騎士の鎧を着た社畜職人、最高の製品を作ったら王国の運命を変えることになった

前田 真

文字の大きさ
8 / 33
第1章:騎士の鎧と職人の魂の出会い

第8話:名誉の盾。王都からの特注と三人の職人魂

しおりを挟む
 辺境駐屯地への大規模納品から、数ヶ月の月日が流れていた。

 シグマは、工房に留まり続けていた。

 騎士である彼が辺境の鍛冶屋にいるのは不自然だったが、記憶が戻らない彼には行く当てもなく、またバルカンから熱心に引き止められたためだ。

「貴殿は工房の恩人だ。記憶が戻るまで、ここで働いて欲しい」

 シグマ(タカシ)にとっても、職人として最高の製品を生み出せるこの環境は居心地が良かった。

 その数ヶ月の間に、辺境の鍛冶屋が、驚くべき品質の武具を大量に納品したという噂は、騎士団の連絡網を通じて瞬く間に広がり、ついに王都の騎士団本部にまで届いた。


 ある日の午後。工房に見慣れぬ重厚な鎧を纏った王都からの使者が現れた。

 バルカンは慌てて対応した。

「よ、ようこそ。王都からの方が、なぜこのような辺境の工房に……」

 使者は恭しく頭を下げた。

「バルカン殿の工房の評判、王都でも聞くに及びました。特に、納品された剣の品質の均一性は、常軌を逸していると」

 使者は、一枚の依頼書を差し出した。

 それは、王都の騎士団長直筆の特注依頼だった。

「我々は、近々行われる王族への献上を目的として、最高の技術の粋を集めた盾を制作していただきたい。依頼主は王都直属の騎士団です」

 バルカンとルナは息をのんだ。

 王都からの特注、それも王族への献上品。

 辺境の小さな工房が、ついに王国の中心に認められた瞬間だった。

 シグマは、その依頼書をじっと見つめた。

(最高の製品。それは、すべての職人の喜びだ。この依頼は、究極の挑戦となるだろう……)

 バルカンは毅然として使者に応対した。

「王都の騎士団からのご依頼、光栄です。責任をもって制作させていただきます」

 シグマは、バルカンの後ろから一歩進み出た。

「王族に相応しい、究極の品質保証を備えた製品を納品いたします」

 依頼が承諾されると、使者は深々と一礼し、工房を後にした。

 使者の姿が見えなくなると、バルカンは感極まった表情でシグマを見た。

「シグマ殿。この最高の仕事、わしとルナも全力で取り組む。もちろん、貴殿の知恵と技術が不可欠だ。三人の職人の魂を込めて、この盾を打ち上げよう!」

「もちろんです、バルカン殿」

 シグマは力強く頷いた。

「最高の盾には、最高の職人チームが必要です。ルナ嬢にはルミナ金属の加工と熱処理を。バルカン殿には、基礎となる鍛鉄を。そして私は、構造力学に基づく設計と品質管理を担当します」

 こうして、シグマ(タカシ)の職人としての使命を懸けた、王族献上用の『名誉の盾』の制作が、バルカン、ルナ、シグマの三人の職人の魂を込めて、始まったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす
ファンタジー
 女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――? ――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語―― 『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』 五大国から成る異世界の王と たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー ――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。 この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。 ――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして…… その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない―― 出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは? 最後に待つのは幸せか、残酷な運命か―― そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

処理中です...