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第3章:職人の知恵と、騎士団内部の裏切り者の排除
第22話:謁見の間へ。論理の謁見
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納品管理局を出たルナとシグマは、王城の上官が率いる厳重な衛兵隊に囲まれ、王城本棟へと進んでいた。
彼らの周囲は、上官の命令通り、最短経路で、外部との接触を最小限に抑える形で隔離されていた。
衛兵たちの表情は固く、彼らが運んでいる情報の重大さを物語っていた。
ルナは、重厚な石畳の中庭を歩きながら、周囲の威厳ある建物を緊張した面持ちで見上げていた。
辺境の鍛冶師の娘である彼女にとって、王城の中枢へ入ること自体が、想像を絶する出来事だった。
シグマはルナの少し前を歩き、終始沈黙していたが、その視線は鋭く、周囲の警備体制や、彼らを遠巻きに見る他の騎士たちの動きを静かに観察していた。
「シグマ……」
ルナは小さな声で呼びかけた。
シグマは足を止めずに答えた。
「騒動を起こす心配はない。衛兵たちは我々を守っている。彼らの目的は、情報が王族の手に届くことを確実にするためだ」
「でも、どうしてあなたは、こんなに冷静なの? まるで、この城のことを全て知っているみたいに……」
シグマは一瞬だけ足を止め、振り返らずに言った。
「私の中に、騎士として培われた判断力が残っているらしい。この状況で文書を届けるには、城の秩序を利用するのが、最も合理的な道だと本能が告げている」
ルナは、彼の冷徹なまでの判断力に驚いた。
記憶を失っても、彼の体には騎士としての確かな技術と知性が刻まれている。
今はただ、その使命のために感情を押し殺しているだけなのだろう。
やがて、一行は王城本棟の巨大な扉の前に到達した。
扉は重厚な彫刻で飾られ、威圧感を放っていた。
衛兵たちが厳かに扉を開けると、その奥には、絢爛豪華な広間が続いていた。
上官は足を止め、ルナとシグマに言った。
「これより先は、謁見の間だ。国王陛下と王族の方々が、すでに君たちの報告を待っておられる。君たちの言葉の真偽、そして文書の内容が、王都の未来を決める。心して臨め」
シグマは静かに頷き、ルナの背中を押した。
ルナは、抱きしめた盾の重みを感じながら、シグマと共に、謁見の間へと一歩踏み出した。
ルナとシグマが謁見の間へと足を踏み入れると、その広大さと豪華さに息を呑んだ。
高天井には壮麗なシャンデリアが輝き、壁面には王国の歴史を描いた巨大なタペストリーがかけられている。
広間の奥、一段高くなった玉座には、国王陛下が厳粛な面持ちで座っていた。
その隣には、控えめだが毅然とした表情の王妃と、聡明そうな眼差しを持つ王太子が控えていた。
彼らの周囲には、数名の宮廷の重鎮たちが沈黙を守りながら並んでいる。
ルナとシグマは、上官の指示に従い、玉座の前で深く頭を下げた。
ルナは献上品の盾を胸に抱いたまま、緊張で口の中が乾くのを感じた。
国王が、威厳のある声で口を開いた。
「顔を上げよ。辺境の鍛冶師の娘よ、そしてその護衛の者よ。納品の手続きの最中、我々への直接の謁見を求めたと聞く。通常の儀礼を無視した無礼は承知しているな」
ルナは立ち上がり、抱えた盾を玉座に向けて掲げた。
「国王陛下。辺境の鍛冶師バルカンの娘、ルナと申します。無礼千万であることは承知しております。しかし、この盾を護衛して王都へ来た過程で、王国の根幹を揺るがす重大な文書を入手してしまいました」
国王の表情がわずかに険しくなった。
「文書だと?詳しく述べよ」
シグマが一歩前に出た。
彼の静音鎧は、豪華な謁見の間では異質に見えたが、その立ち姿には一点の揺るぎもない騎士の風格があった。
「失礼いたします、陛下。納品管理局の上官には文書の存在をお伝えしましたが、その文書は、王都転覆を目的とするクーデター計画の存在を明確に示しています」
玉座の脇に控えていた重鎮の一人が、深刻な声で進言した。
「陛下、お待ちください。そのような出自不明の文書に基づき、王国の柱である騎士団に疑念を抱くことは危険です。まず、文書の信頼性を徹底的に確認すべきです」
王妃が静かに手を上げた。その動作一つで、広間は再び静寂に包まれた。
国王は重鎮を制し、シグマを見据えた。
「衛兵の報告では、貴殿はその文書の信頼性を、献上品の情報漏洩に求めているとか。聞かせよ。その疑念を打ち破る論理的な根拠があるのか」
シグマは、まさにこの瞬間のために言葉を用意していた。
彼は、ルナが抱える盾を一瞥してから、毅然として答えた。
「はい、陛下。納品のため献上品を運んでいた騎士団の馬車が盗賊に狙われました。この盾の納品予定と運送ルートは、王都の正規の機関、すなわち騎士団が極秘に決定したものであり、辺境の鍛冶師の工房側には一切知らされていませんでした」
広間に微かなざわめきが起こった。
「にもかかわらず、盗賊団は騎士団の馬車を正確に待ち伏せていた。そして、我々が盗賊団から取り戻した文書には、王城内部の情報が詳細に記されていた。これら二つの事実は、王都の正規の機関が極秘に決定した情報が、クーデター計画を持つ組織に漏洩していること、すなわち騎士団内部に裏切り者がいることを、論理的に証明しています」
シグマの言葉には、感情的な訴えは一切なく、ただ事実と事実を繋ぎ合わせる冷徹な合理性だけがあった。
