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123.求心力はないけど、吸引力はある。
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「帰れ! 」
コリンが目を吊り上げてロナウに食って掛かる。
「どうどう‥」
宥めるのは‥
人のいいシークだ。
アンバーには多少嫉妬するシークだけど、ザッカに対しては「コリンの父親ポジション」って認識しているので、別に嫉妬したりしない。テイナーについては‥問題外みたいだ。
今も、父親ポジションのザッカに惚れたらしいテイナーを追い返そうとするコリンについて、「父親的に懐いてるザッカさんに恋慕するテイナーが面白くないんだな」って思うだけ。別に、「コリン‥ザッカさんのこと好きなの?! 」とか、「今まで自分の事好きって言ってたテイナーがザッカに乗り換えて面白くないのかな? 」とか思わない。
傍から見たら、いつも落ち着いて大人なシークが、心の中では「普通のひと」みたいに嫉妬したり、忖度したりしてる‥とは、コリンは気付いていないだろう。キラキラした目で「だって~」って、シークに拗ねた様な顔をして甘えている。
‥こういう顔も、俺としては面白くない。
アンバーは小さくため息をついた。
と、隣から、同じ様な小さなため息が聞こえる。
フタバだ。
フタバはコリンと共に「帰れば」側のようだ。椅子から立ち上がって無言で腕を組み、仁王立ちでロナウを見下ろしている。
表情は冷え冷えとしたクールビューティー‥って感じなんだけど、ナニブン、パーツが全部小さいから、子供が一生懸命大人を威嚇しているみたいに見えてる。
‥そういう感想、コリンに対しても良く持ちます。
ふふ、と心の中でこっそり笑った。
さて。
コリンにけんもほろろな言い方され、フタバに威圧されちゃってるロナウ本人は‥というと
ちっとも気にしている様子もなく、寧ろニコニコと
「コリン君。ヤキモチを焼く君の気持ちは嬉しいが、君は僕にとってもう過去の人だ。‥君の言葉は僕にもう届かない」
見当違いなことを言った。
少々、嬉しそうな表情が腹立たしい。
こいつ、‥思った以上にヤバいな!!
アンバーは苦笑いして‥半面ちょっと「そのメンタル見習いたい‥」なんて思った。
「なにわけわからん事言ってるんだ! リーダーの命令だ! 呼び出して悪かったな、帰れ! 」
顔を真っ赤にしてコリンは激怒している‥んだけど、いつも通り「怒っても迫力がない顔」だから、まるで図星を突かれて恥ずかしくって真っ赤になってる‥みたいに見えてる。
で、
更にロナウはニヤニヤだ。
あ~あ。コリンの悪い癖出ちゃってるよ。
思ったことすぐ口に出しちゃう。コリンって勉強はできるんだけど、こういうとこちょっと馬鹿っぽい。直した方がいい。
短絡的‥軽率というか‥、気が短いよね。
喧嘩もすぐ買っちゃうし、挑発にも乗っちゃう。
‥人間的には、単純で素直で可愛いいんだけどね。
リーダーには絶対ならない方がいいタイプ。成績はどうだか知らないけど、絶対チーム・コリンより、チーム・フタバの方がいいと思う‥。
「リーダー‥ああそうか。卒業したのになんでロナウなんかと一緒にいるんだろ? って一瞬思っちゃってたわよ‥。そうそう‥コリンは用事があったのよね。
共同体に」
フタバが椅子に座りながら呟いた。
フタバがクールダウンしたことによってコリンもちょっと落ち着いた様だ。
ふ~と長い息を吐くと、
「‥そうだった。すっかり忘れてた。そうだ。用事もないのにテイナー君を呼ぶとかありえなかった‥」
前髪を乱暴に一度大きくかきあげた。
コリンのサラサラの金茶の髪は、乱暴にかきあげても、変な癖がつくこともなく、指の間をサラサラと落ちて行った。
自分を落ち着かせるために、一度大きく息を吐き、前を睨み付ける。
誰かを威嚇しようとするのではない、睨み付けようとしているわけでもない。
ただ、前を睨み付ける。
そんなコリンの顔は、意図して睨み付けるよりも、ずっとすごみがある。
よく出来たビスクドールの様に‥否、氷の彫刻の様に‥冷たく美麗だった。
ぞくっとした。
‥あんまり美しくって‥。
傍に置きたかったなあ。‥まあ、流石に無理だって分かったから、これ以上深追いはしないけど‥。
ロナウが苦笑いして、大袈裟に肩をすくめて「やれやれ」ってポーズをする。
そしてすぐ表情をいつもの、へらっとした笑顔に戻すと、
「酷いなコリン君‥。いや、でも、君のツンデレなところはよく知ってるよ。
口は悪いけど、実は結構いい奴ってこともね。
今はもう過去のこととは言え、今までずっと見て来たからね」
ってわざとおどけた様な口調で言った。
でも、まあ‥言ったことは‥結構本心だ。
貴族として表情を表に出さないようにしないと‥って使命感っぽいものはある(※で、あのヘラヘラをテンプレにしている(ロナウ曰く)「周りを油断させてる(ドヤ顔)」らしい)が、ロナウにはそんなに表裏はない。
‥だからなんでそこで、嬉しそうな顔する。
別にコリンのアンタに対する態度、ツンデレの「ツン」の態度じゃないから! そこで、「まったく、素直じゃないな~」って顔するとか‥、やっぱアンタ、かなりオカシイよね!?
