魂色物語

ガホウ

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第二章 魔法の衆と禁じられた書

第十六話 修行の成果のお披露目だ

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 魔法の修行を終えたおれたちは青の魂色の秘密を探るために仙郷の大図書館へと向かう準備を始めた。まずは里から出て行くことをエルメネル女王に伝えることにした。

「エルメネル女王、おれたちはこれから仙郷の大図書館に向かおうと思います」
「その話はネウィロスから既に聞いております。もう少しだけこの里にいてくれたらよかったのですが仕方ないですね。あなたの隠されし真実をどうか見つけてきてください」

 そう話すエルメネル女王はとても優しい表情をしていた。彼女からはまるで包み込まれるような安心感と日の光のような明るさを感じていた。女王の素質が何かは分からないがおれからしたらまさに民を率いていくのにふさわしい女王だと改めて思った。

「あなたのような人がサンアスリムの国を束ねてくれたら争いなんて無くなりそうなのに」

 おれの賛辞の言葉をエルメネル女王は否定した。

「それは違いますよディール。人間には人間の、エルフにはエルフの、他種族には他種族の民の特性を最も理解できる者がなるべきなのです。私のようなものが人間の世界で国を持ったら1年ともたずに侵攻されて国を失うでしょう」

 やっぱりエルフからは人間は領土をいたずらに拡げるだけの野蛮な種族だと思われているらしい。それもそうだエルフやドワーフは住む場所がそれぞれ決まっていてそこで国を興して暮らしている。故に争う必要が一切ないんだ。それと比べると人間は割とどこでも住めちゃうもんな。

「もう明日には出ようと思ってます」
「そうですか、旅の成功を祈っています」

 おれたちはエルメネル女王に一礼してから女王の間を出て行った。その日は宿屋でゆっくりしてから翌朝出発することにした。日がしっかり登ってからおれたちはツタの籠に乗って世界樹の根元へと降りて行った。

 おれたちが歩き出した矢先、目の前に見たことある人物がいた。あれは……エルリシアンだ。彼女がこちらにやって来るなりしゃべり始めた。

「私も仙郷の大図書館に行くわ」
「勝手に出て行くのは不味いんじゃない」

 レイの心配をよそにエルリシアンは話を続ける。

「そもそもエルフがいないとこの森を安全に抜けられないし、仮に抜けられたとしてもアルテザーンの土地の事何も知らないんだから簡単に命を落としちゃうわよ」
「でもなんでわざわざついて来てくれるんだ」
「私だって仙郷の大図書館に興味があるのよ。もっと色んな魔導書とか読んでみたいし、それに弟子の成長がどんなものか見ておかないと」

 目的地が同じなら話は早いしこれほど強力な旅の仲間を受け入れない理由がない。

「じゃあこれからよろしくな、エルリシアン」
「こちらこそ、よろしくね。それとエルリシアンじゃなくてエルって呼んで。親しい人にはそう呼ばれてるから」
「分かったよエル」

 おれたちはエルリシアン改めエルと共に仙郷の大図書館に向かうべくエルフの里を守る幻覚の森に再び足を踏み入れることにした。

 おれたちはエルの後ろについて行って安全なルートで進んでいた。それにしてもこの森はやっぱり不気味だ。常に周りから魔物の唸り声のようなものが聞こえてくるし、そんな魔物をデカい口を開けてむしゃむしゃと食べている食獣植物までいる。

 しばらく歩いているともう森を抜けた。おれたちが初めて来たときは何日もかかったうえで捕まってエルフの里についたのにエルフ専用のルートなら一日もかからずに抜けることが出来た。

 丘陵地帯を歩き続けていると草むらの中から魔物が出てきた。これも見たことない種類だ。魔物の姿を確認したエルが冷静に話す。

「戦闘の準備をした方がいいわよ。こいつはコープスディバウ。人間を好んで食べるモンスター」
「確かにあいつおれたちを食べたそうに見てるな。目がないけど」

 コープスディバウと呼ばれている魔物の体表は毒々しい紫色で丸っこい身体に足が二本生えている。頭からは触手のようなものが何本もうねうねとしているし顔面には歪な形の口しかなくて目のようなものが見当たらない。

「早速実戦の機会が来たわね。私は弓と魔法で援護するから前線は任せたわよ」
「言われなくてもやるって」

 おれたちはまず陣形を組んだ。奴から見て右側におれがいて左にはレイ、真正面に弓を構えたエルがいる。

「僕の魔法が使う時が来たね。ディール、行くよ!”マハティア”【筋力強化】」

 レイが魔法を唱えた瞬間、身体にあの時と同じ……いや、あの時以上の力が身体になだれ込んできた。これがレイの魔法の力か!

