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2鬼畜主人公にさせないために
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学校が終わった光生は今、自宅の隣にある豪邸の前に立っていた。闇川冬斗の住んでいる自宅である。闇川冬斗が闇堕ちしたら、この豪邸は連れ込んだ美しい女性を支配し陵辱や調教する屋敷になるのだ。その毒牙の餌食になるのは、光生の母と姉もだ。絶対に阻止しなければと光生が思っていると、屋敷のドアが開き、少年の冬斗が出てきた。
「あっ、冬斗くん」
「お隣のお兄さんですよね。確かミツオお兄さん」
「う、うんそうだよ」
「どうしたんですか?今、母は外出中でして」
光生より年下なのにしっかりした対応に、光生はいいとこの坊ちゃんは違うなと思いつつここに来た理由を話した。
「あのー、冬斗くんに用があって」
「僕に……ですか?」
「うん、ウチでゲームやらない?対戦ゲームの相手が欲しいんだ」
前世の記憶を思い出す前の光生は、どこにでもいるゲームが大好きな小学生。前世のサラリーマンの時もゲームが好きだったので、これを活用することにした。
「うん、“大来襲クリティカルブラザーズ”を一緒に遊ばない?」
「僕、ゲームやったことないんです」
「気にしないよ。遊び方は教えるから」
「あの、宿題が終わってなくて……」
「宿題が終わった後でいいから!あっそうだ、なら俺んちで一緒に勉強する?」
光生は自分でも必死だなと思うくらい、冬斗を誘おうとしているが、これも冬斗を官能小説の鬼畜主人公にしないためだ。
「わかりました。あの、宿題、持って行くから準備してきます」
冬斗はそう言って家に戻って行った。光生は心の中でガッツポーズを取る。これで関係のとっかかりができたので、これから仲良くして関係を良くし冬斗を健全な精神に導くんだと光生は強く思った。
何回か冬斗を遊びに誘ううちに、光生の家で冬斗は食事を一緒に取ることも多くなり、最初は無表情だった冬斗も、光生や光生の家族にも打ち解け笑顔が出るようになった。
「冬斗くん、ゲームうまくなったね。もう俺より上手い」
「みつおくんが教えてくれたから」
二人はテーブルに置いた液晶画面を見ながら、コントローラーを操作して遊んでいた。冬斗はゲームも勉強も覚えが早く、なんでもできるタイプだった。さすが主人公だなと光生は思いながら、これで少しは鬼畜主人公ルートから外れただろうかと期待する。
「冬斗くん、今晩はうちに泊まっていかない?まだゲーム一緒にやりたいし」
「光生、あなた宿題はやったの?」
いつの間にか帰宅していた光生の母が、スーパーの袋を持って立っていた。
「あ、母さん、おかえり。もう宿題は片付けたから大丈夫だよ」
「おばさん、お邪魔してます。光生くんと一緒に宿題を片付けたので本当です」
「冬斗くんがそう言うなら本当ね」
「か、母さん、俺より冬斗くんを信じるんだ……」
「もう、あなたの日頃の行いが悪いからよ。今日は二人の大好きなカレーだからたくさん作るわね」
そう言って母は台所に向かった。その後、光生の姉が学校から帰ってきてともに食事をし、光生と冬斗は風呂に一緒に入った。光生は冬斗と湯船に浸かっていた。
「出るまでに100数えようか。100だと長いかな?50のほうがいい?」
「光生くん……」
「ん?何?」
「光生くんって、お母さんみたいだね。僕に構ってくれるし優しいから……」
「あはは、そこはお兄ちゃんって言ってほしいな」
まだ小学生なのにお母さん扱いされ、光生は思わず笑ってしまう。でもこれは信頼関係が築けているということでもある。これは完全に冬斗の鬼畜主人公ルートから外れていると考えていいのではないか、と光生は考えた。
「俺の部屋に戻ったらまたゲームしよっか」
「う、うん、する」
風呂を出て光生は部屋に戻ると、ゲームをやる前に睡魔に負け布団ですぐ寝てしまった。部屋に並べられた2つの布団の片方は冬斗に用意された布団だったが、パジャマ姿の冬斗はぐっすり寝ている光生の布団に入り、光生の身体に寄り添った。
