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同居の御曹司は甘やかすのがお好き
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「はい」
微笑むと優磨くんは私にキスをする。ガラス一枚挟んだ向こうに他の社員がいるのに優磨くんの大胆さに驚く。
「下まで送る」
体を離すと部屋のドアを開けた。
社員が見つめる中フロアを抜けてエレベーターに乗る。扉が閉まるまで私はフロアの社員さんに頭を下げた。
「緊張した?」
優磨くんの質問に正直に頷く。みんなが私たちを監視しているようだった。
「ごめん。もう少しだから待ってて」
優磨くんに見送られて会社の前のカフェに入る。
カフェラテを飲んで待っていると優磨くんの会社から出てきた数人の女性社員がカフェに入ってくる。そうして私の席の後ろのテーブルに座った。
「ねえ、さっき城藤部長宛に女が来たらしいよ」
「マジ? 彼女かな?」
「そうっぽいって営業の子が言ってた」
城藤部長って……優磨くんのこと?
私の話題だと理解した瞬間再び緊張する。
「えー残念! 部長彼女いるの? 羨ましいんだけど」
「もし結婚になったら玉の輿じゃん」
「どんな手使って近づいたんだろ?」
「やっぱどっかの社長令嬢でしょ。御曹司の相手には令嬢じゃなきゃ社長が納得しないよ」
「でも意外と地味系だって言ってたよ」
「えー……そうなの? 大人しそうなのがタイプなのかな?」
「今まで気合入れてアピールしてきたのに無駄だったわけね」
優磨くんはやっぱりモテるのだと知ってグラスを持つ手が小刻みに震える。
落ち着いて、私が話題の人物だってあの人たちにはバレてないんだから。
「波瑠」
声をかけられ顔を上げると店の入り口で優磨くんが手を振っている。
「え……」
後ろの席の社員が全員息を呑んだのがわかった。
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