この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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39.親父ってのはせめて結婚するまでは節度ある付き合いをして欲しいって思うもんなんだ。

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「‥僕、シークさんの事知りたいし、‥随分分かって来たって思ってたけど、‥全然わかってない‥」
 コリンがしょんぼりして、シークがちょっと固まっていたら、
「‥今はそんな話している場合ではない」
 ザッカがため息をついて、話を元に戻した。

 アンバーのプロフィールに視線を戻す。
「思った以上に、使える情報がないな‥」
 ナナフルも、ザッカに相槌を打つ。

 アンバーは、直接黒幕に会っていないし、黒幕がしようとしていること‥に加担しているわけでもなさそうだ。
 アンバーから得られる情報もないだろう。
 アンバーと黒幕に何の接点もないという可能性も否定できない。

「アンバーと‥俺達が追っている事件は関係があるだろうか」
 ザッカが腕組みをして、ちいさく唸る。
 考えたところで、分かることなんかあろうはずもない。
 アンバーは小さく頷き、姿勢を正して
「俺は‥何も聞かされてないし‥多分、ロングも何も知らない」
 言い切った。
 嘘ではないだろう。
 所詮、ただの「警備員がわり」だ。いや、警備員の監督か。
 アンバーは所詮、
「奴らが森の奥で何をしてたかは、俺は知らない。俺がやっていたことは、あの場所が他の人間に分からない様に結界を掛けてただけだ」
 と、アンバーが自分でいうように「それだけ」の役割でしかないのだろう。
 替えの聞くただの雇われ魔術士だ。
 その為に、「そういう便利な魔術士」を今まで彼らは育成して来たのだ。わざわざ、孤児を作って迄‥だ。
 否、冒険者で孤児というのがポイントかもしれない。
 どこの誰だって分かりにくいのがいい。
 冒険者が、クエストに失敗して死ぬことなんてよくあることだから。
「だけど、失敗したから、奴らは俺を始末しに来たか‥といわれても、それはどうだろうか‥って思う。俺は別に塞ぐ口もないから。あえて言うなら、この事件‥森での商人行方不明事件の犯人にする‥だろうが、俺は多分奴らにとって殺すのは惜しい人材だと思う」
 だから、今回牢屋に来たのは、俺を殺しに来た奴ではないだろう。
 と、アンバーが推測を口にした。
 ‥自分は殺すのに惜しい人材とか、自分でいうとか‥。
 自信満々~!
 って思うが、‥アンバーについては‥あながち間違いではない気もする。
 もし、‥彼らがアンバーに洗脳の魔法が掛かっていないって気付いていたら、そのことから「アンバーの魔力が自分たちの専属の洗脳魔術士を凌ぐ闇魔法の魔術士だ」って気付いたなら‥間違いなくそう思うだろう。
「ねえ」
 きょとんとした顔で、コリンが難しい顔しているアンバーとザッカの会話に入って来た。
「育成の為の、殺人、誘拐、監禁。そして、洗脳が黒幕の目的だったってことは? 」
 こてん、と首を傾げる。
 洗脳とか‥結構それだけでも大仕事だと思うけど。一体どれ程の大悪党を予想しているんだ。大悪党‥って凄い期待をして‥実はそうでもない小悪党、とか割とあることだ。
 ザッカが首を振って否定する。
「ないだろ、‥それなら、わざわざ一ところに籠って集中的に何かする必要は無いだろ? 後継者育成事業は、長期間かけてやっていく壮大な規模の事業(?)っぽいし。
 ‥でも、アンバーのお陰で、闇の魔術士の供給源が分かった。それは、礼を言う。ありがとう」
 あ、そか。確かに、結果がすぐ出るようなもんじゃないね。
 と納得するコリンにザッカは小さく頷くと、アンバーに向かって頭を下げた。
 アンバーは意外って顔を一瞬して、でも、
「どういたしまして? コリンは? コリンは俺にお礼言わないの? 」
 ふふ、とちょっと悪戯っぽい顔をコリンに向けた。
 お礼を言われたのが、慣れなくって照れ隠しって奴だったんだろう。
 揶揄いやすいコリンを振り向いた。
「え? なんで? 」
 コリンが眉を寄せる。
 ‥なんだ? お礼って。助けてあげたんだから、そこは‥僕には恩着せがましく「お礼は? 」は、ないんじゃない~?
 って不満げな顔だ。
 ‥ちょっと、セコイとは思うけど‥、アンバーに「ありがと」とか言いたくないし! 捕まった時の事、まだ怒ってるんだからな! 魔力封じの首輪とか、(即効切ったけど! )怒ってるんだからな!! セクハラまがいなこと言ったりしようとしたことも怒ってるんだからな!! そんなこと、わざわざ言いたくないけど、アンバーが「お礼言え」とか言うなら言っちゃうぞ!! 
 って奴だ。
 別に、慣れ合うのは構わない。だけど! あくまで「知り合いだが、別に友達じゃねえ」って感じのポジだからね!! アンバーなんて!!
 そこらへん、勘違いしないで!?
 む~って顔でアンバーを睨み付けてたら、ぶは! ってアンバーが噴き出した。
「シークの事で分かったことがあってよかっただろ? 」
 くく、って目の端に涙を薄っすら浮かべる程笑いながら言う。
 ‥シークさんの事? 
 あ、‥シークさんの両親の新情報‥。
「‥それは‥そうか。‥ありがとう」
 ‥うん‥まあ、それはね?
 アンバーは、くす、っと笑うと
「言葉じゃなくて、何か行動で表してほしいなあ。例えば、友達の印でちゅーするとか」
 無駄に色気たっぷりな視線(←コリン談)をコリンに向けた。
 色っぽい流し目って奴だ。
 ‥多少、悪の魅力補正が加わって、‥すっごいピンクじゃなくって、パープルな雰囲気。(←コリン談)
 ‥こいつ‥。
「‥お前、聞いてたのか‥」
 コリンがアンバーを睨み付ける。
 顔が赤いのは、‥恥ずかしいからか怒りからかなのか、自分でも分からない。
 と、
「‥なんだそりゃ? 」
 ザッカの周りの温度がぐぐっと下がる。
 ‥マズい。
「「なんでもないです」」
 コリンが思わず叫んだのが、シークと被る。
 くく、っとアンバーが楽し気な顔でザッカを見て
「いや、ザッカさん。コリンが「嬉しい時にはキスするもの」だから、「上手くいったらお祝いにチューしてください」ってシークに‥」
 って、暴露した。
 ひらり、とコリンの体当たりを躱しながら、だ。
 コリンの、「黙れや、この暗黒魔術士~! 」の口封じの体当たりは‥多分コンパスの差で間に合わなかった。身長差、結構あるからね。


