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序章 リバーシとミチル
3.リバーシ
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『リバーシ』
自分たちみたいな「睡眠障害者(?)」のことをそう呼ぶって教えてくれたのは、ラルシュローレ(長いから、俺はすぐに「ラルシュ」って呼んでいた)だった。
この国の名前もラルシュに聞いた。
だけど、‥何故か自分たち「よそ者」にはそれが固有名詞(ことば)として聞こえないんだ。何度聞きなおしても、だ。
まるで、靄がかかったように? 急に耳をふさがれた様に‥その言葉だけが聞こえない。
だけど、名前がわからないと不便だ‥っていうか、仮でいいから名前を決めないと不便だ‥って俺が言ったら、「友達」は
「ミチルの好きなように呼んだらいいよ」
って言ってくれた。
どうやら、他所から来る者はみんなそう言うそうなんだ。
どうしても、この国の「名前だけが」聞き取れないって。
不思議だけど、そもそもこの国の存在自体が不思議だから今更ね‥。とも思ったり。
だからそれ以上気にするのは止めにした。
「好きなように‥ねえ‥」
(自分たちにとって)夜の間だけ来る国だから『よるの国』って呼んでいい? って聞いたら、「友達」は微笑んで頷いた。
「いいね」
って。
あ、(今更だけど‥)ミチルっていうのは、俺の名前だよ。
元々漢字はあるんだけど、ここに来た時になくなった。
発音すれば、漢字もカタカナもないだろ? って?
‥そうじゃないんだよね。
確かにそうなんだけど‥そういうのじゃなくって‥
例えば‥外国人相手にすまして「My name is Michilu」って言ってる時って、日本語の「みちる」じゃなくて、ローマ字の「Michilu」って言ってるって意識するじゃん? あんな感じで、ここに来た瞬間「漢字のみちる」は俺の中からすとーんって消え去っちゃったんだ。
意識してっていうんじゃなくて、まるでそれが当たり前で、元からなかったかの様に!
名前だけじゃない。
ここでの俺の姿はまるで純粋なる日本人じゃないみたいな髪の色と目の色をしてるんだ。
緑がかった金茶の髪と、緑の目。
緑っていっても、エメラルドみたいな濃い色じゃない。もっと薄い、もっと黄みがかった色だ。
それどころか、こっちに来て以来、朝になって元の国に戻っても(※ 朝になったら元の世界に戻るんだ。‥起きるとは違うよ。身体に帰って来るんだ)、髪と目の色が若干変わったままなんだ。あっちでの色よりは落ち着いてるんだけど、今までの色‥茶目・茶色の髪とは確実に変わってたんだ。
その色を何と表現すればいいのか‥なんてわからなかったし、表現しようとしたことも無かったんだけど、いつだったか、俺のことを好きって言った女の子が
「ミチル君のオリーブ色の目、綺麗ね」
って言ったから、ネットで調べたんだ。
オリーブ色。
‥成程、そういう色だな。
って納得した。
以上、回想終わり。
俺は、さっきのようなことを‥かいつまんで(※ かいつまんでにもほどがあるような雑い説明で)目の前の「男」に話した。男は、不審そうな‥なんとも言えないような表情をしていたが、聞いてはいる様だ。
まあ、信じろって言われても無理なような荒唐無稽な話だよね。でも、この子には多分共感してもらえるトコロもある‥って思うんだよね‥。
君も、僕と同じリバーシだから。
「ああ、そうそう遅くなったね。俺の名前は楢橋 ミチル。
地球生れ地球育ちのごくごく普通の日本人。
就職してから始めた一人暮らしも二年目になってそろそろ慣れて来たかな~って感じの普通のサラリーマン。遊び友達は男女ともそこそこいるけど、彼女はいない。
別に「自分の時間が大事だから、彼女とかまだいいかな~」とか言う理由じゃなく、‥でも、確実に「自分の時間」の関係で、彼女はつくってない。
だって、俺は12時から5時まできっちり「寝て」なきゃダメだから‥夜通し遊んでくれなきゃヤダ、って子とは付き合えない。
そういう子じゃ無くっても‥