アンバーは苦笑いを通り越して、若干顔が引きつったのを感じた。
ロナウの「周りを油断させる為のヘラヘラ顔作戦」にまんまと騙されて「こいつヤバいやつ」って思っちゃってるアンバー‥ってことになるんだけど‥。
多分、ロナウは間違いなく普通に「こいつヤバいやつ」だ。
「いちいちに気色悪いことを言わないでくれ。僕に対する見当違いな憶測は止めてくれ。それと、今日も含めた過去のことも‥忘れてくれ」
コリン、またイライラし始めたな。‥でも、気持ちは分かる。これは仕方がないな。
‥テイナー、コリンに精神攻撃でもしてるのかな??
だとしたら、アンバーの(対コリンの)扇動攻撃より有効かも‥。
事務所のメンバーは一様にテイナーを感心した様な表情で見た。(だが褒めているわけでは勿論ない)
にしても、
「あはは、愛情じゃなくて、これから先は友情を育もうよ。‥なんせ、僕はコリン君にとって教会内で一番特別な存在なんだもんね」
‥そろそろやめてやってくれ。
「それは‥! もう‥忘れて欲しいかな‥っていうか」
コリンは‥怒りを通り越して、ちょっと具合悪くなってないか? 心なしか涙目だし‥
‥唇は赤でも青でもなく‥紫っぽくなってる。あんなに噛みしめたりしてたから‥。
気付かないもんかね~。
見てたら、当たり前に気付いただろう。
テイナーは、きっと見てない。
口では好き好き言ってても、‥きっとコリン本体を見てない。
優秀で鑑賞に堪えうる綺麗な「コリン」っていう存在と話してるだけ。
さっきも、ナナフルは「そうじゃないかな~」って思って見てたけど、どうやらそれは正解らしい。
「なにそれ‥ (笑)」
呆れすぎて笑ってしまう。
否、コリンに関心がない‥とかじゃなく、この子は‥きっと
この場にいる誰も見ていない。
それは、他人に興味がないってことなのか、‥平民に興味がないってことなのかは‥分かりかねるが。
‥何にしても、気が悪い奴。
「おい、コリン。俺にも出来るんじゃないのか? 影集め。俺ってほら、優秀だから」
テイナーにちょっと(わざと)馬鹿にした様な視線を寄こしてから、アンバーがコリンに笑いかけた。
いつも同様、否、いつも以上に綺麗に‥色っぽくだ。
お前になんか、顔だって実力だって負けない、って意思表示だ。
コリンが「受けて立つ」って顔で合図して‥頷く。
ちょっとほっとしたように見えたのは気のせいじゃないだろう。
貴族なんて‥身分なんて気にするなってフタバは言ってたけど、やっぱり気になるのは仕方が無い。
コリンは、やっぱりテイナーに遠慮してたんだ。‥なぜなら、テイナーは貴族だから。
あんなに辛辣なこと言ってはいたけど、一応はね‥っ程度は。
で、氷漬けしたいのを我慢して唇を噛みしめ血の気がなくなり、涙目になってた‥ってわけだ。
「え? ‥優秀とかいうんだったら、僕だって負けない位優秀だよ。闇魔法だって使えるし、魔術についてもアンバーより詳しい。‥でも、あれはそういう問題じゃ‥ない。あれは‥あれだけは、‥体質というしかないんだ。
というのもね。
魔法というのは、普通だったら、他人の魔法や他人を跳ね返すものなんだ。
例えば結界なんかが分かりやすいな。
他人の魔法を跳ね返して自分を守るよね。
だけど、テイナー君の魔法は「取り込む」魔法なんだ。
テイナー君は教会時代‥表向きは、雷属性の接近戦を得意とする戦闘型の魔術士だったんだけど、それはその特徴を上手く利用した戦闘スタイルだと言える。
テイナー君は剣を使うんだけど、相手との間合いをギリギリまで詰めて、確実に相手を刺すんだ。練習は、模擬の剣だから刺すっていうより突くって感じだったけどね。
あの頃は‥剣で刺すより、雷で感電させる方が速いのにな~って思ってたけど、‥今思えば、後々進化型騎士になりたいって考えてたから剣を武器に選んでたんだね。これでやっと‥「接近戦はショートソードの方がいいと思うのになんでレイピア選んだ? 」って疑問も解消された。
それはそうと‥
テイナー君の戦闘スタイルの話だったね‥。
間合いを詰めるスタイルって話‥なんだけど。‥あれ、テイナー君が詰めてるんじゃなくて、相手がテイナー君の間合いに吸い寄せられてるんだよ」
コリン、さっきとはうってかわってイキイキしてる‥。
にしても‥
教会時代の話、疑問に思いながら、テイナーには聞かなかったんだ‥。
友だち‥っていうか、一緒に戦うメンバーなら改良点があればアドバイス位しそうなもんだが‥?
