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第11話吸血鬼との契約
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少女に連れられ、少女が住んでいる部屋に案内された。
「私はブラッド。この施設の管理人であり、母代わりをしているわ」
「あなたみたいな子どもがなんで管理人なんかをしてるの?」
「見た目は子どもでもそれなりに歳はとっているのよ」
「ふーん」
「まあ座ってて、コーラとポテチを持って来るから」
コウはカーペットの上に座り、あたりを見回す。
そこは転々としていた警察の家やアパートよりもキレイで、落ち着く環境である。
保護施設ではまずありえないマンション方式を採用している事は気がかりだが、とりあえず様子見をして、ダメなら野宿を覚悟する。
「はーい。コーラとポテチ持って来たわよ~」
ブラッドはにこやかな笑顔でテーブルの上にコップ2個とペットボトルに入ったコーラ2本、コンソメ味のポテトチップスの袋を2つ置く。
そしてコーラを自分のコップに注ぎ入れ、ポテトチップスの袋を開ける。
「食べていいの?」
「良いのよ。そのために用意したんだから」
その返事に納得し、コウはコーラを自分に出されたコップに注ぎ入れる。
「それで早速だけど、あなたの名前と情報を教えてくれるかしらぁ。情報に不備がないか本人から聞きたいの」
「うん、私はシンマコウ、19歳まで警察に保護され、何人もの処刑囚を処刑して来た」
「でっ、能力は?」
「能力?」
「ここは能力者を対象とした保護施設なのよ。だから能力がなんなのかも知る必要がある」
コウはコーラを口に含み、喉を潤す。
「能力は、次元の裂け目を開き、範囲にいる自分以外の物体を吸い込み、閉じ込める。閉じ込めた物体は2度と戻って来ない」
ポテトチップスを1枚口に入れ、ブラッドはコーラを飲む。
「なるほど、かなり強力な能力ね。でも安心して、コウみたいな子はこの私の管轄よ。絶対に住んでて損なんてさせないわ」
「じゃあ私をここに・・・・・」
「ただし、あなたにはさっき言った通り、私の眷属になってもらう必要があるの」
そう言って口を開くと、2本の牙が覗かせる。
「それって、もしかしてだけど」
「そう、正真正銘、吸血鬼の牙よ」
「吸血鬼。つまりここに住んでる人達はみんなあなたの眷属と言う事?」
「その通り。みんな元々能力者だからと言う理由で見捨てられた子達。この町が能力者を受け入れる様になった。これは表の顔で実際は違う」
ポテトチップスを3枚同時にコウは口に入れ、バリバリと音を立てる。
「裏の顔は雇われ屋と言うカテゴリーの会社に入社させ、汚れ仕事をさせる。この施設はそんな雇われ屋でスカウトされない様に保護し、好きな仕事をしてもらえる様に支援するのが役目なの」
「だとしても眷属になる理由にはならないでしょ?」
「眷属になってもらう事でコウにはたくさんメリットがあるわ。その1つは、あなたがただの能力者としてではなく、ちゃんと一般人として認めてもらえると言う事よ」
「なにを言ってるのか分からない。吸血鬼の眷属になる、つまり化け物として見られるんだよ。そんなの、そんなのなにも変わらな・・・・・」
「私がそうはさせない!」
ブラッドのイッカツに動揺するコウ。
「絶対にそんな事させない。私が生きている限り、眷属を危険な目に合わせない。もちろん社会人として頑張ってもらいたいわ。だけど、雇われ屋みたいな能力者を愚弄する仕事に就かせるなんて、私がさせない」
その表情は真剣その物。
ブラッドがウソなどついていないとコウは確信した。
「ブラッド、私は普通に生活してみたい。今までやって来た事を忘れても良いのなら、吸血鬼になっても構わない」
信じてみたいと思った。
彼女なら自分を救ってくれる。
罪を背負って生きる自分を支えてくれる。
その考えに行き着いた時、言葉が発せられる。
「だから、私を、眷属にしてほしい」
「分かった。幸せな人生をあなたにプレゼントするわね」
ブラッドはコウの後ろに立ち、首に牙を突き刺す。
DNAが人間の物から吸血鬼の物に変わって行く。
激痛に耐え、実感する。
もう自分は人間でなくなっていると。
牙を引き抜き、傷口がすぐ様塞がる。
「はい、これであなたも眷属の仲間入りよ。これからよろしくね。後私の事は母親だと思って気軽に話しかけて、相談に乗ってあげるから」
「うん。じゃあ今からあなたの事をお母さんと呼ぶね」
それからコウはブラッドの支援を受けながら、就職を大型スーパーに決め、商品を棚に置いたり、ラベルを貼ったりしている。
施設ではすぐにとはいかなかったが、段々と馴染んでいった。
今に戻り、ミユ、ラン、セイギ、ストロンギストの4人は、少女を守りながら、自動運転車で切り裂きの殺人鬼達から逃げていた。
「霧が晴れない。しつこい奴ら」
「この子をボスと言ってたっすからねぇ、おそらく宗教的な物に利用されていた可能性があるっす」
話を聞きながしながらセイギは腕組みし、前を確認していると、車がゆっくりと止まる。