いつもじゃなくても、時には、一晩中起きててほしいって言われても‥そればっかりはね。
大人として付き合うって、‥そういうことも含めて、じゃない? だから、なかなかねえ。君もそうでしょう?え? 違う。そっか。まあ、‥人それぞれだよね? 」
AM5時01分からAM00時00分(夜中の12時)までは地球にいて、AM00時01分(夜中12時)から翌朝のAM5時までは「よるの国」にいる。
「あ。‥時間だ」
「わぁ‥!! ちょっと‥! 」
自分たちみたいな「睡眠障害者(?)」のことをそう呼ぶって教えてくれたのは、ラルシュローレ(長いから、俺はすぐに「ラルシュ」って呼んでいた)だった。
この国の名前もラルシュに聞いた。
だけど、‥何故か自分たち「よそ者」にはそれが固有名詞(ことば)として聞こえないんだ。何度聞きなおしても、だ。
まるで、靄がかかったように? 急に耳をふさがれた様に‥その言葉だけが聞こえない。
だけど、名前がわからないと不便だ‥っていうか、仮でいいから名前を決めないと不便だ‥って俺が言ったら、「友達」は
「ミチルの好きなように呼んだらいいよ」
って言ってくれた。
どうやら、他所から来る者はみんなそう言うそうなんだ。
どうしても、この国の「名前だけが」聞き取れないって。
不思議だけど、そもそもこの国の存在自体が不思議だから今更ね‥。とも思ったり。
だからそれ以上気にするのは止めにした。
「好きなように‥ねえ‥」
(自分たちにとって)夜の間だけ来る国だから『よるの国』って呼んでいい? って聞いたら、「友達」は微笑んで頷いた。
「いいね」
って。
あ、(今更だけど‥)ミチルっていうのは、俺の名前だよ。
元々漢字はあるんだけど、ここに来た時になくなった。
発音すれば、漢字もカタカナもないだろ? って?
‥そうじゃないんだよね。
確かにそうなんだけど‥そういうのじゃなくって‥
例えば‥外国人相手にすまして「My name is Michilu」って言ってる時って、日本語の「みちる」じゃなくて、ローマ字の「Michilu」って言ってるって意識するじゃん? あんな感じで、ここに来た瞬間「漢字のみちる」は俺の中からすとーんって消え去っちゃったんだ。
意識してっていうんじゃなくて、まるでそれが当たり前で、元からなかったかの様に!
名前だけじゃない。
ここでの俺の姿はまるで純粋なる日本人じゃないみたいな髪の色と目の色をしてるんだ。
緑がかった金茶の髪と、緑の目。
緑っていっても、エメラルドみたいな濃い色じゃない。もっと薄い、もっと黄みがかった色だ。
それどころか、こっちに来て以来、朝になって元の国に戻っても(※ 朝になったら元の世界に戻るんだ。‥起きるとは違うよ。身体に帰って来るんだ)、髪と目の色が若干変わったままなんだ。あっちでの色よりは落ち着いてるんだけど、今までの色‥茶目・茶色の髪とは確実に変わってたんだ。
その色を何と表現すればいいのか‥なんてわからなかったし、表現しようとしたことも無かったんだけど、いつだったか、俺のことを好きって言った女の子が
「ミチル君のオリーブ色の目、綺麗ね」
って言ったから、ネットで調べたんだ。
オリーブ色。
‥成程、そういう色だな。
って納得した。
以上、回想終わり。
俺は、さっきのようなことを‥かいつまんで(※ かいつまんでにもほどがあるような雑い説明で)目の前の「男」に話した。男は、不審そうな‥なんとも言えないような表情をしていたが、聞いてはいる様だ。
まあ、信じろって言われても無理なような荒唐無稽な話だよね。でも、この子には多分共感してもらえるトコロもある‥って思うんだよね‥。
君も、僕と同じリバーシだから。
「ああ、そうそう遅くなったね。俺の名前は楢橋 ミチル。
地球生れ地球育ちのごくごく普通の日本人。
就職してから始めた一人暮らしも二年目になってそろそろ慣れて来たかな~って感じの普通のサラリーマン。遊び友達は男女ともそこそこいるけど、彼女はいない。
別に「自分の時間が大事だから、彼女とかまだいいかな~」とか言う理由じゃなく、‥でも、確実に「自分の時間」の関係で、彼女はつくってない。
だって、俺は12時から5時まできっちり「寝て」なきