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第二章_水野冬樹
11.新チームスタート
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そうこう過ごしているうちに一学期が終わり、夏休みになった。
僕たちに夏休みなど関係ない。
練習する為に学校に向かっていると、長嶋先輩からLINEが届いた。
「明日退院するから、そのまま学校に向かう」とのことだ。
三年生にも連絡して、引退式と新チームの発足式が行われることになった。
翌日、全部員が集合した。
約一週間入院していた長嶋先輩は、心なしか少し小さくなった気がしたが、後遺症も無く元気な様子で安心した。
三年生が全員揃うのも一週間振りだ。
そして今日で最後になるのだろう。
四ヶ月に満たない短い時間だったが、濃密な時間だった。
本気で目指した甲子園が、手の届くところまで来ていたのだ。
無名の公立校でも甲子園は夢では無いことが分かったのだ。
しかし、現実的にはダブルエースと四番と守備の要が抜けてしまう。
新チームの人材で、三年生の穴埋めをするのは容易ではないだろう……
その新チームのキャプテンには福井先輩が選ばれた。
順当な人選だが、去年までピッチャーをやっていた福井先輩が次のエースになる。
松村・長嶋両投手の後のエースというだけで、相当なプレッシャーになるところ、キャプテンまで任せてしまって大丈夫なのだろうか?
そうは言っても、二年生で一番しっかりしているのは福井先輩なので、頑張ってもらうしかないのか?
皆で新キャプテンを支えられるように、協力し合って練習して行かなければならないだろう。
引退する三年生が、それぞれ一言挨拶をして解散となった後、長嶋先輩に声を掛けられた。
「おい水野、心配掛けたな。俺が交代しなきゃ勝てたかもしれなかったのに、あの程度の球を避けられなくて悪かったな」
「何言ってるんですか。長嶋さんがあのまま打ってたらゲッツーで九回表で負けてるところでしたよっ!」
「マジかっ! でもそうだったかもしれないし、こればっかりは分からないよな」
「お祖父さんは残念でしたね……」
「あぁ…… 俺がぶっ倒れちまって、驚かせたのがいけなかったかなぁ……
まぁイロイロ考えちゃうよな……
でな、俺なんだけど、大学に行っても野球を続けることにしたよ」
「えぇっ! マジっすか! いや、それは嬉しいです。
このまま辞めちゃぁ勿体ないと思ってたんですよっ!
長嶋さん、センスあるから、まだまだ伸びますよ!
プロを目指しましょうよっ!」
「バカっ、簡単に言うなよっ!
俺のレベルでプロのスカウトが見に来るような野球部には入れねぇよっ。
まぁやるからには本気でやるけどな、野球は大学で終わると思うよ。
祖父ちゃんと約束しちゃったから、何だか辞める訳には行かなくなった。っつ~感じなんだよ」
「でも辞めてしまったら終わりですから、続ける事が大事なんじゃぁ?
もしかしたら急成長する可能性があると思いますよ」
「お前、祖父ちゃんと同じ事言ってるよ。
それで説得されて約束しちゃったんだよ……
今まで野球漬けで受験勉強してなかったから、真面目に勉強しないとな……
しばらく練習は見に来れないけど、秋季大会は頑張れよなっ!」
もう三年生は練習には来ない。
そう思うと急に寂しい気持ちになったが、それぞれの立場で新しい一歩を踏み出したのだ。
僕も立ち止まっている訳には行かない。
新チームで次の歴史を作れるように頑張らなければ!
新チームの課題は山積みだ。
今年になってから登板していない福井先輩が背番号1になった。
今のチームで他に公式戦で投げた経験があるのは土田先輩だけだ。
その試合は二人とも散々な内容だったらしく、それ以来登板していない。
キャッチャーも四番の菅沼先輩が抜けて、公式戦に出場したことが無い高川先輩が指名された。
今までキャッチャーの経験が無いので多くは期待できないが、冷静な判断力があり、副キャプテンに選ばれているので、悪い人選ではない。
セカンドは引き続き僕が守る。
サードは土田先輩が投げる時は福井先輩が守る。
ショートは肩の強さを買われて宮沢が守ることになった。
レフトは長嶋先輩の代走で出場した山田。
センターは山田のライバルの市川。
この二人はお互いに競い合って伸びる気がする。
ファーストとライト、福井先輩が投げる時のサードが流動的だ。
夏休みの練習で適正を見て、秋季大会までにチーム力を上げて行く必要がある。
ベスト8に進出した効果からか?
