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10.後方支援
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「んおお・・・・!」
柔らかい感触の中、グッと体を伸ばす
「・・・よし、布団の中だ、今回も無事過去に戻れたみたいだな・・・。」
二度目の実家帰省、隼人はもう手慣れた感じに暗闇の中を起き上がる。
「時刻は4:23か・・・確か今日は夏休み中だし・・・麻衣と夏祭りに行くのは17時前後と考えると・・・今俺が即座に片付けるべきはあれか。」
とりあえずカーテンを開けようと試みるも、何かがおかしい・・・
「あれ・・・?てか周りに誰もいなくね?」
以前は家族全員が同じ部屋に布団を並べ寝ていたはずなのにそこにあった布団は自分のものだけだった。
「ああ、そうか・・・俺もうこの頃には一人部屋になったんだっけ・・・。」
寝ぼけ眼でそんなことを思い出し間取りや電気のスイッチを頭の中で整理して隼人はすぐに電気を付けた。
「・・・・・」
そこにあったのは漫画棚と勉強机と小さなテレビと当時のゲーム機があるだけの質素な部屋。
そして・・・
「身長今とほぼ変わらないな・・・俺ここで成長止まったんだ・・・そうか、そうか・・・」
これから伸びると周囲からの言葉を信じ更にバフでもかけようと牛乳を飲みまくった当時を思い出す。
「180にはなると思ってたっけなあ・・・・現実は161止まりか・・・・ハハッ笑えねえ・・・」
理想と現実を過去に遡ってまで実感する隼人はがっくりと肩を落とす。
その後、着替えをパパっと済ませAM5:00、勉強机に向かった。
「さて・・・夏休みの宿題を片付けますか・・・って全然手ェ付けてねぇじゃねえか!?」
夏休み特有の謎の大量の宿題をパラパラと各教科の冊子を確認するもほぼ白紙のまま。
かろうじて手が付いていたのは日記だけであった。
正直、今思えばあの夏休みの日記というものは本当に何の意味があるのか。
日記として毎日毎日書くようなことが出来事が起こるはずもないのだ。
そして大半は日記さえ書き忘れて最終日付近で捏造の日記を書き連ね誤魔化すのが主流だ。
そんなことを考えながらとりあえず国語、算数、理科、社会の各冊子を大人の知力でパパっと終わらせてやろうと隼人は意気揚々と宿題を始めた。
ところが・・・
「あっれれ~?おかしいぞぉ・・・?」
何処かで聞いたようなセリフを吐きながら背中にたらりと一粒の冷や汗が流れた。
「やっべぇぜんっぜん分かんねえ!」
小6の宿題をナメていた。
そこで隼人にはある提案が浮かんだ。
「よおしこんなもんスマホで検索すりゃ一発だろ!!」
ズボンの右ポケットに手を突っ込む、しかしここは遠い過去である。
スマホはおろか携帯の普及がようやく浸透してきたころ、ガラケーですら小学生が手に入るハズもない。
無論隼人も例外ではなく隼人が携帯を手に入れるのは随分先のことである・・・。
再び肩を落とした隼人はパパっと宿題を机の片隅に追いやる。
「ま、俺の仕事じゃねえしな・・・てめぇでやんなよ、俺!」
朝5時・・・さっそくやることを失った。
「散歩でも行くか・・・夏の朝は気持ちのいいもんだろ、公園でラジオ体操もやるしな・・・。」
既に明るくなっていることを確認しさっそく外に出て隼人は近所を歩きながら今日のミッションを考える。
「とにかくメインは夏祭りだ・・・連中が現れさえしなければあんなことにはならなかった。とにかくあいつらを回避する方法を考えねえとな・・・。」
ブツブツと独り言を話しながら例の公園に差し掛かる。
「早朝だというのに、そこには一人の女の子がブランコで遊んでいるのが見えた。」
「(うぉ・・・!?こんな時間に誰だよ・・・まさか幽霊か・・・!?)」
隼人はその幽霊(?)に気づかれぬようブランコの後ろを足音を殺し腰を低めてゆっくり歩く。
「(見た目は同い年ぐらいか・・・いやあんま見るな呪われる!!)」
ゆっくりゆっくり・・・真剣にビビる28歳。
「ねぇ、何してるの?丸見えだよ?」
見ないように歩いていたのが逆効果、気づいたその子はブランコを降りこっちに駆け寄ってきていた。
「あれ?はやちゃんじゃん!」
そこにいたのは後藤麻衣本人だった。
ホッと胸を撫で下ろした隼人は体裁を取り繕う。
「何してんだこんなところで、まったく・・・お前今何時だと思ってんだ?子どもは家にいろ。」
「こっちのセリフだよ?はやちゃんだって子どもじゃん。」
言葉の選択肢を盛大に間違えたと、本気で思った。
「ねぇ、何してるの?」
グッと顔を近づけ笑顔をこちらを見つめてくる麻衣。
「うっ(かわいいな・・・)さ、散歩だよ散歩・・・ラジオ体操までも時間もあるからな!」
「ふうん、寝坊助さんのはやちゃんが珍しいね!いつもギリギリか遅刻なのに!」
ケラケラと笑う麻衣に隼人はほんのり顔を赤らめる。
「(待てよ・・・?リアルの過去にはこんなイベントはなかった、麻衣の言う通りならこの時間に俺が外にいるというのはあり得ないハズ・・・なるほどこうやって誤差が生まれていくのか・・・!?ならこの世界線でも麻衣が俺を好きになるような可能性は全部潰しておかないと・・・また将来に影響が出だすのか?)」
「ねぇはやちゃん今日お祭りだよ?はやちゃんも行くの?」
そう問いかけてくる麻衣の言葉に小さくため息を吐き答える。
「時間があったらな、祭りなんて興味ねぇよ・・・。」
「あれー?昨日まであんなに楽しみにしてたのに、変なの!」
「うるせぇよ・・・(どの道に祭りには出向く、こいつらがあいつらと接触しないように仕向けなきゃならねえからな・・・。)」
「なんか朝からはやちゃんに会えてうれしいな!」
突然笑顔でそんな台詞を吐く麻衣に隼人は驚く。
「な、何言ってんだ!?ラジオ体操だって毎日やってんだろ!?」
「だってラジオたいそうには他の子もいっぱいいるし順番で他の子のお父さんお母さんが担当でしょ?二人っきりになれることなんてないじゃん。」
前々から思っていたがこいつは自分が俺に気があるように見せるのが得意だ。
「はぁ、お前なあ・・・」
そこまで言ったところで、ここで《俺もお前が会えて嬉しいよ》と言ってしまえば未来が変わる気さえすることに気が付く。
だが、隼人は小さく顔を横に振り、それを回避するためにここに来たのにそれでは本末転倒だと自分を制する。
「お前は将来・・・素敵な男性と結婚する。だから、だからもう・・・希望を持たせるな。」
気づけば未来のことを話してしまっていた。
ポカンと口を開けた麻衣は露骨に“何を言っているんだこいつ”という顔をした後に笑った。
「あはは!なんで未来のこと知ってるの?素敵な男性?それってはやちゃんじゃないの?じゃあ・・・やだなあ・・・。」
一瞬寂しそうな顔を見せた麻衣は隼人に背を向ける。
「今日のはやちゃんは大人のはやちゃん、3年生ぐらいの時にもあった気がする。先生びっくりしてたもん、私もだけど・・・ずっと覚えてる。ねぇ、本当に未来から来てるの?だったらさっきの話は未来の出来事?」
「あ・・・いや・・・それは・・・」
「私・・・結婚するなら・・・はやちゃんがいいな・・・でも、そうじゃ・・・ないのかな・・・・?」
一瞬こちらを見た麻衣の目に一瞬涙が見えた気がした。
胸に決めた決意が・・・揺らぐ。
麻衣は俺のことが本当に好きだったんだ・・・あれは冗談じゃなかった・・・。
隼人が立ち尽くしていると、麻衣はそのまま何も言わずに去って行った。