アンバーたちが首を傾げていると、
「表向きは、雷属性の戦闘型魔術士っていったでしょ? 僕らと共同体として戦う時は、闇属性を使ってましたから、表向きの事は僕にとってどうでもで良かったんです」
‥成程。
あんまりにもコリンらしい答えに、皆大納得。
「相手が間合いに吸い寄せられる? 」
相手がやられにわざざわ向こうから来てくれるってこと?
「いいじゃん。わざわざ自分から行かないでも、相手から飛んで火にいる夏の虫してくれるとか、楽だよね」
アンバーは素直に感心したような表情をし、
自分から斬りこんで行くタイプのシークは「戦いにくいな‥(自分の)タイミングが取りにくい‥」と呟いた。
「そんな体質でもなきゃ、影集めなんて出来ない。
あれは、レア中のレア。それこそ、卵を割ったら黄身が三つって位のレア度なんだ」
‥なんだ、その例え。
つまり、めちゃレアだけど、めちゃどうでもいいってこと?
にしても‥テイナーって、全然求心力はないけど、(敵だけ)吸引体質か~。
‥敵を呼んじゃうとか‥そんな体質いらね~。
コリンが目を吊り上げてロナウに食って掛かる。
「どうどう‥」
宥めるのは‥
人のいいシークだ。
アンバーには多少嫉妬するシークだけど、ザッカに対しては「コリンの父親ポジション」って認識しているので、別に嫉妬したりしない。テイナーについては‥問題外みたいだ。
今も、父親ポジションのザッカに惚れたらしいテイナーを追い返そうとするコリンについて、「父親的に懐いてるザッカさんに恋慕するテイナーが面白くないんだな」って思うだけ。別に、「コリン‥ザッカさんのこと好きなの?! 」とか、「今まで自分の事好きって言ってたテイナーがザッカに乗り換えて面白くないのかな? 」とか思わない。
傍から見たら、いつも落ち着いて大人なシークが、心の中では「普通のひと」みたいに嫉妬したり、忖度したりしてる‥とは、コリンは気付いていないだろう。キラキラした目で「だって~」って、シークに拗ねた様な顔をして甘えている。
‥こういう顔も、俺としては面白くない。
アンバーは小さくため息をついた。
と、隣から、同じ様な小さなため息が聞こえる。
フタバだ。
フタバはコリンと共に「帰れば」側のようだ。椅子から立ち上がって無言で腕を組み、仁王立ちでロナウを見下ろしている。
表情は冷え冷えとしたクールビューティー‥って感じなんだけど、ナニブン、パーツが全部小さいから、子供が一生懸命大人を威嚇しているみたいに見えてる。
‥そういう感想、コリンに対しても良く持ちます。
ふふ、と心の中でこっそり笑った。
さて。
コリンにけんもほろろな言い方され、フタバに威圧されちゃってるロナウ本人は‥というと
ちっとも気にしている様子もなく、寧ろニコニコと
「コリン君。ヤキモチを焼く君の気持ちは嬉しいが、君は僕にとってもう過去の人だ。‥君の言葉は僕にもう届かない」
見当違いなことを言った。
少々、嬉しそうな表情が腹立たしい。
こいつ、‥思った以上にヤバいな!!