今年の夏は練習試合の申し込みが多いらしく、実戦経験を積む機会には恵まれた。
福井先輩と土田先輩の投球は安定感があり、練習試合は全勝という素晴らしい結果を残した。
空いていたポジションのレギュラーも決まりつつあり、充実した夏を過ごしていた。
この調子なら秋季大会も期待できる。
春と同じで、地区大会でベスト4になれば県大会に進める。
県大会の決勝まで行ければ無条件、準決勝で負けても、三位決定戦で勝てば北信越大会に進める。
慣例では、北信越大会の決勝に進出した二校が春の選抜に選出される。
まぁそこまで勝ち続ける実力は無いとは思うが、今夏の結果を考えると可能性はゼロでは無い。
戦いながら実力が上がるケースもあるし、最初から諦めていては何も残らない。
やるからには秋季大会も甲子園を目指して勝負したい!
夏の結果から、秋季大会はシード校として出場することになった。
上田増尾と小海台高校の勝者と当たる組み合わせが決定した。
この二チームならば勝ち上がってくるのは上田増尾だろう。
夏の練習試合では、上田増尾には勝っているので初戦は問題無いだろう。
と僕は考えていたのだが……
去年の秋季大会は上田増尾と対戦して負けているらしい。
その前の試合で松村先輩が足を捻挫してしまい、福井先輩が投げたのだが、緊張から四球を連発して大量失点、リリーフした土田先輩も流れを変えられずに大量失点しての敗戦とのことだ。
しかしそれは去年のことで、二年生になり精神的にも成長している二人ならば、そこそこの結果を出してくれるだろう。
多少失点はしても、今年の打線も筋トレ効果でパワーのある打線だ。
打ち勝てるだろう。
と予想していた。
そんな僕の予想を上回る……
と言うか、この場合は下回ると表現するべきなのだろうか?
先発した福井先輩は、今年も緊張から四球を連発して大量失点、リリーフした土田先輩も流れを変えられずに大量失点、投手経験は無いが、肩が強く速球を投げられる宮沢がリリーフして結果を残したが、序盤の失点が大きすぎて、まさかの初戦敗退で秋季大会を終えることになった。
夏の練習試合を全勝したことが両投手にはプレッシャーになっていたのだろうか?
練習試合とは別人のような投球だった。
唯一の収穫が好投した宮沢だろうか?
真面目な性格の福井先輩と土田先輩は去年の敗戦を思い出して自滅した格好となってしまった……
もしかしたら投手向きの性格ではないのかもしれない。
本格的に寒くなる前に、何度か練習試合があったが、二人とも安定した投球を披露している。
しかし堀内監督もその結果をあまり信用していない様子で、宮沢の登板機会が多くなって行った。
宮沢の課題はコントロールだ。
福井先輩や土田先輩と違い、緊張して四球を連発するのではなく、投手経験が無かったので、元々コントロールが悪いのだ。
しかし、どんな場面でも結果を恐れずに堂々と投げる宮沢に、エースの風格のようなものが漂い始めていた。
この頃、長嶋先輩の進学が決まった。
横浜情報工芸大学に推薦入学が決まったそうだ。
何処に住んだら便利なのか相談されたので、僕が住んでいた上茶谷を推薦した。
横浜市営地下鉄の上茶谷駅が、大学の最寄りの湘南林間駅と、横浜ボールパークの最寄りの関内駅の中間にあるのがポイントだ。
長嶋先輩のナックルは大学でも通用すると思うのだが、本人は最速120キロの球では通用するはずがない。
と思っているらしく、セカンドに戻るつもりらしい。
でも野球を続けることになって良かった。
またいつか同じグラウンドに立ちたいと思っている。
根拠は無いが、何故かそんな予感めいたものも感じているところだ。
僕たちに夏休みなど関係ない。
練習する為に学校に向かっていると、長嶋先輩からLINEが届いた。
「明日退院するから、そのまま学校に向かう」とのことだ。
三年生にも連絡して、引退式と新チームの発足式が行われることになった。
翌日、全部員が集合した。
