チェンジソルジャーザーガ

ガトリングレックス

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ゼッツ編

最終回 本物の戦士

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破壊エネルギーをまとった拳に対しゼッツは攻撃をあっさりと何回も躱す。

「あなたがオリジナルでないのなら、私には勝てません」

「お互いザーガの力を持つ。1つ違うとすれば、守るものがあるかないかだろう」

「それは違います。私には大量に調達した物質。そしていつでもあなたを倒すことできる技を持っている。明らかにオリジナルもあの人間が作り出したクローンザーガもしのぐことはまだまだたくさんあるのです」

彼女はパンチを躱しながらそう言うと、隙を突いて強烈な蹴りを左の横腹に味あわせる。
その破壊力は凄まじくなんと皮膚から亀裂が入りそこから血液が溢れ出た。

「グッ………」

「ふん。あなたさえいなければ、超級堕天使はこの1人にはならなかった。後悔して死になさい」

再び破壊エネルギーを右足に集中させ〈デスペア・ジ・エンド〉を繰り出そうとする。
ザーガが自分の死を悟ったその時。
一発の銃弾がゼッツの右脹脛ふくらはぎを貫き、膝を突かせた。

幕昰ばくぜさん!!」

銃弾を放った者の正体は、共に戦って来た相棒である幕昰だった。

「お前がへばってどうする! 俺がサポートするから、とっと倒しちまおぜ!」

彼の男気のある激励に、ヒサは「はい!」と気合いの返答を返した。

「人間のクセに私を倒そうなどと……」

風穴を授かれし戦士の肉片を自分の肉体へと変換、補強する。

しかし同じ箇所に銃弾を撃ち込まれ貫通する。
2回も膝を突かせると、今度は破壊エネルギーのリミッターを解放したザーガの一撃が彼女の頭に命中する。
大きく吹き飛ばされる漆黒の戦士、破壊エネルギーが侵食する中で全身から霧が放出する。

「なんだ? だんだん霧が濃くなっていくぞ?」

幕昰のその発言していると、すぐに正体が分かる。
気絶した西前と如鬼の変身が解け、変身するための腕輪が消滅する。
そして相棒が持つ対怪人用リボルバーもまた形を失った。

「ど、どうなってやがる!?」

動揺する姿にクスクス笑うゼッツ、左手には〈カオスバロン〉右手には〈カオスグリフォン〉をたずさえていた。

「あれは、ゴアドさんが使っている武器?」

「フフフ、これが私の能力。霧を発生させすべてを奪い尽くす」

「そんな、じゃあゴアドさんの能力をさっきの霧で奪ったのか」

驚いている隙に〈カオスバロン〉のコッキングレバーを引っ張り、銃口をザーガに向ける。

「攻撃が来るぞ! 躱してお前の技を食わせてやれ!」

「はい!」

幕昰の指示に従い足のリミッターを外し、ゼッツに向かって走り始める。
トリガーを弾き、繰り出される光線が発射される。

「ハッ!」

気合いの叫びを上げ、高く飛び上がる。
宙で1回転し、必殺技〈リミットバースト〉を繰り出す。
その攻撃を視界に入れた彼女は〈カオスグリフォン〉をザーガに向かって投げつける。