国王は深く頷き、隣の王太子に視線を送った。
王太子の顔には、すでに強い疑念の色が浮かび上がっていた。
「その文書を、見せよ」
国王が命じた。
彼らの周囲は、上官の命令通り、最短経路で、外部との接触を最小限に抑える形で隔離されていた。
衛兵たちの表情は固く、彼らが運んでいる情報の重大さを物語っていた。
ルナは、重厚な石畳の中庭を歩きながら、周囲の威厳ある建物を緊張した面持ちで見上げていた。
辺境の鍛冶師の娘である彼女にとって、王城の中枢へ入ること自体が、想像を絶する出来事だった。
シグマはルナの少し前を歩き、終始沈黙していたが、その視線は鋭く、周囲の警備体制や、彼らを遠巻きに見る他の騎士たちの動きを静かに観察していた。
「シグマ……」
ルナは小さな声で呼びかけた。
シグマは足を止めずに答えた。
「騒動を起こす心配はない。衛兵たちは我々を守っている。彼らの目的は、情報が王族の手に届くことを確実にするためだ」
「でも、どうしてあなたは、こんなに冷静なの? まるで、この城のことを全て知っているみたいに……」
シグマは一瞬だけ足を止め、振り返らずに言った。
「私の中に、騎士として培われた判断力が残っているらしい。この状況で文書を届けるには、城の秩序を利用するのが、最も合理的な道だと本能が告げている」
ルナは、彼の冷徹なまでの判断力に驚いた。
記憶を失っても、彼の体には騎士としての確かな技術と知性が刻まれている。
今はただ、その使命のために感情を押し殺しているだけなのだろう。
やがて、一行は王城本棟の巨大な扉の前に到達した。
扉は重厚な彫刻で飾られ、威圧感を放っていた。
衛兵たちが厳かに扉を開けると、その奥には、絢爛豪華な広間が続いていた。
上官は足を止め、ルナとシグマに言った。
「これより先は、謁見の間だ。国王陛下と王族の方々が、すでに君たちの報告を待っておられる。君たちの言葉の真偽、そして文書の内容が、王都の未来を決める。心して臨め」
シグマは静かに頷き、ルナの背中を押した。
ルナは、抱きしめた盾の重みを感じながら、シグマと共に、謁見の間へと一歩踏み出した。
ルナとシグマが謁見の間へと足を踏み入れると、その広大さと豪華さに息を呑んだ。
高天井には壮麗なシャンデリアが輝き、壁面には王国の歴史を描いた巨大なタペストリーがかけられている。
広間の奥、一段高くなった玉座には、国王陛下が厳粛な面持ちで座っていた。
その隣には、控えめだが毅然とした表情の王妃と、聡明そうな眼差しを持つ王太子が控えていた。
彼らの周囲には、数名の宮廷の重鎮たちが沈黙を守りながら並んでいる。
ルナとシグマは、上官の指示に従い、玉座の前で深く頭を下げた。
ルナは献上品の盾を胸に抱いたまま、緊張で口の中が乾くのを感じた。
国王が、威厳のある声で口を開いた。
「顔を上げよ。辺境の鍛冶師の娘よ、そしてその護衛の者よ。納品の手続きの最中、我々への直接の謁見を求めたと聞く。通常の儀礼を無視した無礼は承知しているな」
ルナは立ち上がり、抱えた盾を玉座に向けて掲げた。
「国王陛下。辺境の鍛冶師バルカンの娘、ルナと申します。無礼千万であることは承知しております。しかし、この盾を護衛して王都へ来た過程で、王国の根幹を揺るがす重大な文書を入手してしまいました」
国王の表情がわずかに険しくなった。
「文書だと?詳しく述べよ」
シグマが一歩前に出た。
彼の静音鎧は、豪華な謁見の間では異質に見えたが、その立ち姿には一点の揺るぎもない騎士の風格があった。
「失礼いたします、陛下。納品管理局の上官には文書の存在をお伝えしましたが、その文書は、王都転覆を目的とするクーデター計画の存在を明確に示しています」
玉座の脇に控えていた重鎮の一人が、深刻な声で進言した。
「陛下、お待ちください。そのような出自不明の文書に基づき、王国の柱である騎士団に疑念を抱くことは危険です。まず、文書の信頼性を徹底的に確認すべきです」
王妃が静かに手を上げた。その動作一つで、広間は再び静寂に包まれた。
国王は重鎮を制し、シグマを見据えた。
「衛兵の報告では、貴殿はその文書の信頼性を、献上品の情報漏洩に求めているとか。聞かせよ。その疑念を打ち破る論理的な根拠があるのか」
シグマは、まさにこの瞬間のために言葉を用意していた。
彼は、ルナが抱える盾を一瞥してから、毅然として答えた。
「はい、陛下。納品のため献上品を運んでいた騎士団の馬車が盗賊に狙われました。この盾の納品予定と運送ルートは、王都の正規の機関、すなわち騎士団が極秘に決定したものであり、辺境の鍛冶師の工房側には一切知らされていませんでした」
広間に微かなざわめきが起こった。
「にもかかわらず、盗賊団は騎士団の馬車を正確に待ち伏せていた。そして、我々が盗賊団から取り戻した文書には、王城内部の情報が詳細に記されていた。これら二つの事実は、王都の正規の機関が極秘に決定した情報が、クーデター計画を持つ組織に漏洩していること、すなわち騎士団内部に裏切り者がいることを、論理的に証明しています」
シグマの言葉には、感情的な訴えは一切なく、ただ事実と事実を繋ぎ合わせる冷徹な合理性だけがあった。
国王は深く頷き、隣の王太子に視線を送った。
王太子の顔には、すでに強い疑念の色が浮かび上がっていた。
「その文書を、見せよ」
国王が命じた。
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