約一週間入院していた長嶋先輩は、心なしか少し小さくなった気がしたが、後遺症も無く元気な様子で安心した。
三年生が全員揃うのも一週間振りだ。
そして今日で最後になるのだろう。
四ヶ月に満たない短い時間だったが、濃密な時間だった。
本気で目指した甲子園が、手の届くところまで来ていたのだ。
無名の公立校でも甲子園は夢では無いことが分かったのだ。
しかし、現実的にはダブルエースと四番と守備の要が抜けてしまう。
新チームの人材で、三年生の穴埋めをするのは容易ではないだろう……
その新チームのキャプテンには福井先輩が選ばれた。
順当な人選だが、去年までピッチャーをやっていた福井先輩が次のエースになる。
松村・長嶋両投手の後のエースというだけで、相当なプレッシャーになるところ、キャプテンまで任せてしまって大丈夫なのだろうか?
そうは言っても、二年生で一番しっかりしているのは福井先輩なので、頑張ってもらうしかないのか?
皆で新キャプテンを支えられるように、協力し合って練習して行かなければならないだろう。
引退する三年生が、それぞれ一言挨拶をして解散となった後、長嶋先輩に声を掛けられた。
「おい水野、心配掛けたな。俺が交代しなきゃ勝てたかもしれなかったのに、あの程度の球を避けられなくて悪かったな」
「何言ってるんですか。長嶋さんがあのまま打ってたらゲッツーで九回表で負けてるところでしたよっ!」
「マジかっ! でもそうだったかもしれないし、こればっかりは分からないよな」
「お祖父さんは残念でしたね……」
「あぁ…… 俺がぶっ倒れちまって、驚かせたのがいけなかったかなぁ……
まぁイロイロ考えちゃうよな……
でな、俺なんだけど、大学に行っても野球を続けることにしたよ」
「えぇっ! マジっすか! いや、それは嬉しいです。
このまま辞めちゃぁ勿体ないと思ってたんですよっ!
長嶋さん、センスあるから、まだまだ伸びますよ!
プロを目指しましょうよっ!」
「バカっ、簡単に言うなよっ!
俺のレベルでプロのスカウトが見に来るような野球部には入れねぇよっ。
まぁやるからには本気でやるけどな、野球は大学で終わると思うよ。
祖父ちゃんと約束しちゃったから、何だか辞める訳には行かなくなった。っつ~感じなんだよ」
「でも辞めてしまったら終わりですから、続ける事が大事なんじゃぁ?
もしかしたら急成長する可能性があると思いますよ」
「お前、祖父ちゃんと同じ事言ってるよ。
それで説得されて約束しちゃったんだよ……
今まで野球漬けで受験勉強してなかったから、真面目に勉強しないとな……
しばらく練習は見に来れないけど、秋季大会は頑張れよなっ!」
もう三年生は練習には来ない。
そう思うと急に寂しい気持ちになったが、それぞれの立場で新しい一歩を踏み出したのだ。
僕も立ち止まっている訳には行かない。
新チームで次の歴史を作れるように頑張らなければ!
新チームの課題は山積みだ。
今年になってから登板していない福井先輩が背番号1になった。
今のチームで他に公式戦で投げた経験があるのは土田先輩だけだ。
その試合は二人とも散々な内容だったらしく、それ以来登板していない。
キャッチャーも四番の菅沼先輩が抜けて、公式戦に出場したことが無い高川先輩が指名された。
今までキャッチャーの経験が無いので多くは期待できないが、冷静な判断力があり、副キャプテンに選ばれているので、悪い人選ではない。
セカンドは引き続き僕が守る。
サードは土田先輩が投げる時は福井先輩が守る。
ショートは肩の強さを買われて宮沢が守ることになった。
レフトは長嶋先輩の代走で出場した山田。
センターは山田のライバルの市川。
この二人はお互いに競い合って伸びる気がする。
ファーストとライト、福井先輩が投げる時のサードが流動的だ。
夏休みの練習で適正を見て、秋季大会までにチーム力を上げて行く必要がある。
ベスト8に進出した効果からか?
