョンヘもおり、ハヨンはたじろいだ。
リョンヘも目を瞠っていたが、すぐさま冷静な表情に戻る。
(王子の時のリョンヘ様はどうも冷静すぎて…失礼だけど、私としては面白くない。)
ハヨンには何だかそっけなくされているように感じるのだ。なぜかこちらの姿でももう少し仲良くなりたいという気持ちが以前からもたげてくるのだが、城の人に怪しまれるので我慢してきた。
(それに、公私もわきまえないとね。)
そう言い聞かせても、やはり面白くないのはなぜだろうか。
「二人とも揃ったのでお話しますね。私は二人にとても大事な頼みがあるのです。先ほどリョンヘにはジンホ王子との話を伝えたのですが、リョンヘは父上の使者として、ハヨンはその護衛として滓の国に同盟を結びに行ってはくれないでしょうか」
リョンヘに専属の護衛がいないのは有名だ。それでもそれほど追及する者はいなかった。何故なら彼の天賦の才能と言えるほど武術に長けているのと、リョンヘを落ちこぼれと見なして特に気にしていなかったからもあるだろう。
(でも何で私…?特にリョンヤン様の前ではリョンヘ様とろくに言葉を交わしたことも無いのに。)
せめてあのアンビョと言う鬱陶しい貴族を追い払った時ぐらいだ。それは彼も感じたようで、何やら妙な表情をしている。
リョンヤンはそんな二人を見て優しく笑った。
「なぜかと思っているようですが、ちゃんと理由はありますよ。まず一つめは、ジンホ王子があなたのことを気に入っているからです。」
「えっ。私を、ですか」
「はい。よく知った者が使者として訪れたら嬉しいとものですし、滓でも女性が後宮からではなく、役人等として働くことを検討してみたいとおっしゃっていました。あなたが訪問すればジンホ王子が国で提案するときも例として挙げて通りやすくなると思うんです。」
ハヨンはその言葉を聞いて彼の頭の回転の速さに舌を巻く。なるほどハヨンを向かわせれば、ジンホに貸しができると言うわけだ。
「二つ目はリョンヘ、いくらあなたが強くったって訪問先は他国です。何が起こるかわかりませんし、護衛がいないとはどう言うことかと滓の人達に問われてもどうしようも無いでしょう?」
「…。私は自分の身くらい守れる。しかし、確かにそうだ。リョンヤン、気遣いをありがとう。」
リョンヤンはにっこり笑ってハヨンの方へと向き直った。
「というわけなので、構いませんか?」
「はい。リョンヤン様の命とあらば何なりと。リョンヤン様のお顔に泥を塗らぬよう、精一杯使命を果たして参ります。」
正式な任務なので、ハヨンは跪き頭を垂れた。
その後は三人で滓の国での予定などを打合せ、リョンヘは先に退出した。
「ハヨン、実はまだ一つ頼みたい仕事があるのです。」
ハヨンはリョンヤンと共に、滓への道やその道中での休憩所などを打ち合わせていると、そう思い詰めたような声で話しかけられたので、はじかれたように顔をあげた。
「どうか無事でリョンヘと共に帰ってきてください…。」
(なぜあなたはそんな顔をなさっているのですか…)
そのすがるような目と、固く結ばれた口元を見て、ハヨンは何故だか、胸を締め付けられるような、とても切ない気持ちが沸き起こった。
他国の訪問と言えど、敵国に入る訳ではない。なぜそのような一生の別れのような顔をするのだろう。なぜそのような感情が不意に現れたのか。きっとハヨンは本能で何か危険なことが起きつつあるのを自覚していたのだった。
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