人工知能が歩行者だと感知した存在、それは。
「ボス、返して、もらう」
大剣を構え、筋肉質な体を持ち、黒い洋風の兜と黒い鎧を装備した切り裂きの殺人鬼達の1人、ジャイアントだった。
「私はブラッド。この施設の管理人であり、母代わりをしているわ」
「あなたみたいな子どもがなんで管理人なんかをしてるの?」
「見た目は子どもでもそれなりに歳はとっているのよ」
「ふーん」
「まあ座ってて、コーラとポテチを持って来るから」
コウはカーペットの上に座り、あたりを見回す。
そこは転々としていた警察の家やアパートよりもキレイで、落ち着く環境である。
保護施設ではまずありえないマンション方式を採用している事は気がかりだが、とりあえず様子見をして、ダメなら野宿を覚悟する。
「はーい。コーラとポテチ持って来たわよ~」
ブラッドはにこやかな笑顔でテーブルの上にコップ2個とペットボトルに入ったコーラ2本、コンソメ味のポテトチップスの袋を2つ置く。
そしてコーラを自分のコップに注ぎ入れ、ポテトチップスの袋を開ける。
「食べていいの?」
「良いのよ。そのために用意したんだから」
その返事に納得し、コウはコーラを自分に出されたコップに注ぎ入れる。
「それで早速だけど、あなたの名前と情報を教えてくれるかしらぁ。情報に不備がないか本人から聞きたいの」
「うん、私はシンマコウ、19歳まで警察に保護され、何人もの処刑囚を処刑して来た」
「でっ、能力は?」
「能力?」
「ここは能力者を対象とした保護施設なのよ。だから能力がなんなのかも知る必要がある」
コウはコーラを口に含み、喉を潤す。
「能力は、次元の裂け目を開き、範囲にいる自分以外の物体を吸い込み、閉じ込める。閉じ込めた物体は2度と戻って来ない」
ポテトチップスを1枚口に入れ、ブラッドはコーラを飲む。
「なるほど、かなり強力な能力ね。でも安心して、コウみたいな子はこの私の管轄よ。絶対に住んでて損なんてさせないわ」
「じゃあ私をここに・・・・・」
「ただし、あなたにはさっき言った通り、私の眷属になってもらう必要があるの」
そう言って口を開くと、2本の牙が覗かせる。
「それって、もしかしてだけど」
「そう、正真正銘、吸血鬼の牙よ」
「吸血鬼。つまりここに住んでる人達はみんなあなたの眷属と言う事?」
「その通り。みんな元々能力者だからと言う理由で見捨てられた子達。この町が能力者を受け入れる様になった。これは表の顔で実際は違う」
ポテトチップスを3枚同時にコウは口に入れ、バリバリと音を立てる。
「裏の顔は雇われ屋と言うカテゴリーの会社に入社させ、汚れ仕事をさせる。この施設はそんな雇われ屋でスカウトされない様に保護し、好きな仕事をしてもらえる様に支援するのが役目なの」
「だとしても眷属になる理由にはならないでしょ?」
「眷属になってもらう事でコウにはたくさんメリットがあるわ。その1つは、あなたがただの能力者としてではなく、ちゃんと一般人として認めてもらえると言う事よ」
「なにを言ってるのか分からない。吸血鬼の眷属になる、つまり化け物として見られるんだよ。そんなの、そんなのなにも変わらな・・・・・」
「私がそうはさせない!」
ブラッドのイッカツに動揺するコウ。
「絶対にそんな事させない。私が生きている限り、眷属を危険な目に合わせない。もちろん社会人として頑張ってもらいたいわ。だけど、雇われ屋みたいな能力者を愚弄する仕事に就かせるなんて、私がさせない」
その表情は真剣その物。
ブラッドがウソなどついていないとコウは確信した。
「ブラッド、私は普通に生活してみたい。今までやって来た事を忘れても良いのなら、吸血鬼になっても構わない」
信じてみたいと思った。
彼女なら自分を救ってくれる。
罪を背負って生きる自分を支えてくれる。
その考えに行き着いた時、言葉が発せられる。
「だから、私を、眷属にしてほしい」
「分かった。幸せな人生をあなたにプレゼントするわね」
ブラッドはコウの後ろに立ち、首に牙を突き刺す。
DNAが人間の物から吸血鬼の物に変わって行く。
激痛に耐え、実感する。
もう自分は人間でなくなっていると。
牙を引き抜き、傷口がすぐ様塞がる。
「はい、これであなたも眷属の仲間入りよ。これからよろしくね。後私の事は母親だと思って気軽に話しかけて、相談に乗ってあげるから」
「うん。じゃあ今からあなたの事をお母さんと呼ぶね」
それからコウはブラッドの支援を受けながら、就職を大型スーパーに決め、商品を棚に置いたり、ラベルを貼ったりしている。
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今に戻り、ミユ、ラン、セイギ、ストロンギストの4人は、少女を守りながら、自動運転車で切り裂きの殺人鬼達から逃げていた。
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人工知能が歩行者だと感知した存在、それは。
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