騎士の鎧を着た社畜職人、最高の製品を作ったら王国の運命を変えることになった

第1章：騎士の鎧と職人の魂の出会い

第9話：究極の品質保証。青い光と職人の至上の誇り

　王都からの特注依頼を受けた三人の職人は、最高の集中力で制作に取り掛かった。

　シグマが持ち込んだのは、完璧な構造力学に基づいた設計図だ。

　盾はただ分厚いだけでなく、衝撃を最も効率よく分散する湾曲と、応力集中を避けるための接合部が必要だった。

「ルナ嬢には、この設計図通りの曲面と、ルミナ金属の正確な層を形成してほしい」

　シグマは指示した。

　バルカンは、盾の骨格となる基礎鍛鉄を、長年の経験と勘の全てを込めて打ち上げた。

　シグマの精密な設計要求に応えるには、バルカンの熟練した腕が不可欠だった。

　彼の鍛え上げた鉄は、二人の若き職人の技術の揺るぎない土台となった。

　ルナは、シグマの設計の意図を完璧に理解し、バルカンの最高の鉄に、代々伝わる魔法金属「ルミナ」を融合させていく。

　ルナはシグマの指導で得た安定した熱処理の仕組みと、父親譲りの職人の勘を融合させ、その特性を引き出した。

　三人の職人の技術は、師であるバルカンの経験を核とし、一点のムダもなく互いに高め合った。


　そして、最終の焼き入れ。

　三人が火床から取り出した盾に冷水をかけた瞬間、盾はまばゆい青い光を放った。

「ああ……青い光だ！」

　ルナは息をのんだ。

　ルミナ金属がその最大の潜在能力を発揮した際にのみ放つ、至高の品質の証である。

　シグマは、その青い光を静かに見つめた。

　三人の技術が完璧に合致した結果を、彼は職人として深く胸に刻み込んだ。

　三人の魂が込められた盾が完成した。


　予定の納品日。

　王都の使者が再び工房に到着した。

　使者は、盾の品質を確認し、代金をバルカンに手渡し、正式に納品は完了した。

　使者は改めてバルカンに応対した。

「バルカン殿。納品されたこの盾の献上式典が、王都で催されます。つきましては、製作者の一人であり工房の代表であるバルカン殿には、ぜひご列席いただきたいのです」

　バルカンは感極まって頷いた。

「王都へ！ もちろんだ！ いつ出発すればよろしいか？」

　使者は答えた。

「準備もありますゆえ、明日の朝、改めて馬車で参ります」

　シグマとルナは、その栄誉を喜び、バルカンが式典参加のため、王都へ行くための旅の準備を、すぐさま整えるのだった。