魔族転身 ~俺は人間だけど救世主になったので魔王とその娘を救います! 鑑定・剥奪・リメイクの3つのスキルで!~

とら猫の尻尾

文字の大きさ
12 / 56
第一幕 2場 別離と決意

第12話 卑怯な手段

しおりを挟む
 俺が気絶している間、魔王直属の長老会という組織のメンバーによる話し合いがもたれたという。その中で、俺が魔王城に残ることができる唯一の道が示されていた。それがアリシアとの結婚であるらしい。魔王の親族となれば俺は晴れて魔族の一員という扱いになるというのだ。

『ならぬ! そのような男に娘をやれるか! そいつは人間だぞぉぉぉー!』

 魔王は立ち上がり、玉座の間が揺れる。
 魔王の声は衝撃波となり、建物の壁面の一部が崩れ落ちた。
 戦闘モードの時と同じく、脳に直接声が届いていた。

「我が魔王の言うとおりである! さあお嬢様、そこをお退きください。吾輩が奴めを一撃で仕留めますゆえに――」

 バラチンがロングソードを抜いた。

「どきません! どうしてもと言うならバラチン、アタシを先に倒しなさい!」

 アリシアも双剣を構える。すると今まで一切の動きを見せなかった黒装束の魔人がアリシアの背後に回り、耳元で――

「お嬢様……拙者達はどう動きましょうか?」
「カルバスはユーマを守っていてちょうだい!」
「はっ、御意に!」

 カルバスと呼ばれた魔人は俺と目を合わせて――

「お嬢様の命令とあれば、汚い人間と言えども拙者は守るのでござるよ」

 何か感じ悪い!
 この場にいるもう1人の黒装束の魔人に向かってカルバスは合図をする。
 すると、2人はすっと同時に姿を消し、次の瞬間には俺の目の前に来ていた。
 はっ、速い! その動きがあまりにも速くて俺の目には見えなかったのだ。

 一方、アリシアとバラチンの対決は間合いのせめぎ合いとなっている。どちらかが動くとすぐにでも斬り合いが始まりそうな緊張感が漂っている。魔王も二人の戦いを止めるつもりはないらしく、ごくりと生唾を飲み込んでいた。


「ぶぇっくしょぉぉぉん――!!」


 長い鼻のエレファンが大きなクシャミをし、それを切っ掛けとして二人は斬り掛かる。

 バラチンはロングソードで正面突き。
 アリシアは低い体勢からひねりを加えて左手の剣でいなす。
 その勢いのまま体を回転させ右手の剣でバラチンの胴体を狙っていく。
 しかし、バラチンは体をくの字に折り曲げそれを避ける。

 そして再び剣を構えて対峙する。

「なかなかやりますな、お嬢様――」
「バラチンこそ、その老体で良く動けているわ!」
「……吾輩は我が魔王と同じ世代ゆえに……今のお言葉は我が魔王に向けて言っているのと同義ですぞ?」
「ご、ごめんなさいお父様っ、アタシはそんなこと微塵も思ってはませんよ?」

 アリシアはファザコンなんだろうか?
 緊張した雰囲気がすっ飛んで、一気にあたふたしている。

 そんな時、長い鼻のエレファンが太くて短い足でとことこ歩み寄り、   

「あのう……長老会が決めた期限は明日の夕刻ですゾウ。ユーマ殿とアリシア様のご結婚の可否については、それまでにじっくりと話し合い、互いに納得できる結論を出すと良いのですゾウ」

 耳をぱたぱたさせながら言った。
 アリシアと魔王はその意見に賛成のようで、頷いている。
 バラチンはどうあっても結婚に反対の様で不満顔。
 そして俺は……エレファンが言った『明日』というキーワードが余韻となって残っていた。明日……明日という言葉に何か引っ掛かる。明日は何か大事なことがあったような……

「あ――――ッ!」
「な、何事!?」

 俺の叫び声に皆が一斉に振り向いた。

「明日、ミュータスさん達の本陣がこの城に攻めてくる!」
「なんで急に?」
「城に攻めてきたときに聞いたんだ。ミュータスさん達は明日の一斉攻撃のための斥候が任務と言っていた。本格的な攻撃は明日なんだ!」

 俺は天井を見上げる。玉座の間の天井は城から突き出た塔の一つと繋がっている。そこから空の様子が見えるのだが……

「もう夕方になるけれど、今から行けば暗くなる前に最前線に着けるだろうか? 俺にはこの周辺の地理はよく分からないのだけれど……」
「では少しお待ちください――」

 カルバスとは別の黒装束の魔人がすっと胸元から巻紙を出す。
 それを広げると、この周辺の地図が出てきた。

「ここが魔王城。その南側には森があり、その森を突き抜けると大きな湖に出ます。本来はそこを迂回するのですが、我々の足では湖を直進し進むことができます。そこから一山越えた先が、現在の最前線となり、そこに敵方の本陣があります」

 地図を指しながら分かりやすく説明してくれた。カルバスが頑丈な体つきなのに対して、この魔人は随分華奢なかんじで、声も優しかった。

「みんな聞いてくれ! 人間は夕食の時間になるとホッと一息つく。その時間帯に奇襲を仕掛ければうまくすれば敵を一掃できると思うのだけれど……」
「なるほど、奇襲とは卑怯な人間の考えそうな手段ですな。しかし――今の我々には最適な作戦かと――」 

 バラチンがロングソードを鞘に収めて魔王に進言した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...