今年の夏は練習試合の申し込みが多いらしく、実戦経験を積む機会には恵まれた。
福井先輩と土田先輩の投球は安定感があり、練習試合は全勝という素晴らしい結果を残した。
空いていたポジションのレギュラーも決まりつつあり、充実した夏を過ごしていた。
この調子なら秋季大会も期待できる。
春と同じで、地区大会でベスト4になれば県大会に進める。
県大会の決勝まで行ければ無条件、準決勝で負けても、三位決定戦で勝てば北信越大会に進める。
慣例では、北信越大会の決勝に進出した二校が春の選抜に選出される。
まぁそこまで勝ち続ける実力は無いとは思うが、今夏の結果を考えると可能性はゼロでは無い。
戦いながら実力が上がるケースもあるし、最初から諦めていては何も残らない。
やるからには秋季大会も甲子園を目指して勝負したい!
夏の結果から、秋季大会はシード校として出場することになった。
上田増尾と小海台高校の勝者と当たる組み合わせが決定した。
この二チームならば勝ち上がってくるのは上田増尾だろう。
夏の練習試合では、上田増尾には勝っているので初戦は問題無いだろう。
と僕は考えていたのだが……
去年の秋季大会は上田増尾と対戦して負けているらしい。
その前の試合で松村先輩が足を捻挫してしまい、福井先輩が投げたのだが、緊張から四球を連発して大量失点、リリーフした土田先輩も流れを変えられずに大量失点しての敗戦とのことだ。
しかしそれは去年のことで、二年生になり精神的にも成長している二人ならば、そこそこの結果を出してくれるだろう。
多少失点はしても、今年の打線も筋トレ効果でパワーのある打線だ。
打ち勝てるだろう。
と予想していた。
そんな僕の予想を上回る……
と言うか、この場合は下回ると表現するべきなのだろうか?
先発した福井先輩は、今年も緊張から四球を連発して大量失点、リリーフした土田先輩も流れを変えられずに大量失点、投手経験は無いが、肩が強く速球を投げられる宮沢がリリーフして結果を残したが、序盤の失点が大きすぎて、まさかの初戦敗退で秋季大会を終えることになった。
夏の練習試合を全勝したことが両投手にはプレッシャーになっていたのだろうか?
練習試合とは別人のような投球だった。
唯一の収穫が好投した宮沢だろうか?
真面目な性格の福井先輩と土田先輩は去年の敗戦を思い出して自滅した格好となってしまった……
もしかしたら投手向きの性格ではないのかもしれない。
本格的に寒くなる前に、何度か練習試合があったが、二人とも安定した投球を披露している。
しかし堀内監督もその結果をあまり信用していない様子で、宮沢の登板機会が多くなって行った。
宮沢の課題はコントロールだ。
福井先輩や土田先輩と違い、緊張して四球を連発するのではなく、投手経験が無かったので、元々コントロールが悪いのだ。
しかし、どんな場面でも結果を恐れずに堂々と投げる宮沢に、エースの風格のようなものが漂い始めていた。
この頃、長嶋先輩の進学が決まった。
横浜情報工芸大学に推薦入学が決まったそうだ。
何処に住んだら便利なのか相談されたので、僕が住んでいた上茶谷を推薦した。
横浜市営地下鉄の上茶谷駅が、大学の最寄りの湘南林間駅と、横浜ボールパークの最寄りの関内駅の中間にあるのがポイントだ。
長嶋先輩のナックルは大学でも通用すると思うのだが、本人は最速120キロの球では通用するはずがない。
と思っているらしく、セカンドに戻るつもりらしい。
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