「光生くん……」
「……」
「光生くん、あったかい……」
冬斗は寝落ちするまでずっと光生の寝顔を見つめていた。
――――
一年後、冬斗の家の引っ越しが急に決まった。なんでも、外国にいる父親と一緒に暮らすとのことだ。原作の小説では冬斗とその義母はずっと日本で暮らしていたが、家族一緒に暮らすのは悪いことではないし、冬斗が真っ当な人間になるならそれでいいと光生は思った。しかし光生は、せっかく仲良くなった弟のような存在の冬斗と分かれるのは寂しくもあった。
光生は冬斗の家の前まで見送りにやってきた。光生の母も来ているが、冬斗の義母と話していた。光生を見るなり、冬斗は泣きそうな顔になっていた。
「うっ……光生くん……僕……」
「冬斗くん、泣かないで。また会えるよ。それに手紙も出すよ。はがきのほうが良いかな?」
「……どっちでも嬉しい……いつか光生くんとまた会えるかな……」
「うん、会えるよ。ほら泣かないで、キレイな顔が台無しだよ」
泣きじゃくる冬斗を、光生はハンカチで涙を拭いてやる
「ぼ、僕、光生くんのことがすき……うぅ……」
「うん、俺も好きだよ。だから泣かないで」
冬斗は号泣して光生に抱きついてきた。なかなか光生から離れず、冬斗の義母も困っていた。
「冬斗さんは、光生くんのことが大好きだからね。ごめんなさいね」
「い、いえ、大丈夫です」
やっと車に乗った冬斗は、出発してからも窓からずっと光生に手を振っていた。光生も車が見えなくなるまで、手を振った。
(お別れは寂しいけど、これで冬斗くんは官能小説の鬼畜主人公からルートを外れたかな。家の母さんと姉ちゃんは無事だ!よかった!)
光生は別れを寂しいと思いつつも、冬斗の毒牙から母と姉を守れたことが心底嬉しかった。
「光生、冬斗くんの家族は外国で暮らすから、日本にはもう戻ってこないかもしれないって冬斗くんのお母さんが言ってたわ。寂しいけど、元気出しなさい」
母が光生を励ますように言ったが、もう日本に戻ってこないのだから、鬼畜主人公ルートは完全になくなったと光生は安堵する。これからは、安心して勉強していい大学入ってこれからの人生を前世の経験を活かして生きていこうと、光生は決意した。
「あっ、冬斗くん」
「お隣のお兄さんですよね。確かミツオお兄さん」
「う、うんそうだよ」
「どうしたんですか?今、母は外出中でして」
光生より年下なのにしっかりした対応に、光生はいいとこの坊ちゃんは違うなと思いつつここに来た理由を話した。
「あのー、冬斗くんに用があって」
「僕に……ですか?」
「うん、ウチでゲームやらない?対戦ゲームの相手が欲しいんだ」
前世の記憶を思い出す前の光生は、どこにでもいるゲームが大好きな小学生。前世のサラリーマンの時もゲームが好きだったので、これを活用することにした。
「うん、“大来襲クリティカルブラザーズ”を一緒に遊ばない?」
「僕、ゲームやったことないんです」
「気にしないよ。遊び方は教えるから」
「あの、宿題が終わってなくて……」
「宿題が終わった後でいいから!あっそうだ、なら俺んちで一緒に勉強する?」
光生は自分でも必死だなと思うくらい、冬斗を誘おうとしているが、これも冬斗を官能小説の鬼畜主人公にしないためだ。
「わかりました。あの、宿題、持って行くから準備してきます」
冬斗はそう言って家に戻って行った。光生は心の中でガッツポーズを取る。これで関係のとっかかりができたので、これから仲良くして関係を良くし冬斗を健全な精神に導くんだと光生は強く思った。
何回か冬斗を遊びに誘ううちに、光生の家で冬斗は食事を一緒に取ることも多くなり、最初は無表情だった冬斗も、光生や光生の家族にも打ち解け笑顔が出るようになった。
「冬斗くん、ゲームうまくなったね。もう俺より上手い」
「みつおくんが教えてくれたから」
二人はテーブルに置いた液晶画面を見ながら、コントローラーを操作して遊んでいた。冬斗はゲームも勉強も覚えが早く、なんでもできるタイプだった。さすが主人公だなと光生は思いながら、これで少しは鬼畜主人公ルートから外れただろうかと期待する。
