魔族転身 ~俺は人間だけど救世主になったので魔王とその娘を救います! 鑑定・剥奪・リメイクの3つのスキルで!~

とら猫の尻尾

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第二幕 6場 悪魔と魔族の事情

第38話 無敵

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「うおぉぉぉぉぉおお――ッ!」

 俺は叫び、ありったけの力で体を捻った。
 俺の両腕を抱え込んでいた両脇の男達が前と後ろによろける。
 両手が自由になった。

 何が起きたのかが分からなかった。
 ただ自分の体に何か強い力が入り込んできたような感覚はあった。

「てめえ、やりやがったな……」
「大人しく倒れていれば死なずに済んだものを!」
「やっちまえ!」

 男達が一斉に殴りかかってきた。
 俺はその拳を払いのけ、身を躱す。
 しかし、すべてを避けきることは出来ずに腹に蹴りが入った。
 その直後に顎を突き上げるような一発を食らった。

 俺は膝から崩れ落ちる。
 奥歯が欠け、口の中に血が溜まっているのを感じた。
 口を開けるとドロッと流れ出た。
 
 全身から力が抜け、すでに指の先すら動かせない。

 男達は俺の体を執拗に蹴り始める。

 もう……だめかもしれない……



『我の力が必要か?』



 またあの声がした。
 あんたは……誰だ……?

『我は悪魔ルルシェ』

 悪魔……だと……?

『そう、おまえ達が天使と呼ぶ存在の対極に位置する存在じゃ』

 悪魔が……俺に力を貸そうという……のか?

『そう。その代わりおまえは我に力を貸すのじゃ』

 俺の力だと? 俺に何の力があるというのだ?
 
『それは我にも分からん。ただ、おまえの存在が我を引き寄せ、そしておまえは我と心を通わせた。悪魔と人間がこうして話せるなど本来はあり得ないこと。我らの出会いはこの世界でただ一つの奇跡なのじゃ』

 世界で……ただ一つの……奇跡……

『そう! 奇跡なのじゃ。うふふ、うふふ、これでようやくあの子の願いを叶えてやれるのよ! どう? 我と共に魔族の未来を背負ってみない?』

 姿の見えない悪魔は嬉しそうに笑いながら俺の周りを飛んでいる。
 魔族?
 今、魔族と言ったのか?
 魔族の未来を背負う?

 俺の理解が追いつかない。

 次の瞬間、俺の目の前に男の靴が迫ってきた。
 俺はガッと鷲掴みにする。
 それを掴んだまま、俺は身を起こす。

「うわっ、とっ、とっ、何すんだてめえ!?」

 片足を持ち上げられた男は背中から地面に倒れる。
 俺は男の足首を脇にはさみ、体重をかけつつ身体を捻った。

「あぎぁぁぁぁぁぁ――!」

 男の足はあり得ない方向に折れ曲がり、悲鳴を上げる。
 俺を取り囲んでいた男達は一斉に下がっていく。

 体中に力がみなぎる。
 痛みは感じない。

 俺は――

 無敵になった。

『そう、おまえは無敵。どうする?』

 殺す。

 男達がナイフを出した。
 いいさ、俺は痛みを感じない。
 刺せばいい。

 今の俺には怖いものなど無いんだ。
 
「死ねぇぇぇ――ッ」

 正面の男がナイフを突きつけてくる。
 俺はそれを躱す。
 男の攻撃はひどく直線的で、がちがちに力が入っていた。
 男の手首をねじるとナイフを放した。
 俺はそれを拾い上げる。

「な、な、何だこいつは……ばけものか……?」
「やべえよ……オレたちには歯が立たねえ……」
「キッカ! こいつの金を返してやれ!」

 男達はキッカを探す。
 キッカは表通りの方に向かってそろりと歩いていた。
 男達に呼び止められ、立ち止まる。

「あ、ああ……か、返すよ……ほらっ」

 キッカは金の入った布袋を路地に投げる。
 数枚の小銭がこぼれてころころと転がっていく。

 キッカは表通りに向かって走り出す。
 堰を切ったように男達も走り出す。

 俺はそんな彼らを1人ずつたおしていく。
 俺は悪魔に魂を売ることにしたのだ。

 もう――

 何も怖いものはない。

 最後の一人はキッカ。 
 俺はその小さな肩を掴む。
 すると彼はバランスを崩して路面に転がった。

「ひぃぃぃ――……」

 声にならない悲鳴を上げて、起き上がろうとしている。
 その体を押さえ込むようにして俺は馬乗りになる。

 恐怖により見開かれた二つの目が俺の顔を凝視している。

 そして、俺はナイフを振り上げた――
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