夏祭りが始まるまで約12時間・・・本命である夏祭りを前にして隼人は心を大きく揺さぶられる。
柔らかい感触の中、グッと体を伸ばす
「・・・よし、布団の中だ、今回も無事過去に戻れたみたいだな・・・。」
二度目の実家帰省、隼人はもう手慣れた感じに暗闇の中を起き上がる。
「時刻は4:23か・・・確か今日は夏休み中だし・・・麻衣と夏祭りに行くのは17時前後と考えると・・・今俺が即座に片付けるべきはあれか。」
とりあえずカーテンを開けようと試みるも、何かがおかしい・・・
「あれ・・・?てか周りに誰もいなくね?」
以前は家族全員が同じ部屋に布団を並べ寝ていたはずなのにそこにあった布団は自分のものだけだった。
「ああ、そうか・・・俺もうこの頃には一人部屋になったんだっけ・・・。」
寝ぼけ眼でそんなことを思い出し間取りや電気のスイッチを頭の中で整理して隼人はすぐに電気を付けた。
「・・・・・」
そこにあったのは漫画棚と勉強机と小さなテレビと当時のゲーム機があるだけの質素な部屋。
そして・・・
「身長今とほぼ変わらないな・・・俺ここで成長止まったんだ・・・そうか、そうか・・・」
これから伸びると周囲からの言葉を信じ更にバフでもかけようと牛乳を飲みまくった当時を思い出す。
「180にはなると思ってたっけなあ・・・・現実は161止まりか・・・・ハハッ笑えねえ・・・」
理想と現実を過去に遡ってまで実感する隼人はがっくりと肩を落とす。
その後、着替えをパパっと済ませAM5:00、勉強机に向かった。
「さて・・・夏休みの宿題を片付けますか・・・って全然手ェ付けてねぇじゃねえか!?」
夏休み特有の謎の大量の宿題をパラパラと各教科の冊子を確認するもほぼ白紙のまま。
かろうじて手が付いていたのは日記だけであった。
正直、今思えばあの夏休みの日記というものは本当に何の意味があるのか。
日記として毎日毎日書くようなことが出来事が起こるはずもないのだ。
そして大半は日記さえ書き忘れて最終日付近で捏造の日記を書き連ね誤魔化すのが主流だ。
そんなことを考えながらとりあえず国語、算数、理科、社会の各冊子を大人の知力でパパっと終わらせてやろうと隼人は意気揚々と宿題を始めた。
ところが・・・
「あっれれ~?おかしいぞぉ・・・?」
何処かで聞いたようなセリフを吐きながら背中にたらりと一粒の冷や汗が流れた。
「やっべぇぜんっぜん分かんねえ!」
小6の宿題をナメていた。
そこで隼人にはある提案が浮かんだ。
「よおしこんなもんスマホで検索すりゃ一発だろ!!」
ズボンの右ポケットに手を突っ込む、しかしここは遠い過去である。
スマホはおろか携帯の普及がようやく浸透してきたころ、ガラケーですら小学生が手に入るハズもない。
無論隼人も例外ではなく隼人が携帯を手に入れるのは随分先のことである・・・。
再び肩を落とした隼人はパパっと宿題を机の片隅に追いやる。
「ま、俺の仕事じゃねえしな・・・てめぇでやんなよ、俺!」
朝5時・・・さっそくやることを失った。
「散歩でも行くか・・・夏の朝は気持ちのいいもんだろ、公園でラジオ体操もやるしな・・・。」
既に明るくなっていることを確認しさっそく外に出て隼人は近所を歩きながら今日のミッションを考える。
「とにかくメインは夏祭りだ・・・連中が現れさえしなければあんなことにはならなかった。とにかくあいつらを回避する方法を考えねえとな・・・。」
ブツブツと独り言を話しながら例の公園に差し掛かる。
「早朝だというのに、そこには一人の女の子がブランコで遊んでいるのが見えた。」
「(うぉ・・・!?こんな時間に誰だよ・・・まさか幽霊か・・・!?)」
隼人はその幽霊(?)に気づかれぬようブランコの後ろを足音を殺し腰を低めてゆっくり歩く。
「(見た目は同い年ぐらいか・・・いやあんま見るな呪われる!!)」
