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同居の御曹司は甘やかすのがお好き

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「待たせてごめんね」

そう言って私の座る席に近づく。後ろの席に社員がいると気づくと「お疲れ様」と真顔であいさつをし、私に向けて笑顔を見せる。

「行こうか」

呆気にとられる社員の目の前で私の手を取り店の外まで連れられた。
車が停まっている駐車場まで歩きながら「優磨くんってモテるでしょ?」と言うと、「は?」と優磨くんは振り返って不思議そうな顔をする。

「会社の人たち、私が行ったら驚いてたもん。きっと不釣り合いだと思われてるよ……」

「俺が波瑠を選んだのに不釣り合いも何もないでしょ。まだそんなこと気にしてるの?」

「だって……」

優磨くんも私が来たことが嫌そうだったじゃない……。

「何か傷つけたのならごめん……でも波瑠のせいじゃない。原因は俺」

「え?」

「俺が社長の子供だから。俺の言動一つ一つが今後の会社、社員の関係を左右するんだ。だからみんな俺を気遣って、煽てて、陰で嫌みを言う」

後ろから盗み見る優磨くんは寂しそうな顔をしている。

「だから波瑠の前ではあんまり会社のことを言わない。言いたくないんだ」

「私に愚痴ってすっきりするなら聞くよ?」

「いや、いいんだ。嫌な気持ちを波瑠の前まで待ち帰りたくない。波瑠のそばだけが俺の息抜きできる場所だから」

「そっか……」

そう思ってくれるのなら、私は優磨くんが落ち着けるように支えなければ。

「今夜食事に行けなくてごめんね。なるべく残業はしたくないんだけど……」

「大丈夫。もういつでも行けるから。本日無事に退職しました」

できるだけ笑顔を向ける。
4年も勤めていたのに円満な退社とは言えなかった。最後は辛いことばかりだった。でも優磨くんがいたから頑張れた。

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