アプリ

まなづるるい

文字の大きさ
4 / 14

夢の中のあの人は誰?

しおりを挟む
夢を見た。白馬の王子様が私を攫いにきてくれる夢。
さらさらとした髪は美しく、甘い香りを纏っている。
上品でいて、顔がいい。
王子様は私を抱き寄せると、頬に触れ、髪を撫でる。
唇が触れてしまいそう。
そう感じた時にはもう触れていた。

「んっ」

思わず漏れる吐息は甘く、王子様の脳に響いたようだ。
くちゅりと舌が捩じ込まれていく。それだけで下半身がじんとした。

「んふっ、は、んんむ」

私ばかりが喘いでいる。
恥ずかしさよりもきもちよさが勝っていた。
口内の濃厚接触をしながら、王子様の手は私の胸を揉んでいる。
既に勃ち上がった突起を指で捏ねくりまわしながら、空いた手は下半身へと流れていく。
布越しに指の腹でなぞられれば、私の身体はびくんと震えた。
舌と舌が離れると寂しくて、自分から強請ってしまう。

「あ、ああっ、ん……っ、もっとぉ……っ」

これは私なのだろうか。もしかして違う人という可能性は。
いつの間にか下着の隙間から指が入り、濡れた割れ目をなぞっている。
まだ指が入ったわけではないのに、もどかしくて堪らなかった。
もっときもちよくなりたい。頭の中はそればかり。

「浅いとこ、好きだよね」
「うん、すきぃ。入口なでなでされるの、きもちいのぉー」

耳まで性感帯になっている。王子様の声を聞いているだけで、私はまた濡れてしまう。

「また濡れてる」
「ふっ……ぁ」
「いっていいよ」
「ああっ、あ、やば、んん、い、いっちゃ、は」

激しく身体が脈を打つ。私は強く、王子様に抱きついていた。

「かわいいね、瑞穂。じょうず」

今、私のこと瑞穂って。
蜜色の瞳が私を優しく見つめている。私の髪を撫でる手は心地良く、身も心も満たされていくのを感じた。
私はその、青い髪に触れながら。




「……ん」

目が覚めた。朝だ。何かとてもいい夢を見ていたような気がする。

「………………」

濡れてる。
何がとは言わないが、濡れてる。
誤解されたくないのでこれだけは言わせてほしい。
おねしょではないと。
私はトイレを済ませると、アプリを起動した。
伊織はまだ寝ているようで、こちらには気付いていない。

「おはよう、伊織」

学校に行くと、瑛麻に会った。今日は珍しくアプリを起動してないんだなと思っていると、ふと瑛麻の手にあるものが気になった。

「おはよう瑛麻。あれ、瑛麻って本とか読むんだ」
「おはよー、瑞穂。ああこれね。なんかタイトルに惹かれて買ってみたんだけどさ、読んでみたら意外と面白くてねえ」
「へえ。いったいどんなはな、し」

そのタイトルを見て、言葉が止まる。
このタイトルを私は知っている。

「瑞穂?」
「……この本、どこで買ったの?」
「駅ビルにある本屋さんで買ったよー。なんだか売れてるみたいだねえ。まだあったから、瑞穂も気になるなら買ってみなよお」

知らなかった。この本は実在してたんだ。
でも、実在する本をモデルにしただけかもしれないし、そうじゃなくてもタイトルが同じなんてことはよくある話だし。流石に内容までは同じじゃないよねえ。

「いったいどんな話なの?」
「うーん。ちょっぴりえっちな恋愛小説?」

まさか、ね。
放課後になると、私は駅ビルの本屋さんに向かった。
それなりに売れているとなれば、恐らくこの辺りにあるはずだ。

「あった」

そうしそうあい。
伊織がいつも読んでいる本。
私はそれを手にとると、ぱらぱらとページを捲ってみた。

「俺と彼女は能面だ。表情に喜怒哀楽が浮かんでこない」
「少女漫画だと片方が能面で片方が感情豊か。そして感情豊かな方に能面が次第に心惹かれていく……というのが王道だろう」
「だが俺達はそうじゃない。どちらも能面なのだから、恋愛に発展する要素がないと言えるだろう」

昨日、レポート用紙に書き殴ったから覚えている。これは間違いなく、伊織が読んでいる本と同じものだ。
これって著作権の侵害なんじゃないの。タイトルだけでなく、内容まで同じなんて。
プロフィール。せめて伊織のプロフィールがわかれば、伊織の趣味は読書で、そうしそうあいがお気に入り。
そんなふうに書かれていれば、きっと誰か気付くはず。
公式サイトがないのはこのためなの?
伊織はいつもこの本を読んでいる。
伊織を選んだ人なら皆、知っている情報だ。
だけど公式サイトはない。この本がいくら売れているとはいえ、普通であれば、この本が実在するなんてわからない。
伊織がこの本を読んでいること。この本が実在すること。どちらが欠けても意味がない。
だけど問題にはなっていない。つまりたまたま気付いた人がいたとしても、伊織が読んでる本じゃん、ラッキーぐらいにしか思わないのだろう。
私は本を買うことにした。
内容が気になったからではない。伊織とお揃いだからではない。断じて否。否である。
本が入った紙袋をさぞ大事に抱えて歩く私は、きっと浮かれているように見えただろう。
その通りである。
私は浮かれていた。なんならスキップしていた。
お揃いなんて、持ちたくても持てないと思っていた。だけどお揃い。お揃いだ!
伊織とお揃い!
ひゃほーい!
私は家に帰るとすぐにアプリを起動した。
伊織に早く伝えたくて仕方がなかったのだ。

