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ウォーノウ編

第15話 謎の戦士

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「憎しみに囚われるとは、哀れだなザーガよ」

漆黒の複眼を持った六問にウォーノウの言葉は届かず装甲から血を吹き出しながら走り出すと、全身を炎に包み殴りかかる。

(ふん。単純な動きだ)

超級堕天使にとってその攻撃は無意味。
長い刀身の刀を振るい的確に横腹の傷口を抉る。

「なに?」

「…………」

しかしお構いなく拳が唸り爆裂した衝撃がウェポニック・ダークエンジェルを吹き飛ばす。
さらに追撃の必殺キック〈バーニングクラッシャーシュート〉を食らわせ、地面に叩き付けた。

燃え上がる警察署の内部で繰り広げられる戦い。
すると熱を検知したスプリンクラーが起動、炎を消すと同時に血液を洗い流した。

破壊エネルギーが体内に侵食し始めていることを理解したウォーノウは死を悟りつつ立ち上がると、2本の刀を構え直し、ザーガに短い刀で貫きに掛かる。
それでも憎しみの戦士が止まろうとせず火炎弾を撃ち放ったが長い刀で弾くと、心臓部に突き刺した。

「これで終わりだ!」

勝利を確信した超級堕天使だったが、一瞬の内に絶望へと変わる。

「…………」

傷口から大量の血液が溢れ出す中で六問はなんと口部分をクラッシャーオープンさせ痛みに吠えながら、破壊エネルギーを溜め込んだ右拳をウェポニック・ダークエンジェルの左胸に叩き込む。
あまりの破壊力に血反吐を吐き、装甲にヒビが入る。
破壊エネルギーの蓄積ちくせきで意識が朦朧もうろうとなった時、今まで倒された堕天使達を思い出し足を踏み締めた。

「私は………まだ倒れる訳にはいかない…………」

短い方から手を離すとバックステップで距離を取り、長い刀を両手に構え直す。

「……………」

一方で刀を引き抜いたザーガはそれを取り込み、その素材から剣を作成する。
一斉に走り出し刃が激突すると火花が散り、お互いに弾かれ合う。
六問の意識はすでにザーガの腕輪によって支配され、肉体が完全消滅するまで動き続ける。
それを理解したウォーノウの刀に裁きの光が宿った。

「……………」

破壊エネルギーを剣に宿し、ウェポニック・ダークエンジェルに向かって駆ける。

「ウオォォォォォォォォォォォォ!!」

迫り来る憎しみの戦士に対し、武器の堕天使は黒き翼を羽ばたかせ低空飛行からの長い刀身から繰り出される突きでトドメを刺しに行く。

「…………」

「バッ、バカな………」

一瞬の出来事だった。

ウォーノウが繰り出した刀をザーガはギリギリで躱し、剣による一撃で体を両断したのだ。

完全に破壊エネルギーに侵食され、激痛と共にその場で叫びを上げながら爆散した。

対象が居なくなったことでザーガの腕輪は強制的に変身を解除、ボロボロになった六問がその場で倒れ込む。
傷口がすべて完治するまで丸一日かかる。
だが逆に言えばそれだけの時間で回復するのだから腕輪の力はとんでもなく強大なのだ。

「ウォーノウ様!? おのれ古代の戦士!」

上司の死に男性型バトルジェット・ダークエンジェルはミサイルランチャーを構え、気絶した六問に向かってトリガーを弾こうとする。

「相手は私達ですよ」

AIエーアイが操作する白バイから〈サイクロプスハント〉を装備した如鬼は狙いを定め、堕天使を撃ち抜く。

「グハァ!?」

背中から風穴が開き、思わず声が出る。
さらに追撃の白バイによるタックルで大打撃を受けた。

「よし、このままいけば」

『なにやってるの如鬼! 早く鈴静さんと六問さんを連れて戻りなさい! これ以上放置したら死んでしまうかもしれないのよ!』

「す、すいません」

確かに一時的な勝利よりも仲間の命の方が重要だ。
分かっている。
分かっているはずだ。

なのにどうして救出を優先しなかったのだろう。
そんな考えが頭に過ぎる。

すると赤文字で「どうしたの?」とAIエーアイが呼びかけてくる。

「あのね。今私の仲間の命が危険なの。だからお願い。堕天使達を引き付けて」

彼女の真剣な眼差しに「如鬼のためなら頑張るよ」と赤文字で返事を返し、白バイでの攻撃を再び開始する。
その隙にまずは鈴静の救出に向かう。
まったく動かない彼を背負いその場を逃げ出す。

「うっ…………如鬼…………さん」

「生きてたんですね! 良かった。本当に良かった」

生きていたことに喜ぶ如鬼に対し強烈なタックルによって受けた傷から激痛が走り、彼は歯を噛み締める。

「あと少しでZズートレーラーに着きます。それまでの辛抱しんぼうです」

「如鬼さん………あの時と違って………仲間の命………そして自分の命を大事にできるようになったんですね………」

「そんなことはありません。私はただ光炎さんの指示に従っただけです」

光炎の指示がなければ救出することを忘れていた。

自分の愚かさを改めて感じる瞬間である。
頭部パーツに隠れた悔しさから引きる顔。
そんなこととはつい知らず、鈴静は彼女に体を預けるのだった。


一方その頃バトルジェット・ダークエンジェルの2人はAIエーアイの動かす白バイをマシンガンによる射撃で撃墜すると、上司を殺した六問に銃口を向ける。

「ようやくだ。ようやくウォーノウ様のとむらいができる」

引き鉄を弾こうとしたその時だった。

「その青年に手出しはさせない」

警察署に突如現れた謎の中年男性。
その雰囲気には六問の面影があり、他人とは思えない。

「何者? いや。お前こそがまこと古代の戦士ザーガなのか?」

「そんなことはどちらでもいいだろう。堕天使ども、覚悟してもらうぞ」

男性は右手を左手首にかざすと銀色の腕輪が出現する。

「変身など、させるかぁぁぁぁぁ!!」

激情した女性型がマシンガンを連射、だが彼の姿はすでにザーガへと変わっていた。

弾丸を吸収し体に取り込むと、一瞬のうちに目の前に移動しほほに破壊エネルギーを蓄積させた両拳で連続パンチをたたみ込んだ。

破壊エネルギーが体中に流し込まれ、たまらず爆散した仲間の姿に男性型は恐怖心を植え付けられる。
さらに右手の指を指し、「次はお前だ」と破壊エネルギーを左足に込める。

(バカな。破壊エネルギーを使用した者は体力を一気に消費するはず)

今までの戦いを〈ダークネスリングゾーン〉で見ていた彼の常識を打ち破り、もう1人のザーガは高く跳び上がる。

「オリヤァァァァァァァァァ!!」

必殺キックである〈クラッシャーシュート〉を食らい、大きく吹き飛ばされた堕天使の体は爆散した。

スプリンクラーが起動し、まるで雨の様に降り注ぐ。
気絶する六問の方を振り返ると、お姫様抱っこでその場を立ち去る。

「君にはずいぶんと英雄の代わりをさせてしまったね。いや、これからもお願いするかもしれない」

この男性は何者なのか、乞うご期待。
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