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暗中模索
途切れた手がかり
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翌日、セチャンが決めた最初の捜索班は元へと繰り出した。
以前、白虎の行方を追った老婆の情報によると、白虎にも四獣特有の特徴があるらしい。白虎は若いときも白い髪だからだそうだ。それも老いて白くなった髪とは全く異なる。
太陽の光を受けて色が変わり、艶やかなのだそうだ。朝から昼は太陽の黄色い色を薄く帯びる。そして夕日によってより色の濃い蜂蜜色や茜色に染まるのだ。
その美しさから、元では白虎のことを神から祝福を賜ったものなのだと言われていたらしい。
手がかりは白虎が元にいることと、特殊な白髪の持ち主であることのみだったが、幼い頃から白髪だというのは、珍しい。その上、人々から神からの祝福だと言われるほど有名なのであれば、人伝に何とか探っていけると、捜索を任されたもの達は勢い込んでいた。
しかし、三日後に元から帰ってきた捜索班は、捜索に行く前とは打って変わり、意気消沈していた。
「そんなに落ち込むことはない。もとはと言えば、我々の手がかりも細い糸のようなものだった。見つからなかったからと言って、元の住人全員を訪ねたわけではないだろう?おいおい見つかるさ。」
と報告した部下にセチャンはそう慰めた。どうも落ち込み方が激しく、セチャンは少し疑問だった。何を落ち込んでいる、希望を持て、しゃきっとしろと熱く叱咤した方が良かったのだろうか。
「そうなのですが…。実はある証言者が彼は死んだと思う、と言ったのです…。」
そう告げた部下はセチャンやリョンヘを落胆させると思ったからか、緊張した面持ちで口を結んだ。
「死んだと思う、という推定の話になっているが、それはなぜなんだ?」
リョンヘが慰めるように肩を手で軽く叩きながら、優しい穏やかな声で話しかけた。
セチャンは部下が驚いたように、息を呑んだことに気づく。どうもこの王子は、表向き真面目で堅い所がある。そのため入隊して数年の兵士ではリョンヘが失敗に対して厳しい人だと勘違いしていることも多い。
「…証言者は若い女性だったのですが、彼女がまだ三つの頃に、白虎は元でも西の端へと引っ越したのだそうです。そして彼が亡くなったと言う噂を、その数年後に耳にしたと。」
この燐の国では、戸籍や税の問題、手続きの煩わしさから、先祖代々定住する者の方が圧倒的に多い。それ故、証言者の女性もその土地を離れたことがなく、噂の真偽もわからないのだろう。
「西の端か…。今日は元でもまだまだ関所付近の東側を探したからな…。少し遠出になるが、東側に向かった方がいいかもしれないな。」
リョンヘの独り言ともとれる呟きを聴き、セチャンの脳内は明日の予定の変更のために目まぐるしく動き出す。
「では数日かけて2班で東側に行きましょう。ただ、これもまだまだ確証がとれませんので王子には留守をお願いすることになりますが…」
セチャンはしばらくして思いきってそう提案した。この城の警備を行うには人員が手薄になるとかなり痛い。本当は一班のみでの探索にしたいのだ。しかし、四獣を探索することも重要で、みな手一杯である。
(せめてもう少し兵士がいてくれたらなぁ…)
愚痴など言っても仕方がないのでこの言葉は彼の中にしまわれたままである。
それに今はリョンヘの右腕のような立ち位置にいるものの、本当は彼は戦を得意とし、城の警備や護衛、捜索などは学術書でかじった程度だった。だから、己の判断が本当に正しいのかどうか、些か不安でもあるのだ。
(せめてヘウォン様がいてくださったら…)
安否すらわからない、この国で最強の男を思い出さずにはいられない。彼は強い武人であることはもちろんのこと、彼の強く明るい性格は、兵士たちを勇気付けるだろう。彼には人々の心を掴む力があった。