 おれがコープスディバウに近づくと奴は触手をふんだんに使っていろんな角度から叩きつけてきた。おれはバックラーでなんとか受ける。その間にレイが背後から突き刺すが大きなダメージにはならない。エルの方も弓矢を確実に命中させているが怯む様子はない。

 おれは何とかバックラーで触手の一つを振り払ってから剣で斬りかかる。おれの攻撃は触手に命中し二本落とすことに成功した。しかし、喜んでいるのも束の間別の触手がおれの腹めがけて突っ込んできた。

「ディール、危ない!”ディフア”【身体硬化】」

 おれは腹に直撃を受けて吹っ飛んでしまったが直前にレイが呪文を唱えてくれたおかげで重傷を負わずに済んだ。だけど全く痛くないって訳じゃない。なんなら結構痛い。

 倒れているおれにお構いなしにコープスディバウはこちらへ走ってくる。

「”フーラン”【突風】」

 エルの魔法がコープスディバウに当たったがかすり傷しかついていない。しかし、突進は何とか止まってくれた。おれは倒すための策を思いつき指示を出す。

「レイとエルは二人でこいつの片足を動けなくしてくれ」

 おれの作戦指示にエルは不服そうだ。そんなエルをレイが説得した。

「そんなことしてどうなるって言うのよ」
「頼むよエル。今はディールの指示に従って欲しいんだ」

 レイの真剣な眼差しを受けたエルは提案を聞き入れる。
 
「…………分かったわ」

 おれが再び引きつけている間にレイとエルは攻撃を片足に集中させている。

「思い出したわ。ディール、こいつの頭に色の違う場所があるんだけどそれが弱点よ」
「エル!おれが合図を出したタイミングでおれを風の魔法で浮かせられるか?」
「浮かせるのは無理だけど上方向に魔法を撃てば空中に吹っ飛ぶくらいは可能よ」

 どれぐらい吹っ飛ぶかはエル次第だがおれはそれで了承した。その後、レイが話す。

「足を落としたよ!」
 
 レイの言った通りコープスディバウは呻き声を上げながら無事なほうの足で膝をついた。

「今だ!」

「”ツイストフーラン”【捻じり突風】」

「ちょっと高くないか?弱点は……あれだな。くらえぇッ――――‼」

 エルの魔法がおれを空中に飛ばす。これだけ高ければ充分に奴の弱点が見える。あの緑色の体表部分に違いない。よく言えばつむじみたいだし悪く言えばハゲてるみたいだ。おれは落下しながらも狙いを定めて弱点の触手に突き刺した。その瞬間コープスディバウは悲鳴のような金切り声をあげてから倒れた。

「よっしゃ――!勝ったぞ」
「ディール、あなた魔法使ってないじゃない!」
「おれは使ってないけどレイの魔法は凄かったぞ」
「でしょ!僕の援護がなかったら今頃ディールはあの世行きだったよ」

「まあレイの魔法は及第点ね。一度に数種類かけることが出来るのが補助呪文のいいところなんだから。それとディールの作戦もあなた自身が危険すぎるわ」
「おれは勝って生きる策しか使わないから大丈夫だ」
「だといいんだけど」

 エルに厳しい評価をもらったがレイは気にせずにとても喜んでいた。おれは突き刺さった剣を抜いてから剣に付着した鮮血を布でふき取ってから滑らないようにコープスディバウから降りた。降りている最中にコープスディバウがもぞもぞと動いている感覚がした。

 まさか!おれが感づいた時には既に遅かった。コープスディバウは口から粘液のようなものをエルに向かって吐き出した。

「危ない!」
「きゃっ⁉」

 レイがエルをかばって代わりにコープスディバウの粘液を被ってしまった。おれはもう一度コープスディバウにしっかりと剣を突き刺してとどめを刺した。そして急いでレイの元へ駆け寄る。

「レイ、大丈夫か!」
「うぅ……」

「粘液に触れないで。それは強い毒性を持っているの。布で拭き取るか水で洗い流さないと」

 おれはエルに言われた通りに持っていた布で粘液を拭き取る。

「うぅ……グッ……うわぁあッ――――」

 レイが痛みで叫び出した。おれは目の前で親友が苦しんでいるのを目の当たりにして焦り始める。

「何か解毒剤はないのかよ!」
「コープスディバウの毒は特殊で治すには専用の薬を使うしかないの」

 おれはレイの身体を起こして肩を貸す。

「このままだとレイが死んじまう。どうすればいいんだ!」
「今からエルフの里に戻るのは無理だわ。ここから一番近い街になら薬があるはずだからそこに向かいましょう!」

 エルがレイの反対側の肩を担いでおれたちはレイを治療するために街へと向かうことにした。
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