「コリン、ホントにそんなこと言ったのか? そして、ホントにやったのか!? シーク! 」
 その後‥。本題そっちのけで、コリンとシークは現在、ザッカに説教を受けている。
 その光景に、ぽかんとしているのは、アンバーだ。アンバーからしてみたら「バカップルを揶揄ってやろ~」って思っただけだ。
 だけど、今目の前で繰り広げられてるのは、彼女の父親に、婚前交渉について説教されているカップル、だ。
 ナナフルも、「あらあら困ったわね」って顔してるが、別に止める様子もなさそうだ。
 でも、コリンは「ナナフルさんに助けを求めても無駄」ってことを、本能で悟った。
 代わりにコリンは、
 ‥アンバーめぇ‥!!
 と、剣呑な視線をアンバーに向けた。
「‥やりました。でも、言われたからやったんじゃないです。やりたかったから、やったんです。けっして、据え膳的に‥何となくしたわけじゃないです」
 シークは、あくまで真面目な顔で、素直にザッカの説教を受けている。
「ほう」
 ザッカの顔は、‥完璧「カワイイ娘に何しやがってんだよ」って親父の顔だ。
 ほぼ、シークを真正面に睨む据えている。
 アンバーは首を傾げる。
 ‥ん?
 ザッカって、コリンの保護者的な立場ってこと?
「シークが本気なら、親父として俺はシークの恋路を応援する。だが、まだ‥コリンの親父としては、認めたわけじゃないからな!! 」
 ‥で、更に、シークの親父??
「?? 」
 ザッカはシークの親父で、
 コリンの親父??
 つまり??
「‥シークとコリンは兄弟なのか? 」
「「違う!! 」」
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