アンバーは苦笑いして‥半面ちょっと「そのメンタル見習いたい‥」なんて思った。
「なにわけわからん事言ってるんだ! リーダーの命令だ! 呼び出して悪かったな、帰れ! 」
顔を真っ赤にしてコリンは激怒している‥んだけど、いつも通り「怒っても迫力がない顔」だから、まるで図星を突かれて恥ずかしくって真っ赤になってる‥みたいに見えてる。
で、
更にロナウはニヤニヤだ。
あ~あ。コリンの悪い癖出ちゃってるよ。
思ったことすぐ口に出しちゃう。コリンって勉強はできるんだけど、こういうとこちょっと馬鹿っぽい。直した方がいい。
短絡的‥軽率というか‥、気が短いよね。
喧嘩もすぐ買っちゃうし、挑発にも乗っちゃう。
‥人間的には、単純で素直で可愛いいんだけどね。
リーダーには絶対ならない方がいいタイプ。成績はどうだか知らないけど、絶対チーム・コリンより、チーム・フタバの方がいいと思う‥。
「リーダー‥ああそうか。卒業したのになんでロナウなんかと一緒にいるんだろ? って一瞬思っちゃってたわよ‥。そうそう‥コリンは用事があったのよね。
共同体に」
フタバが椅子に座りながら呟いた。
フタバがクールダウンしたことによってコリンもちょっと落ち着いた様だ。
ふ~と長い息を吐くと、
「‥そうだった。すっかり忘れてた。そうだ。用事もないのにテイナー君を呼ぶとかありえなかった‥」
前髪を乱暴に一度大きくかきあげた。
コリンのサラサラの金茶の髪は、乱暴にかきあげても、変な癖がつくこともなく、指の間をサラサラと落ちて行った。
自分を落ち着かせるために、一度大きく息を吐き、前を睨み付ける。
誰かを威嚇しようとするのではない、睨み付けようとしているわけでもない。
ただ、前を睨み付ける。
そんなコリンの顔は、意図して睨み付けるよりも、ずっとすごみがある。
よく出来たビスクドールの様に‥否、氷の彫刻の様に‥冷たく美麗だった。
ぞくっとした。
‥あんまり美しくって‥。
傍に置きたかったなあ。‥まあ、流石に無理だって分かったから、これ以上深追いはしないけど‥。
ロナウが苦笑いして、大袈裟に肩をすくめて「やれやれ」ってポーズをする。
そしてすぐ表情をいつもの、へらっとした笑顔に戻すと、
「酷いなコリン君‥。いや、でも、君のツンデレなところはよく知ってるよ。
口は悪いけど、実は結構いい奴ってこともね。
今はもう過去のこととは言え、今までずっと見て来たからね」
ってわざとおどけた様な口調で言った。
でも、まあ‥言ったことは‥結構本心だ。
貴族として表情を表に出さないようにしないと‥って使命感っぽいものはある(※で、あのヘラヘラをテンプレにしている(ロナウ曰く)「周りを油断させてる(ドヤ顔)」らしい)が、ロナウにはそんなに表裏はない。
‥だからなんでそこで、嬉しそうな顔する。
別にコリンのアンタに対する態度、ツンデレの「ツン」の態度じゃないから! そこで、「まったく、素直じゃないな~」って顔するとか‥、やっぱアンタ、かなりオカシイよね!?
アンバーは苦笑いを通り越して、若干顔が引きつったのを感じた。
ロナウの「周りを油断させる為のヘラヘラ顔作戦」にまんまと騙されて「こいつヤバいやつ」って思っちゃってるアンバー‥ってことになるんだけど‥。
多分、ロナウは間違いなく普通に「こいつヤバいやつ」だ。
「いちいちに気色悪いことを言わないでくれ。僕に対する見当違いな憶測は止めてくれ。それと、今日も含めた過去のことも‥忘れてくれ」
コリン、またイライラし始めたな。‥でも、気持ちは分かる。これは仕方がないな。
‥テイナー、コリンに精神攻撃でもしてるのかな??
