Dream Again

広瀬あかり

文字の大きさ
9 / 13

8.やり直し

しおりを挟む
脳内で誰より聞き覚えのある声に、反射的に顔を上げればそこには今一番会いたくて会いたくない人がそこに立っていた

「麻衣・・・どうした、こんな公園で何をしてる?浩介さんは・・・どうした?」

「横、いい?」

「あ、あぁ・・・。」

麻衣は静かに隼人の横のブランコに座る。

「夫は・・・ああいや浩介さんは、今お仕事に行ってるよ。」

「そっか、でも麻衣はなんでここに?」

お互いに顔を合わせることもなくまっすぐ前を見て話す二人。

「実はね、結婚式を終えてから不思議な体験をしたんだ。あのね、はやちゃんが私の中でなんだか特別な人に感じられるようになったの。結婚すると気持ちって変わるのかな?変だよね特別な人って、私結婚したのにさ・・・何だか浮気でもしてるみたいだよね、なんて・・・あははっ」

「(まさか過去を変えたから・・・?それが中途半端だから混濁のようなものが起きてる・・・?)」

ゴクリと生唾を飲んだ隼人は麻衣の話に相槌を打つことも返答をすることもなく黙って聞く。

「急に思い出したんだけど、覚えてる?私小学生の頃にはやちゃんに告白してるんだ、でもあの時のはやちゃんの答えって・・・それだけが思い出せないんだよね、はやちゃん何て言ってくれたのかな。」

横を見れば真剣な表情の麻衣がこちらを見つめている。

「(確かにあの時“俺も麻衣のことが好きだ”と言ったはずだが・・・シャッター音で聞こえてなかったんだな。)」

答えに困る隼人、“俺も好きだと言った”と言ってしまえば今(現在)も変わるのだろうか・・・。

そもそも麻衣はこれを“思い出した”のではない、記憶の上書きをされただけ。

「過去を変えることがこれほど未来にも影響を出すなんてな・・・ごめんな、麻衣。」

「え・・・?過去を変える・・・?」

ボソッと言ったつもりだったがどうやら麻衣の耳にも届いていたらしい。

「いや、何でもないよ・・・説明しても理解できる範疇の話じゃない。」

フーッと大きく息を吐いた隼人は紡ぎ出す言葉の選択と、覚悟を決める



「俺はあの時、お前のことなんて好きじゃない、そう言った。それは今も昔も変わらない。」


本当はこんなこと口が裂けても言いたくない、でも・・・仕方がなかった。

笑顔でそう答える隼人に麻衣は勢いよくブランコから立ち上がり笑顔で答える。

「なんだやっぱりそっかー!よかった!だって私達姉弟みたいなもんだもんね!付き合うとか結婚とか想像もできないよね!ごめんね、なんか急に昔話なんかして・・・特別な気持ちとか勘違いだすっきりしたー!じゃあこれからもはやちゃんとは仲のいい姉弟ってことでよろしくね!」

スッキリとした笑顔の麻衣がそこに立っている。

「はは・・・おい、姉弟ってどっちが上だよ?俺が兄貴に決まってるよな?」

「そんな訳ないじゃん!私がお姉ちゃんですー!」

くだらない談笑をして、10分程度が過ぎた頃

「うん、それじゃごめんねはやちゃん、私いくところあるからこの辺でね。」

「あぁ・・・早く行けよ、ああそうだ改めて結婚おめでとう麻衣。」

「うん、ありがとう!バイバイはやちゃん!」

麻衣は去って行った。

それを見送った隼人は再びブランコに座る。

「これで・・・よかったんだよな、うん、よかった。過去を変えた部分の清算も出来たはずだ。これで麻衣が俺のやらかしを引きずることもない。」

地面を足で蹴り大きくブランコを揺らす。

「ブランコなんて、いつぶりだろうな・・・?」

前後に大きく動きながら色々と考える。

「あぁ・・・あの人にも謝りに行かなきゃな、あ・・・でも・・・もう一度・・・いや・・・。」

残された一回のタイムリープを考える。

「あの祭りの日って・・・確か・・・そうだった、よな?じゃあやっぱり・・・」

ズザザッとブランコを足で止めた隼人はブランコから勢いよく駆け出した。

「うん、行く必要がある、行こうあの日に!」

恋愛感情はまだ捨てきれない、だが隼人にはそれ以上にまだ“あの日”やり残したことがあった。

「だいぶ早く思い切れてよかった・・・そしてせっかくのもう一度だけあるチャンスを無駄にしないで良かった。前提は崩れたけど、想いは届かなくてもあの日の悲しい記憶だけは・・・!」

最後のタイムスリップが形と意味を変えて・・・今始まる!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

お母様!その方はわたくしの婚約者です

バオバブの実
恋愛
マーガレット・フリーマン侯爵夫人は齢42歳にして初めて恋をした。それはなんと一人娘ダリアの婚約者ロベルト・グリーンウッド侯爵令息 その事で平和だったフリーマン侯爵家はたいへんな騒ぎとなるが…

処理中です...