ゆっくりゆっくり・・・真剣にビビる28歳。
「ねぇ、何してるの?丸見えだよ?」
見ないように歩いていたのが逆効果、気づいたその子はブランコを降りこっちに駆け寄ってきていた。
「あれ?はやちゃんじゃん!」
そこにいたのは後藤麻衣本人だった。
ホッと胸を撫で下ろした隼人は体裁を取り繕う。
「何してんだこんなところで、まったく・・・お前今何時だと思ってんだ?子どもは家にいろ。」
「こっちのセリフだよ?はやちゃんだって子どもじゃん。」
言葉の選択肢を盛大に間違えたと、本気で思った。
「ねぇ、何してるの?」
グッと顔を近づけ笑顔をこちらを見つめてくる麻衣。
「うっ(かわいいな・・・)さ、散歩だよ散歩・・・ラジオ体操までも時間もあるからな!」
「ふうん、寝坊助さんのはやちゃんが珍しいね!いつもギリギリか遅刻なのに!」
ケラケラと笑う麻衣に隼人はほんのり顔を赤らめる。
「(待てよ・・・?リアルの過去にはこんなイベントはなかった、麻衣の言う通りならこの時間に俺が外にいるというのはあり得ないハズ・・・なるほどこうやって誤差が生まれていくのか・・・!?ならこの世界線でも麻衣が俺を好きになるような可能性は全部潰しておかないと・・・また将来に影響が出だすのか?)」
「ねぇはやちゃん今日お祭りだよ?はやちゃんも行くの?」
そう問いかけてくる麻衣の言葉に小さくため息を吐き答える。
「時間があったらな、祭りなんて興味ねぇよ・・・。」
「あれー?昨日まであんなに楽しみにしてたのに、変なの!」
「うるせぇよ・・・(どの道に祭りには出向く、こいつらがあいつらと接触しないように仕向けなきゃならねえからな・・・。)」
「なんか朝からはやちゃんに会えてうれしいな!」
突然笑顔でそんな台詞を吐く麻衣に隼人は驚く。
「な、何言ってんだ!?ラジオ体操だって毎日やってんだろ!?」
「だってラジオたいそうには他の子もいっぱいいるし順番で他の子のお父さんお母さんが担当でしょ?二人っきりになれることなんてないじゃん。」
前々から思っていたがこいつは自分が俺に気があるように見せるのが得意だ。
「はぁ、お前なあ・・・」
そこまで言ったところで、ここで《俺もお前が会えて嬉しいよ》と言ってしまえば未来が変わる気さえすることに気が付く。
だが、隼人は小さく顔を横に振り、それを回避するためにここに来たのにそれでは本末転倒だと自分を制する。
「お前は将来・・・素敵な男性と結婚する。だから、だからもう・・・希望を持たせるな。」
気づけば未来のことを話してしまっていた。
ポカンと口を開けた麻衣は露骨に“何を言っているんだこいつ”という顔をした後に笑った。
「あはは!なんで未来のこと知ってるの?素敵な男性?それってはやちゃんじゃないの?じゃあ・・・やだなあ・・・。」
一瞬寂しそうな顔を見せた麻衣は隼人に背を向ける。
「今日のはやちゃんは大人のはやちゃん、3年生ぐらいの時にもあった気がする。先生びっくりしてたもん、私もだけど・・・ずっと覚えてる。ねぇ、本当に未来から来てるの?だったらさっきの話は未来の出来事?」
「あ・・・いや・・・それは・・・」
「私・・・結婚するなら・・・はやちゃんがいいな・・・でも、そうじゃ・・・ないのかな・・・・?」
一瞬こちらを見た麻衣の目に一瞬涙が見えた気がした。
胸に決めた決意が・・・揺らぐ。
麻衣は俺のことが本当に好きだったんだ・・・あれは冗談じゃなかった・・・。
隼人が立ち尽くしていると、麻衣はそのまま何も言わずに去って行った。
夏祭りが始まるまで約12時間・・・本命である夏祭りを前にして隼人は心を大きく揺さぶられる。
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