上 下
3 / 4

3.ネズミ

しおりを挟む
『おい。お前、狐か?』
ネズミから尋ねられた。私は、動物の言葉が分かる能力を持っている。
「そうだけど何か?」
「女将さん、どうしたんですか?独り言なんか言って。」
雪が不思議そうに私に言った。雪は、ネズミの言葉が分からないようだ(((((そりゃそうだけどw
「あ、なんでもないわ。ちょっと用ができたから先に支度しといてもらえる?」
「分かりました。その...ネズミは?」
雪は怯えながら言った。
「あぁ。森に逃がしておくわ。」
「すみません。僕がやるべきなのに...」
「いいのよ。」
そうして、雪は支度に戻った。

『邪魔者は、去ったか。で、お前日向ひゅうがのもんだろ?』
日向。その名前は、かすかに母から聞いたことがある。確か、狐の一族の名前だ。
「日向?」
『匂いだ。日向のもんからは独特な匂いがすんだよ。』
「ふーん。悪いけど、私はその日向とやらではないわよ。私は普通の旅館の女将です。」
『普通の女将が狐なのか?』
「世の中普通な人なんていないでしょ?」
『確かに。で、お前の親の名前はなんだ?』
「なんで、会ったばかりのネズミに言わなきゃならないのよ。」
『それもそうかも。なぁ、もしかして、お前の父親って源(げん)か?』
源。会ったことはないが、母から聞いた。源はとても良い狐だと。そして、私の父親だとも母は言っていた。
「さぁ。知らないわ。」
『ふーん。お前、源の娘なのか。懐かしい名前だな。まさか、母親は雫(しずく)さんか?』
「そうだけど。」
『こりゃ懐かしい名前だ。』
「あんた、なんでそんなに知ってんの?」
『まぁ、50年も生きてればそりゃー知りたくなくても知っちまうことだってあるだろ。』
「はぁ?あんた、50歳なの!?ネズミの寿命超えすぎてない?」
『俺も、お前と似たようなもんだからな。』
「似たようなもん?」
『人でもなくネズミでもない。お前もそうだろ?』
『俺も、ネズミと人のハーフなんだ。』
口がポカンと開いてしまった。今のままで「ネズミと人のハーフなんだ」なんて言われたことないし。どんな反応すればいいのかよって感じw。
『まぁ、いいや。俺は腹が減ったんだ。なんか、食い物ねぇか?』
「ネズミの餌なんて持ってないわよ。」
『人間の食べ物だよ。』
「それなら、たくさんあるわ。うちの料理はほんとに美味しいの!」
『ふーん。お手並み拝見だな。そういえば、俺の名前を言ってなかったな。俺の名前は福助ふくすけだ。』
「私はルカ。狐崎ルカ。」

こうして、このネズミとのハーフと言う福助とやらはここに住むことになった。ほんとに、面倒くさいのがやってきたもんだ。
しおりを挟む

処理中です...