オカルト耐性Sランクの私に、ビビりな男子がついてくる件について

結城 雅

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第2章「七不思議と消えたクラスメイト」

第15話《鏡の奥の世界》

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 俺は、またしても絶望のどん底に叩き落とされていた。

 鏡の怪異は、人を消す。
 だが、それだけではない。
 関わった者は"時間の流れすら狂う"。

 オカ研の先輩、久瀬悠斗くぜゆうとは3年前に"映してはいけない鏡"に引き込まれかけた。
 その影響で、彼は時間の流れがズレてしまい、3年間も中学3年生のままだった。
 学校の記録すら改変され、誰も疑問を抱かない。

 つまり——鏡の怪異は、記憶だけでなく"存在"そのものを操作するということだ。



「……じゃあ、俺たちはどうすればいいんですか?」

 俺は、ため息混じりに先輩へ問いかけた。

「クラスメイトが消えたのは間違いない。でも、誰が消えたのかすら分からない。
 それをどうやって確かめればいいんです?」

 久瀬先輩は腕を組み、静かに言った。

「……まずは、"鏡の奥"を知ることだな」

「鏡の奥?」

「ああ。僕は引き込まれそうになった時、"向こう側"を少しだけ見た。
 そこには……僕たちの世界こちらがわとは違う"もうひとつの世界"があった」

「……」

 俺は息を呑んだ。

「おそらく、消えたクラスメイトは"そっち側"にいる」

「……マジかよ……」

 背筋がゾワリとする。

 つまり、鏡の中には"もうひとつの世界"がある。
 そして、怪異に巻き込まれた人間は、そこに囚われている。

「それを確かめるためには……もう一度、鏡の前に立つしかない」

「……いや、それは違うだろ!!」

 俺は、即座にツッコんだ。

「普通は"危ないから関わらない"って選択肢が出るはずだろ!? なんで"じゃあもう一回行こう"ってなるんだよ!!」

「だって、知りたいじゃん」

 隣で彩華が、相変わらずワクワクした顔で言う。

「オカルト好きの血が騒ぐんだよね~!」

「騒ぐな!! せめて静まれ!!」

「でもさ、拓海も気になってるでしょ?」

「気にしたくないのに気になっちまうんだよ!!!」

 くそ……なぜ俺は、こんな女と行動を共にしているんだ……。



 そして俺たちは、もう一度、鏡の前に立つことになった。



 場所は、旧校舎の倉庫。
 そこには、"映してはいけない鏡"がひっそりと置かれている。

 相変わらず、映る姿が微妙にズレている。

「……」

「さて、どうする?」

 彩華が、懐中電灯を片手に鏡を覗き込む。

「久瀬先輩が言ってた"向こう側の世界"ってやつ……どうすれば見えるの?」

 久瀬先輩は、鏡の前に立ち、静かに呟いた。

「……"自分の名前を呼ばれた時"、僕は一瞬だけ、向こうの世界が見えたんだ」

「じゃあ、名前を呼ばれれば見える?」

「それは分からない。だが、"向こうからの呼びかけ"があれば、確実に何かが起こるはずだ」

「……向こうから?」

 俺は、イヤな予感しかしなかった。

 そして、その予感は、次の瞬間に的中した。



「……た……す……け……て……」

「!!」

 鏡の奥から、かすかに声が聞こえた。

 歪んだ、くぐもったような声。
 でも、それは確かに"人の声"だった。

「……聞こえたな」

「……ああ」

 俺たちは、じっと鏡を見つめた。

 次の瞬間——鏡の中の"俺"が、勝手に動いた。

「っ……!!」

 今までとは違う。
 "ズレている"のではなく——まるで、俺とは別の"何か"が、俺の動きを真似しているかのようだった。

「……」

「これは……」

「……来るぞ」

 久瀬先輩が、警戒するように低く呟く。

「……っ!」

 鏡の奥の"俺"が、ゆっくりと口を開いた。

「……かえせ……」

 その瞬間——

——バチィィィン!!!

 鏡が、一瞬だけ青白く光った。

 まるで、"扉が開いた"ように。

「やば……っ!」

 俺は本能的に後ずさる。

 すると——

「……!!」

 彩華が、鏡の奥に引きずり込まれそうになった。

「おい!! 彩華!!」

 俺は慌てて手を伸ばし、彼女の腕を掴む。

「わっ!? ちょ、マジで持ってかれる!!」

「お前が言うなぁぁぁ!!!」

 久瀬先輩もすかさず駆け寄り、俺たちを引っ張る。

 ——だが、その瞬間、俺の視界が"反転"した。

世界が、裏返るような感覚。



「……」

 気づくと、俺は、鏡の中にいた。

「……え?」

 目の前には、見覚えのある旧校舎。
 だけど、すべての色彩が"モノクロ"になっている。

「……やっちまったか」

 俺は、乾いた笑いを浮かべた。

 間違いない。
 俺は… 俺は今——

"鏡の奥の世界"にいる。
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