今時な死神と不死身な嫌われ者

ガトリングレックス

文字の大きさ
22 / 29

第22話百相パペット

しおりを挟む
火炎放射はあの左手に取り付けたパペットから吐かれた。
そう思ったスパークは、パペットに強烈な電撃を放つ。
「チェンジ」
パペットから発声られた低い声で見た目が変わる。
その見た目はまるでディフォルメされた雷神だ。
パペットはシンバルを鳴らして電撃を放つ。
電気が反発し、打ち消し合う。
しかしそれでスパークの攻撃は終わらない。
拳に電気を集め、敵の腹に攻撃を仕掛ける。
それを理解しているかの様に、パペットの見た目がディフォルメされたゴーレムに変化する。
「ゴー」
パペットの右腕が巨大なレンガの腕となり、拳を唸らせる。
しかしスパークの力が上回り、砕け散って行く。
「『破壊してやる!」』
トドメを刺せる。
そう思った次の瞬間、コサメが電気の殺人のページを開き、スパークを戻した。
本の中で叫びを上げるスパークを心配しながら、ブラッドは雇われ屋の彼女を見て、そして怒りの表情を浮かべる。
「雇われ屋のあなた、どうして私達に攻撃したの?」
その言葉に恐怖したのか、緊張した様子で身構える。
「あっ、あの。これが仕事なので・・・・」
「仕事? 市民を殺すことが仕事なのかしら」
「ヒェ!?  そっ、それは、今回の仕事はこの町に爆弾魔が暮らしているから、殺害して来いと・・・・・」
「爆弾魔?」
「はい、それがあの方にまんまだったので・・・・・」
ウェポンの姿と彼女のデバイスに入っている画像の爆弾魔と合致する。
画像を観たウェポンはあの戦いを思い出した。
「あの時のか」
それは30年前、ウェポンとストロンギストであったジャスティス、そしてジャスティスに取り込まれたソウルの3体のデビルが戦った。
いわゆる最終決戦で爆弾を取り付けたドローンを発進させ、爆発させたことにより、100人以上が死んでいった。
おそらくそれが爆弾魔の由来だろう。
「過去の戦いは俺にとって実績だ。この町で戦いはしないと思っていたが、まあ良い、戦ってやる」
「ここでやるの? かなり悪目立ちするけど良いのかしら」
ブラッドの言う通り。
ウェポンがここにいるだけで市民から嫌な視線を送られていると言うのに、ここで戦闘をした場合、たとえ勝ったしても、ただの殺人犯として見られるだけ。
さらにスパークの闘争心を煽るわけにはいかない。
「分かった。ここで1番人がいない場所を教えてくれ。そこで戦う」
「えぇ、ここから結構遠いけど、山があって、そこなら・・・・・」
「そこで良い、戦うには申し分ない場所だ」
そう言って、次元の裂け目から青い刃の短剣を取り出す。
「それは?」
「まあ見ていろ」
コサメの質問に、ウェポンは短剣でくうを斬る。
すると、山へと続く次元の裂け目が2つできた。
「パペットの使い手、戦いの準備はできた。全力を尽くし、俺を倒してみろ」
パペットの使い手は動揺しながらも、仕事だと割り切り、唾を飲みながら次元の裂け目に入る。
「これを頼む」
「はっ、はい」
ウェポンも持っていたエコバッグをコサメに渡し、短剣を次元の裂け目に貯蔵する。
そして小走りで山への道に入って行った。

そこはピクニックやキャンプができるレジャースポット。
川原でどちらも攻撃を仕掛けようと構えている。
「最初から飛ばして行くぞ」
ウェポンが次元の裂け目から取り出したのは、英雄クーフーリンが使用していたとされる槍、ゲイボルグだ。
それも何千本も次元の裂け目から出てくる。
射出されたゲイボルグはまるでイワシ大軍の様にパペットの使い手に襲いかかる。
するとまたパペットが見た目を変え、今度は鏡の鎧を身に付けた騎士に見た目が変わる。
そしてゲイボルグの攻撃目標を変更し、なんとウェポンに襲いかかった。
ならばとゲイボルグのルーンを暴発させ、消滅させる。
「なるほど。お前の能力は何通りもあるのか。これは帰る時間が遅くなりそうだ」
「帰る? あなたには死んでもらわないと困るんですけど・・・・・」
ビクビクと表情を強張らせるパペットの使い手にさらに殺意が湧き、次元の裂け目から佐々木小次郎の愛刀、物干し竿ものほしざおを8本取り出し、触手で持ち、回転させる。
「死んでもらいたいのは俺も同様だ。伝説がダメならば、次は技をくらわせてやろう」
ピタリと回転をやめ、クラウチングスタートの様に、手を川原につき、走り出す体勢に入る。
八刀流はっとうりゅう見様見真似みようみまね秘剣ひけん燕返しつばめがえし!」
神速の速さで繰り出される一刀につき3連撃。
合計24連撃が同時に彼女を襲う。
だがパペットは攻撃を反射し、ウェポンを大きく吹き飛ばす。
「ぐをー!?」
痛みに悶えながら今更自分が間抜けなことをしていると気づく。
相手の能力はパペットの見た目によって変わる。
その能力は何個あるのか。
場合によっては勝つのに時間がかかるかもしれない。
「面白い。面白いぞ! だがなぁ、ゲームは1時間遊んだら15分ほど休憩しなきゃーならない」
「すいません、意味がよく分からなかったんですけど・・・・・」
「さっさとお前を殺して、帰りたいって意味だ」
皮肉の言葉の正体を明かしつつ、触手を鎧に巻きつけ、ウェポンはパペットの使い手を睨みつけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

男装官吏と花散る後宮〜禹国謎解き物語〜

春日あざみ
キャラ文芸
<第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。応援ありがとうございました!> 宮廷で史書編纂事業が立ち上がると聞き、居ても立ってもいられなくなった歴史オタクの柳羅刹(りゅうらせつ)。男と偽り官吏登用試験、科挙を受験し、見事第一等の成績で官吏となった彼女だったが。珍妙な仮面の貴人、雲嵐に女であることがバレてしまう。皇帝の食客であるという彼は、羅刹の秘密を守る代わり、後宮の悪霊によるとされる妃嬪の連続不審死事件の調査を命じる。 しかたなく羅刹は、悪霊について調べ始めるが——? 「歴女×仮面の貴人(奇人?)」が紡ぐ、中華風世界を舞台にしたミステリ開幕!

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...