だとしたら、アンバーの(対コリンの)扇動攻撃より有効かも‥。
事務所のメンバーは一様にテイナーを感心した様な表情で見た。(だが褒めているわけでは勿論ない)
にしても、
「あはは、愛情じゃなくて、これから先は友情を育もうよ。‥なんせ、僕はコリン君にとって教会内で一番特別な存在なんだもんね」
‥そろそろやめてやってくれ。
「それは‥! もう‥忘れて欲しいかな‥っていうか」
コリンは‥怒りを通り越して、ちょっと具合悪くなってないか? 心なしか涙目だし‥
‥唇は赤でも青でもなく‥紫っぽくなってる。あんなに噛みしめたりしてたから‥。
気付かないもんかね~。
見てたら、当たり前に気付いただろう。
テイナーは、きっと見てない。
口では好き好き言ってても、‥きっとコリン本体を見てない。
優秀で鑑賞に堪えうる綺麗な「コリン」っていう存在と話してるだけ。
さっきも、ナナフルは「そうじゃないかな~」って思って見てたけど、どうやらそれは正解らしい。
「なにそれ‥ (笑)」
呆れすぎて笑ってしまう。
否、コリンに関心がない‥とかじゃなく、この子は‥きっと
この場にいる誰も見ていない。
それは、他人に興味がないってことなのか、‥平民に興味がないってことなのかは‥分かりかねるが。
‥何にしても、気が悪い奴。
「おい、コリン。俺にも出来るんじゃないのか? 影集め。俺ってほら、優秀だから」
テイナーにちょっと(わざと)馬鹿にした様な視線を寄こしてから、アンバーがコリンに笑いかけた。
いつも同様、否、いつも以上に綺麗に‥色っぽくだ。
お前になんか、顔だって実力だって負けない、って意思表示だ。
コリンが「受けて立つ」って顔で合図して‥頷く。
ちょっとほっとしたように見えたのは気のせいじゃないだろう。
貴族なんて‥身分なんて気にするなってフタバは言ってたけど、やっぱり気になるのは仕方が無い。
コリンは、やっぱりテイナーに遠慮してたんだ。‥なぜなら、テイナーは貴族だから。
あんなに辛辣なこと言ってはいたけど、一応はね‥っ程度は。
で、氷漬けしたいのを我慢して唇を噛みしめ血の気がなくなり、涙目になってた‥ってわけだ。
「え? ‥優秀とかいうんだったら、僕だって負けない位優秀だよ。闇魔法だって使えるし、魔術についてもアンバーより詳しい。‥でも、あれはそういう問題じゃ‥ない。あれは‥あれだけは、‥体質というしかないんだ。
というのもね。
魔法というのは、普通だったら、他人の魔法や他人を跳ね返すものなんだ。
例えば結界なんかが分かりやすいな。
他人の魔法を跳ね返して自分を守るよね。
だけど、テイナー君の魔法は「取り込む」魔法なんだ。
テイナー君は教会時代‥表向きは、雷属性の接近戦を得意とする戦闘型の魔術士だったんだけど、それはその特徴を上手く利用した戦闘スタイルだと言える。
テイナー君は剣を使うんだけど、相手との間合いをギリギリまで詰めて、確実に相手を刺すんだ。練習は、模擬の剣だから刺すっていうより突くって感じだったけどね。
あの頃は‥剣で刺すより、雷で感電させる方が速いのにな~って思ってたけど、‥今思えば、後々進化型騎士になりたいって考えてたから剣を武器に選んでたんだね。これでやっと‥「接近戦はショートソードの方がいいと思うのになんでレイピア選んだ? 」って疑問も解消された。
それはそうと‥
テイナー君の戦闘スタイルの話だったね‥。
間合いを詰めるスタイルって話‥なんだけど。‥あれ、テイナー君が詰めてるんじゃなくて、相手がテイナー君の間合いに吸い寄せられてるんだよ」
コリン、さっきとはうってかわってイキイキしてる‥。
にしても‥
教会時代の話、疑問に思いながら、テイナーには聞かなかったんだ‥。
友だち‥っていうか、一緒に戦うメンバーなら改良点があればアドバイス位しそうなもんだが‥?
アンバーたちが首を傾げていると、
「表向きは、雷属性の戦闘型魔術士っていったでしょ? 僕らと共同体として戦う時は、闇属性を使ってましたから、表向きの事は僕にとってどうでもで良かったんです」
‥成程。
あんまりにもコリンらしい答えに、皆大納得。
「相手が間合いに吸い寄せられる? 」
相手がやられにわざざわ向こうから来てくれるってこと?
「いいじゃん。わざわざ自分から行かないでも、相手から飛んで火にいる夏の虫してくれるとか、楽だよね」
アンバーは素直に感心したような表情をし、
自分から斬りこんで行くタイプのシークは「戦いにくいな‥(自分の)タイミングが取りにくい‥」と呟いた。
「そんな体質でもなきゃ、影集めなんて出来ない。
あれは、レア中のレア。それこそ、卵を割ったら黄身が三つって位のレア度なんだ」
‥なんだ、その例え。
つまり、めちゃレアだけど、めちゃどうでもいいってこと?
にしても‥テイナーって、全然求心力はないけど、(敵だけ)吸引体質か~。
‥敵を呼んじゃうとか‥そんな体質いらね~。
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