オカルト耐性Sランクの私に、ビビりな男子がついてくる件について

結城 雅

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第1章「出会いと最初のオカルト事件」

第5話《"かえせ"の正体》

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俺の平穏な日常は、昨日で終わったらしい。

 いや、正確に言えば、あの女に出会った時点で終わっていたのかもしれない。

「さて、何を返せばいいのか調べようか!」

「調べるな!! もうやめようぜ!!」

「えー、せっかく"本物の怪異"なんだから、ここで終わらせるのはもったいなくない?」

「何そのオカルトマニア特有の発想!? 俺は一秒でも早く終わらせたいんですけど!!」

 俺、相沢拓海は、今まさに"映してはいけない鏡"の前で、オカルト大好き少女こと篠崎彩華に巻き込まれながら、完全に命の危機を感じていた。

 だって、おかしいだろ!?

 昨日、勝手に割れたはずの鏡が、何事もなかったかのように元通りになっていたんだぞ!?

 しかも、割れた破片だけはそのまま残っている。
 この状況、普通に考えて人知を超えてる。

 そして、昨日から何度も聞こえる 「かえせ」 という声——。

 つまり、俺たちは今、"何か"が取り戻したがっているモノの真っただ中にいるわけで——。

「なあ、頼むから帰ろう?」

「だから、何を返せばいいか突き止めれば解決するんじゃん?」

「その発想がすでにヤバいってことに気づいてくれ!!」

「ほら、破片拾ってみようよ」

「やめろおおおお!!!」

 彩華は躊躇なく鏡の破片を拾い上げた。
 相変わらずの肝の据わりっぷりだ。

 ……いや、もはや肝が据わってるとかいうレベルじゃない。
 オカルトに対する"好奇心"が常人のそれとはかけ離れすぎてるんだ。

「うーん、特に異常はないね」

「いや、それで済ませるなよ!? こういうのって、触った瞬間に呪われたりするんじゃないの!?」

「だったらもう呪われてるんじゃない?」

「冗談でもそういうこと言うなあああ!!!」

 ガンッ!!

 と、そんな俺の絶叫もむなしく——

 彩華が、割れた鏡の破片を元の鏡に叩きつけた。

「……」

「……」

「……何してんの?」

「いや、くっつくかなって思って」

「接着剤じゃねぇんだよ!?!?」

 俺は本気で頭を抱えた。

 ……こいつ、"本当に"やるから怖いんだよな。

「でもさ、"返せ"って言われてるなら、やっぱり鏡の破片を返せばいいんじゃない?」

「そんな単純な話か!?」

「うーん……じゃあ、ここに置いて帰る?」

「え、帰っていいの?」

「もちろん! 目的は"何を返せばいいのか"を調べることだから、実験してみる価値はあるでしょ?」

「お前の発想、ホラー映画の主人公みたいになってるぞ!?」

 俺はもうダメだ。心がついていけない。

 でも、ここで反論してもどうせ彩華には通じない。
 だったら、さっさと言う通りにして、この場から離れた方が命の安全につながるのでは?

 ……俺、オカルトと向き合うより、この女と向き合う方が怖いかもしれない。

 そして、その日の夜——。

 俺は、悪夢を見た。

 真っ暗な部屋。
 周囲は何も見えず、ただ冷たい空気が肌にまとわりつく。

 ——いや、違う。

 ここは、旧校舎の廊下だ。

 目の前には、昨日の"映してはいけない鏡"がある。
 ヒビが入り、埃をかぶった、あの不気味な鏡。

 しかし、そこに映るのは——俺じゃない。

 鏡の奥に、何かがいる。

 ジワリ、ジワリ、と影が近づいてくる。
 黒くて、ぼやけた輪郭。
 顔は見えない。けれど、確かに"何か"がこちらを覗き込んでいる。

 そして——

 「……かえせ……」

「っ……!!」

 俺はハッと目を覚ました。

 息が荒い。額には冷や汗が浮かび、心臓はバクバクと早鐘を打っている。

 夢……?

 いや、違う。

 "本物"だった。

「……これ、もしかして終わってない?」

 俺はようやく気づいた。

 俺たちは、何も解決していない。
 昨日の鏡が元に戻っていた時点で、"かえせ"の正体は分かっていなかったんだ。

 ……つまり。

「俺、もう完全に巻き込まれてるじゃん……!!」

 思わず布団をかぶり、震えながら呟いた。

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