「冬斗くん、今晩はうちに泊まっていかない?まだゲーム一緒にやりたいし」
「光生、あなた宿題はやったの?」
いつの間にか帰宅していた光生の母が、スーパーの袋を持って立っていた。
「あ、母さん、おかえり。もう宿題は片付けたから大丈夫だよ」
「おばさん、お邪魔してます。光生くんと一緒に宿題を片付けたので本当です」
「冬斗くんがそう言うなら本当ね」
「か、母さん、俺より冬斗くんを信じるんだ……」
「もう、あなたの日頃の行いが悪いからよ。今日は二人の大好きなカレーだからたくさん作るわね」
そう言って母は台所に向かった。その後、光生の姉が学校から帰ってきてともに食事をし、光生と冬斗は風呂に一緒に入った。光生は冬斗と湯船に浸かっていた。
「出るまでに100数えようか。100だと長いかな?50のほうがいい?」
「光生くん……」
「ん?何?」
「光生くんって、お母さんみたいだね。僕に構ってくれるし優しいから……」
「あはは、そこはお兄ちゃんって言ってほしいな」
まだ小学生なのにお母さん扱いされ、光生は思わず笑ってしまう。でもこれは信頼関係が築けているということでもある。これは完全に冬斗の鬼畜主人公ルートから外れていると考えていいのではないか、と光生は考えた。
「俺の部屋に戻ったらまたゲームしよっか」
「う、うん、する」
風呂を出て光生は部屋に戻ると、ゲームをやる前に睡魔に負け布団ですぐ寝てしまった。部屋に並べられた2つの布団の片方は冬斗に用意された布団だったが、パジャマ姿の冬斗はぐっすり寝ている光生の布団に入り、光生の身体に寄り添った。
「光生くん……」
「……」
「光生くん、あったかい……」
冬斗は寝落ちするまでずっと光生の寝顔を見つめていた。
――――
一年後、冬斗の家の引っ越しが急に決まった。なんでも、外国にいる父親と一緒に暮らすとのことだ。原作の小説では冬斗とその義母はずっと日本で暮らしていたが、家族一緒に暮らすのは悪いことではないし、冬斗が真っ当な人間になるならそれでいいと光生は思った。しかし光生は、せっかく仲良くなった弟のような存在の冬斗と分かれるのは寂しくもあった。
光生は冬斗の家の前まで見送りにやってきた。光生の母も来ているが、冬斗の義母と話していた。光生を見るなり、冬斗は泣きそうな顔になっていた。
「うっ……光生くん……僕……」
「冬斗くん、泣かないで。また会えるよ。それに手紙も出すよ。はがきのほうが良いかな?」
「……どっちでも嬉しい……いつか光生くんとまた会えるかな……」
「うん、会えるよ。ほら泣かないで、キレイな顔が台無しだよ」
泣きじゃくる冬斗を、光生はハンカチで涙を拭いてやる
「ぼ、僕、光生くんのことがすき……うぅ……」
「うん、俺も好きだよ。だから泣かないで」
冬斗は号泣して光生に抱きついてきた。なかなか光生から離れず、冬斗の義母も困っていた。
「冬斗さんは、光生くんのことが大好きだからね。ごめんなさいね」
「い、いえ、大丈夫です」
やっと車に乗った冬斗は、出発してからも窓からずっと光生に手を振っていた。光生も車が見えなくなるまで、手を振った。
(お別れは寂しいけど、これで冬斗くんは官能小説の鬼畜主人公からルートを外れたかな。家の母さんと姉ちゃんは無事だ!よかった!)
光生は別れを寂しいと思いつつも、冬斗の毒牙から母と姉を守れたことが心底嬉しかった。
「光生、冬斗くんの家族は外国で暮らすから、日本にはもう戻ってこないかもしれないって冬斗くんのお母さんが言ってたわ。寂しいけど、元気出しなさい」
母が光生を励ますように言ったが、もう日本に戻ってこないのだから、鬼畜主人公ルートは完全になくなったと光生は安堵する。これからは、安心して勉強していい大学入ってこれからの人生を前世の経験を活かして生きていこうと、光生は決意した。
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