オカルト耐性Sランクの私に、ビビりな男子がついてくる件について

結城 雅

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第1章「出会いと最初のオカルト事件」

第1話《オカルト好きとビビり男子、最悪の出会い》

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放課後の教室。

 夕焼けが窓から差し込み、机と椅子の影を長く伸ばしている。部活に向かう生徒たちの声が廊下に響いていたが、次第に人数が減り、教室内は静かになりつつあった。

 平和な放課後。

 そう、普通ならば——

「ねぇ拓海、知ってる? この学校の旧校舎には"映してはいけない鏡"があるんだって」

 クラスメイトの篠崎彩華が、ワクワクした様子で俺の机に身を乗り出してきた。

 ……やめろ。そのワードは俺の心を蝕むには十分すぎる。

「いやいやいやいや! それ、絶対ダメなやつだろ!!」

「え、なんで? そんな怖がること?」

「いや、普通に怖いから! なんでそんなキラキラした目してんの!?」

「そりゃあねぇ、だってロマンじゃん?」

 いやいやいや、待て待て待て。オカルトにロマンとかあるわけないだろ。

「そもそも俺は、そういう話には一切関わりたくないんだけど?」

「うん、知ってるよ。でも、だからこそ誘ってるんじゃん!」

「どんな理論だよ!?」

 俺、相沢拓海は生まれつきホラーがダメだ。

 いや、ホラーどころかオカルト全般がダメだ。むしろ存在そのものを否定したい派だ。幽霊? いない。呪い? 科学で説明できる。この世のすべてのオカルト現象は、合理的な理由で片付けられるのだ。

 そんな俺とは真逆の存在が、目の前の篠崎彩華だ。

 こいつはクラスでも有名なオカルトガチ勢で、「幽霊? いたら超アツくない?」「心霊スポット? むしろ住みたい!」とか、常人には理解できない発言を平然と繰り返す、根っからの怪奇現象マニア。

 つまり、俺とは決して交わることのない人種である。

「いや、悪いけど俺は遠慮しとくから。そういうのは興味ある人同士でやってくれよ」

「えー、でもさ、男の子なら女の子を守るもんでしょ?」

「なにその唐突なジェンダーロール!? そもそも俺が守る必要なくない!?」

「まあ、拓海が怖いって言うなら無理には誘わないけど……」

「おお、それでいいそれでいい!」

「……でもなー、"旧校舎の鏡に触れた人が消えた"とか、そういう話って真相が気にならない?」

「待て待て待て! そんな情報、最初に出せよ!!!」

「え、言ってなかったっけ?」

「言ってねぇよ!! なんでそんな大事な話を後回しにするんだよ!?」

 そもそも"映してはいけない鏡"とか、そんなネーミングセンスが怖すぎるだろ。

 触ったら消える? いやいや、そんなの都市伝説に決まってる。でも、仮に本当だったらどうするんだよ。触った瞬間、"スッ"ってこの世から消えたら……

 ……いやいや、考えるな俺!!

「まあ、どうせ作り話でしょ?」と、俺はなんとか平静を保とうとする。

「そう思うなら、一緒に確かめに行こうよ」

「いや、思うだけで十分だから! 体験する必要ないから!!」

「えー、ここで拓海をビビらせるの、結構楽しみだったのになぁ」

「楽しむなよ!? 俺を娯楽みたいに扱うな!!」

「だって絶対面白いじゃん!」

「俺はつまらなすぎて涙が出そうです!!!」

「うーん……」

 彩華は何やら考え込むと、ニヤリと笑った。

「じゃあさ、こうしよう。もし行ってみて、何もなかったら拓海の勝ち。で、何かあったら私の勝ち。勝負しよ!」

「俺、そんな勝負した覚えないんだけど!?」

「いいじゃん、賭けようよ!」

「何を!? てか、何が俺の得なの!? これ、俺にメリットないよな!?」

「いやいや、人生ってのはそういうもんでしょ?」

「お前の人生、ハードモードすぎない!?」

「さ、行くよ!」

「ちょっと待てええええ!!!」

 ……こうして俺は、理不尽の塊のようなオカルト好き女子に引きずられ、最悪の夜を迎えることになった。
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