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第3章《新たな怪異》
第42話《失われた日の記憶》
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悠真の姿が、完全に消えた。
後に残された俺と彩華は、呆然と廊下に立ち尽くすことしかできなかった。
「悠真……」
彩華が消えた空間に手を伸ばす。その指先は、何もない虚空を掴んだ。
ほんの数秒前まで確かにそこにいたのに、今はもう影すらない。
「……悠真は、三年前の記憶そのものって、言ってたよな」
俺の呟きに、彩華は頷いた。
「ええ。あの言葉が本当なら、神谷くんはここから出られないってことになるけど……」
「そんなこと、認められないよ」
「でも、さっきの神谷くんの話……」
「彩華は、三年前のこと、何も思い出せないのか?」
「それが……」
彩華はわずかに視線を逸らし、小さく唇を噛んだ。
「私ね、思い出そうとすると頭が痛くなるの。まるで誰かに『思い出すな』って言われているみたいに」
「俺もだ。鏡の前での記憶だけじゃなくて、そもそも三年前のこと自体、曖昧なんだ……」
俺たちは互いの顔を見合わせる。
久瀬先輩は、俺たちの話を黙って聞いていたが、ふと口を開いた。
「二人とも、ちょっと待ってくれ」
「どうしたんですか?」
「……君たち、さっき悠真が言ったことをよく考えたほうがいい」
久瀬先輩は真剣な顔つきで続ける。
「『狭間』にいる人間は、記憶が曖昧になる。その中で、『自分』を維持できなければ取り込まれる」
「でも、どうすれば自分の記憶を取り戻せるんですか?」
「方法は分からない。だが、もし記憶を取り戻せれば、この世界から脱出できるかもしれない」
「……思い出すって、どうやって?」
俺の問いに、先輩は軽く眉をひそめた。
「おそらく、記憶が失われた原因——つまり、『狭間』のどこかに、君たちが忘れた記憶の断片が残されているはずだ」
「それを探せってことですね?」
彩華が鋭い視線を向ける。先輩は頷いた。
「その通りだ。でも、注意しろ。記憶が書き換えられている可能性もあるからな」
「書き換えられている?」
「そうだ。本来の記憶とは異なる記憶を、俺たちが正しいと思い込んでいるかもしれない」
俺は自分の胸に手を当ててみる。どこまでが正しい記憶で、どこからが『作られた記憶』なのか、今となっては分からない。
「……とにかく、探るしかないってことか」
「そういうことだ。まずは、自分たちの過去を確かめていくしかない」
彩華が小さく息を吐いた。
「結局、また振り出しね」
彩華の呟きは疲れたように聞こえたが、その瞳にはいつもの好奇心が宿りつつあった。
「でも、考えてみたらさ」
「ん?」
「これでまた謎が深まったってことじゃない? 正直、私としてはちょっとワクワクしてきたけど」
彩華の強気な笑みに、俺はため息をついた。
「お前、ほんとに懲りないな……」
「え? だって、ここで引き下がるわけにはいかないでしょ?」
「まあ、そりゃそうだけど……」
呆れながらも、彩華の強気な言葉に救われた気がした。
——そうだ、今は立ち止まっている場合じゃない。
俺たちは前に進まなくちゃいけないんだ。
「それじゃ、次はどこへ向かうんだ?」
俺の問いに、久瀬先輩はゆっくりと口を開いた。
「次に調べるべき場所は、図書室だ」
「図書室?」
「ああ。『七不思議』の一つ、『書き換わる本』の噂があるだろう? あの怪異が『狭間』の記憶の歪みと関係している可能性が高い」
「なるほど……」
「図書室には、俺たちが失った記憶のヒントがあるかもしれないってことね」
彩華が腕組みをしながら頷いた。
「そうだ。図書室のあの本が書き換えられている理由を解明できれば、俺たちの記憶も取り戻せるかもしれない」
「じゃあ、急ぎましょう」
彩華はそう言うと、迷うことなく図書室の方向へ歩き出した。
「おい、待てよ!」
慌てて俺が追いかけると、彩華は小さく笑った。
「拓海は早く自分の名前を思い出さないとね」
「それ、お前もだろ……」
俺たちの背中に、久瀬先輩が静かに続いた。
図書室——俺たちが『狭間』の謎に近づく場所。