「伊織、ただいま!」

伊織はもう起きていた。手にはあの本を持っている。

『ああ、おかえり』
「見て! 伊織が持ってる本と同じの買ってきた!」
『え』
「私もびっくりしたよー。瑛麻がね、伊織と同じの持ってたんだ。この本、結構売れてるみたい」

私は嬉しくてつい、早口になっていた。

『それ、どこにあった』
「駅ビルにある本屋さんだよー。私も少しずつ読んでみるね!」

良かった、もう怒ってないね。
今日はなんだか私ばかりが話していた気がする。だってそれくらい嬉しかったんだ。私が伊織を選ばなかったら、きっとお揃いの物なんて持てなかった。




夢を見た。白馬の王子様が私を攫いにきてくれる夢。
さらさらとした髪は美しく、甘い香りを纏っている。
上品でいて、顔がいい。
王子様は私を抱き寄せると、頬に触れ、髪を撫でる。
唇が触れてしまいそう。
そう感じた時にはもう触れていた。

「んっ」

思わず漏れる吐息は甘く、王子様の脳に響いたようだ。
くちゅりと舌が捩じ込まれていく。それだけで下半身がじんとした。

「んふっ、は、んんむ」

私ばかりが喘いでいる。
恥ずかしさよりもきもちよさが勝っていた。
口内の濃厚接触をしながら、王子様の手は私の胸を揉んでいる。
既に勃ち上がった突起を指で捏ねくりまわしながら、空いた手は下半身へと流れていく。
布越しに指の腹でなぞられれば、私の身体はびくんと震えた。
舌と舌が離れると寂しくて、自分から強請ってしまう。

「あ、ああっ、ん……っ、もっとぉ……っ」

これは私なのだろうか。もしかして違う人という可能性は。
いつの間にか下着の隙間から指が入り、濡れた割れ目をなぞっている。
まだ指が入ったわけではないのに、もどかしくて堪らなかった。
もっときもちよくなりたい。頭の中はそればかり。

「浅いとこ、好きだよね」
「うん、すきぃ。入口なでなでされるの、きもちいのぉー」

耳まで性感帯になっている。王子様の声を聞いているだけで、私はまた濡れてしまう。

「また濡れてる」
「ふっ……ぁ」
「いっていいよ」
「ああっ、あ、やば、んん、い、いっちゃ、は」

激しく身体が脈を打つ。私は強く、王子様に抱きついていた。

「かわいいね、瑞穂。じょうず」

今、私のこと瑞穂って。
蜜色の瞳が私を優しく見つめている。私の髪を撫でる手は心地良く、身も心も満たされていくのを感じた。
私はその、青い髪に触れながら。




「……ん」

目が覚めた。朝だ。何かとてもいい夢を見ていたような気がする。

「………………」

濡れてる。
何がとは言わないが、濡れてる。
誤解されたくないのでこれだけは言わせてほしい。
おねしょではないと。
私はトイレを済ませると、アプリを起動した。
伊織はまだ寝ているようで、こちらには気付いていない。

「おはよう、伊織」

なんだろう。なんだかデジャヴ。私、昨日も濡れていたような。
それに昨日と同じ夢を見ていた気がする。
だけど、二日連続同じ夢なんて見るだろうか。それに、内容は思いだせないくせに、どうして昨日と同じ夢を見ていただなんて思えるのだろう。
学校に行くと、瑛麻に会った。瑛麻のスマホ画面には、樹くんではなく苺くんがいた。

「おはよう瑛麻。苺くんも」
「おはよー、瑞穂」
『おはようございます、瑞穂さん』
「今日は樹くんじゃないんだね」
「樹はねえ、まだ寝てるー」
「へえ、珍しい。遅くまでゲームでもしてたのかな」
「んーん。昨日はねえ、遅くまであたしとえっちしてたー」
「え、えっちって……その、どうやってやってるの?」

苺くんがいる手前、自然とひそひそ声になってしまった。

「そんなのお、お互いがきもちよくなればいいんだよー」

瑛麻、お願いだから空気読んで。苺くんに聞かれちゃう。

「相手の動きに合わせてあたしも指を動かすの。めっちゃ興奮するよー」
「え、瑛麻。声が大きい」
「なんか瑞穂と話してたらまたしたくなってきちゃったあ。ねえ苺お、今日やろうよ」
『いいですよ』

あ、いいんだ。なんか苺くんと瑛麻の関係って変なの。
普通ならさ、他の男とのえっちを思いだして、自分とやろうとかいやじゃない?
私だったらいやだな。
例えば伊織が、瑛麻となんて。考えただけで虫唾が走る。

「……あれ」

なんだろう。夢の内容、なんだか思いだせそうな。
私、誰かとえっちしてなかった?
キスして舌を絡ませて、胸も揉まれて、それから。
相手は多分、伊織ではなかった。
私はいったい、誰と。

『瑞穂さん』
「ん、なあに、苺くん」
『急にぼうっとして、どうかしましたか?』

そう、だよね。だって、苺くんは敬語だし、それに私のことを瑞穂なんて呼ばない。
なら樹くんだったのかな。
樹くんなら、私のこと、瑞穂って呼びそう。
うん。多分そうだ。多分相手は樹くんだった。瑛麻には悪いことしたなぁ。
だけどあれは夢だから。夢の中で二日連続犯されてきもちよくなって、起きたら濡れてた。それだけだよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...