しかし破壊エネルギーが放出した状態では神の武器でも粉砕されていく。

「ウォ゙リヤァァァァァァァ!!」

強烈な一撃が漆黒の戦士の頭に命中し破壊エネルギーが全身を侵食し、爆散した。
 
その爆発は彼らの視界を奪う。

「ヒサ!! グオ!?」

幕昰の叫びも虚しく爆風に吹き飛ばされ、そこから意識は失われた。


あれから2ヶ月の時間が過ぎた。
 
平和を取り戻した日本。
如鬼と鈴静、光炎は次の戦いに備えていた。

シュミレーションマシンを使い、堕天使を超えた存在との戦闘を想定した特訓を開始する。

「スー、今後もよろしくね」

『任せて。敵の動き、読み取ってみせるよ』

彼女らの協力プレイの姿勢に、鈴静も戦闘体勢に入る。

「先輩を差し置いて、挨拶もなしですか? これからが心配ですね」

「すっ、すいません……」

「ハハ、冗談ですよ。さあ、特訓に集中しましょう」

優しく微笑みながら銃口を敵に向ける。

「はい! よろしくお願いします!」

彼女は堕天使との戦いで人間として変わったなと光炎はしみじみと感じ、喜びながら首を縦に振った。


バイクに乗る金色のヘルメットを被った男性。
なにやら赤信号にイライラしている様子だが、青信号になった途端に一気にアクセルを回した。
 
数分後、目的の場所へ到着した男性はバイクを駐車場に止める。
ヘルメットを脱いだのは、かつて授かれし戦士だった西前シンだった。

彼が向かったのは、親が眠る墓の前。
花を新しい物に変え、墓石にバケツから柄杓ひしゃくで水をかける。

「父さん、母さん、俺頑張ったよ。人のために、世界のために戦ったよ」

気を許せる場所はここしかない。
戦っていた時はカッコつけていたと言うか、どう話せばいいか分からなかった。

ダサく見えていたんじゃないか?
そんなことを今だに想いながら線香せんこうを焚き、香炉こうろに入れる。
手を合わせしばらく目を閉じた。


「日叉! 日叉!」

ジャーミーが呼ぶ声にヒサはベッドからゆっくりと体を起こす。

「ジャーミー!? ごっ、ごめん!」
 
「まったく。初めてのデートだって言うのに、寝坊なんかして。私じゃなかったらとっくに別れてるよ」

そう、今日はジャーミーと恋人になってから初めてデート。
それなのに彼は連日ザーガの腕輪が戦いを忘れないように夢を見せてくるので、眠りが浅いのだ。

「本当にごめん!!」

「……ザーガの腕輪が戦いを望んでいるのは分かってる。怪人がいないとはいえいつまた出てくるか分からない。でもね、この時間だけは大事してほしいの」

気が休まるのは彼女との生活があってこそ。
研究者と言う忙しい合間をってデートをしてくれるのだ。

それを考えたら自分も普通の生活に慣れなければとヒサは思った。

「急いで着替えて支度したくするよ。少し待ってて」

「分かった。もし遅かったらデートはなしだからね」

そう言ってジャーミーが部屋を出ると、急いでパジャマを脱ぎ私服に着替えるのだった。


その頃幕昰はボーとしながら缶コーヒーをちびちびと飲んでいた。

「今頃ヒサはジャーミーさんとデートしてるんだろうなぁ。あいつ、六問として生きなきゃいけないとか言ってたが、記憶は引き継いでるとはいえ大丈夫かぁ」

独り言をボヤき、飲み終えた缶をゴミ箱に捨てる。
上層部の人間である彼は書類を書くために事務所に戻ろうとすると、1人の若い男性刑事が緊張気味にこちらに敬礼してくる。

痣塚あざずか刑事、敬礼の手が震えてるぞ」

「申し訳ありません」

「まあいい。俺には書類を書く仕事がある。なにかあるなら他を当たってくれ」

若い刑事に対し冷たく当たり、その場から立ち去ろうとする。

「待ってください幕昰さん。怪人科の上層部から伝言です」

「怪人科から? めさておいて今更なんだよ」

引き止められたと思えば、そう感じた彼は怪訝そうな顔をする。

「そんな顔をしないでください。えぇ、幕昰さん。怪人科において実績を残しました。ダークエンジェルの件についてもとても感謝していますと。一部の上層部の者がご無礼したことを深くお詫びしたいと。なのでお願いします。怪人科に戻ってきてください」

「………分かった。話だけは聞いてやる」

こうして怪人科のある部屋に向かうことになった。

数分後、怪人科の部屋に到着しドアに痣塚が静かにノックする。

「痣塚です。幕昰さんをお連れてしました」

「どうぞ」

許可を得た彼らは部屋に入ると、全員幕昰に頭を下げていた。

「この度は怪人科の一部の者がご無礼を働き、大変失礼しました」

上層部の者が謝罪の言葉を述べると、続きを語り始める。

「幕昰さんや六問さんに怪人科を辞めさせるなどの勝手な判断をしたり、常日頃からいわゆるパワハラが目立っていた彼には警察を辞任させました。共に戦ってきたあなた方に辞めてもらう理由がありません」

その話を聞いた幕昰は、ため息をく。
 
「あの言動を見逃していたのは怪人科として、いや警察としてどうなんだとは思う。これから信頼していく仲間なんだ。そこらへんは見直していかなきゃいけない。まぁこの場での上でもない人間が言えたことじゃないがな」

「確かに、我々を疑う気持ちは晴れないでしょう。ですがこれだけは言わせてください。幕昰さん、一緒に働かせほしいんです」

彼らは幕昰への憧れがある。
そんな環境で働きたいと言われ、ノーとは言えない。

「分かった。お互い頑張っていこう。だがその前に書類を書かなきゃいけない。その仕事もこの部署でやっていいか?」

「もちろんです。これからもよろしくお願いします」

交渉は成立し、幕昰は怪人科に戻ることになった。

これから戦士達は別々の道を歩むことになる。
人間として歩む者。
戦士を続ける者。
戦士を支援する者。

どちらも素晴らしい生き方だ。
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