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2.旅館みすき

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やっと、日が昇り人間に戻った。
人間姿だと狐の時よりも森を歩くのは大変だ。靴もないし。私は、足を汚してとぼとぼと早朝の森を歩いていた。
「あ、女将さん!」
料理人見習いのさくらが現れた。
「足が汚れてますよ!言ってくださればお迎えに上がるのに。」
桜は、私に言った。桜は、むちゃくちゃイケメン男子だ。
「別に。いいわよ。」
「ほんと、女将さんは。」
そう言って桜は私を持ち上げた。えっえっ?これってお姫様抱っこされてない??うわっ、顔近っ。イケメン過ぎない??
「桜!冗談はやめて。」 
「冗談じゃないですよ。それに、こうしないと汚れてしまいますよ。」
うー!
こうして、私は桜にお姫様抱っこをされながら旅館に戻った。すると、ちょうど雪に鉢合わせてしまった。
「女将さん!大丈夫でしたか?桜!早く女将さんを降ろしてくんないか?」
私は、桜に降ろされた。
「大丈夫よ。ありがと雪。」
「桜!どう言うこと?僕に、ちゃんと説明して!」
「どう言うことってこういう事だよ。」
「はぁ?女将さんもなんか言ってくださいよ!」
「2人とも!桜は仕込み、雪は朝の支度があるでしょ!さっさと持ち場について!」
「「すみません...」」
桜は、厨房に戻っていた。
「それと、雪。別に私が桜と何かあるわけじゃないから。」
「そうですか...」
「あと、今日ご予約の部屋は何室?」
「10室です。」
休日だというのに少ない。この旅館は7階建てのホテルみたいな旅館で。普通、休日は六十室あるのだが大体半分は入る。昨日みたいに近くでコンサートがあったりすると満室なのだが。
「きゃっ!」
雪の悲鳴が聞こえた。
後ろを振り返ると白いネズミがひっそりとたたずんでいた。
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