そこに待っているのは、真実か、それとも新たな悪夢なのか。
不安を抱えながらも、俺たちは歩を進めるしかなかった。
後に残された俺と彩華は、呆然と廊下に立ち尽くすことしかできなかった。
「悠真……」
彩華が消えた空間に手を伸ばす。その指先は、何もない虚空を掴んだ。
ほんの数秒前まで確かにそこにいたのに、今はもう影すらない。
「……悠真は、三年前の記憶そのものって、言ってたよな」
俺の呟きに、彩華は頷いた。
「ええ。あの言葉が本当なら、神谷くんはここから出られないってことになるけど……」
「そんなこと、認められないよ」
「でも、さっきの神谷くんの話……」
「彩華は、三年前のこと、何も思い出せないのか?」
「それが……」
彩華はわずかに視線を逸らし、小さく唇を噛んだ。
「私ね、思い出そうとすると頭が痛くなるの。まるで誰かに『思い出すな』って言われているみたいに」
「俺もだ。鏡の前での記憶だけじゃなくて、そもそも三年前のこと自体、曖昧なんだ……」
俺たちは互いの顔を見合わせる。
久瀬先輩は、俺たちの話を黙って聞いていたが、ふと口を開いた。
「二人とも、ちょっと待ってくれ」
「どうしたんですか?」
「……君たち、さっき悠真が言ったことをよく考えたほうがいい」
久瀬先輩は真剣な顔つきで続ける。
「『狭間』にいる人間は、記憶が曖昧になる。その中で、『自分』を維持できなければ取り込まれる」
「でも、どうすれば自分の記憶を取り戻せるんですか?」
「方法は分からない。だが、もし記憶を取り戻せれば、この世界から脱出できるかもしれない」
「……思い出すって、どうやって?」
俺の問いに、先輩は軽く眉をひそめた。
「おそらく、記憶が失われた原因——つまり、『狭間』のどこかに、君たちが忘れた記憶の断片が残されているはずだ」
「それを探せってことですね?」
彩華が鋭い視線を向ける。先輩は頷いた。
「その通りだ。でも、注意しろ。記憶が書き換えられている可能性もあるからな」
「書き換えられている?」
「そうだ。本来の記憶とは異なる記憶を、俺たちが正しいと思い込んでいるかもしれない」
俺は自分の胸に手を当ててみる。どこまでが正しい記憶で、どこからが『作られた記憶』なのか、今となっては分からない。
「……とにかく、探るしかないってことか」
「そういうことだ。まずは、自分たちの過去を確かめていくしかない」
彩華が小さく息を吐いた。
「結局、また振り出しね」
彩華の呟きは疲れたように聞こえたが、その瞳にはいつもの好奇心が宿りつつあった。
「でも、考えてみたらさ」
「ん?」
「これでまた謎が深まったってことじゃない? 正直、私としてはちょっとワクワクしてきたけど」
彩華の強気な笑みに、俺はため息をついた。
「お前、ほんとに懲りないな……」
「え? だって、ここで引き下がるわけにはいかないでしょ?」
「まあ、そりゃそうだけど……」
呆れながらも、彩華の強気な言葉に救われた気がした。
——そうだ、今は立ち止まっている場合じゃない。
俺たちは前に進まなくちゃいけないんだ。
「それじゃ、次はどこへ向かうんだ?」
俺の問いに、久瀬先輩はゆっくりと口を開いた。
「次に調べるべき場所は、図書室だ」
「図書室?」
「ああ。『七不思議』の一つ、『書き換わる本』の噂があるだろう? あの怪異が『狭間』の記憶の歪みと関係している可能性が高い」
「なるほど……」
「図書室には、俺たちが失った記憶のヒントがあるかもしれないってことね」
彩華が腕組みをしながら頷いた。
「そうだ。図書室のあの本が書き換えられている理由を解明できれば、俺たちの記憶も取り戻せるかもしれない」
「じゃあ、急ぎましょう」
彩華はそう言うと、迷うことなく図書室の方向へ歩き出した。
「おい、待てよ!」
慌てて俺が追いかけると、彩華は小さく笑った。
「拓海は早く自分の名前を思い出さないとね」
「それ、お前もだろ……」
俺たちの背中に、久瀬先輩が静かに続いた。
図書室——俺たちが『狭間』の謎に近づく場所。
そこに待っているのは、真実か、それとも新たな悪夢なのか。
不安を抱えながらも、俺たちは歩を進めるしかなかった。
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