(だめだ、他力本願では続かない。何とかしなければ。)
セチャンは己を奮い立たせるのだった。
以前、白虎の行方を追った老婆の情報によると、白虎にも四獣特有の特徴があるらしい。白虎は若いときも白い髪だからだそうだ。それも老いて白くなった髪とは全く異なる。
太陽の光を受けて色が変わり、艶やかなのだそうだ。朝から昼は太陽の黄色い色を薄く帯びる。そして夕日によってより色の濃い蜂蜜色や茜色に染まるのだ。
その美しさから、元では白虎のことを神から祝福を賜ったものなのだと言われていたらしい。
手がかりは白虎が元にいることと、特殊な白髪の持ち主であることのみだったが、幼い頃から白髪だというのは、珍しい。その上、人々から神からの祝福だと言われるほど有名なのであれば、人伝に何とか探っていけると、捜索を任されたもの達は勢い込んでいた。
しかし、三日後に元から帰ってきた捜索班は、捜索に行く前とは打って変わり、意気消沈していた。
「そんなに落ち込むことはない。もとはと言えば、我々の手がかりも細い糸のようなものだった。見つからなかったからと言って、元の住人全員を訪ねたわけではないだろう?おいおい見つかるさ。」
と報告した部下にセチャンはそう慰めた。どうも落ち込み方が激しく、セチャンは少し疑問だった。何を落ち込んでいる、希望を持て、しゃきっとしろと熱く叱咤した方が良かったのだろうか。
「そうなのですが…。実はある証言者が彼は死んだと思う、と言ったのです…。」
そう告げた部下はセチャンやリョンヘを落胆させると思ったからか、緊張した面持ちで口を結んだ。
「死んだと思う、という推定の話になっているが、それはなぜなんだ?」
リョンヘが慰めるように肩を手で軽く叩きながら、優しい穏やかな声で話しかけた。
セチャンは部下が驚いたように、息を呑んだことに気づく。どうもこの王子は、表向き真面目で堅い所がある。そのため入隊して数年の兵士ではリョンヘが失敗に対して厳しい人だと勘違いしていることも多い。
「…証言者は若い女性だったのですが、彼女がまだ三つの頃に、白虎は元でも西の端へと引っ越したのだそうです。そして彼が亡くなったと言う噂を、その数年後に耳にしたと。」
この燐の国では、戸籍や税の問題、手続きの煩わしさから、先祖代々定住する者の方が圧倒的に多い。それ故、証言者の女性もその土地を離れたことがなく、噂の真偽もわからないのだろう。
「西の端か…。今日は元でもまだまだ関所付近の東側を探したからな…。少し遠出になるが、東側に向かった方がいいかもしれないな。」
リョンヘの独り言ともとれる呟きを聴き、セチャンの脳内は明日の予定の変更のために目まぐるしく動き出す。
「では数日かけて2班で東側に行きましょう。ただ、これもまだまだ確証がとれませんので王子には留守をお願いすることになりますが…」
セチャンはしばらくして思いきってそう提案した。この城の警備を行うには人員が手薄になるとかなり痛い。本当は一班のみでの探索にしたいのだ。しかし、四獣を探索することも重要で、みな手一杯である。
(せめてもう少し兵士がいてくれたらなぁ…)
愚痴など言っても仕方がないのでこの言葉は彼の中にしまわれたままである。
それに今はリョンヘの右腕のような立ち位置にいるものの、本当は彼は戦を得意とし、城の警備や護衛、捜索などは学術書でかじった程度だった。だから、己の判断が本当に正しいのかどうか、些か不安でもあるのだ。
(せめてヘウォン様がいてくださったら…)
安否すらわからない、この国で最強の男を思い出さずにはいられない。彼は強い武人であることはもちろんのこと、彼の強く明るい性格は、兵士たちを勇気付けるだろう。彼には人々の心を掴む力があった。
(だめだ、他力本願では続かない。何とかしなければ。)
セチャンは己を奮い立たせるのだった。
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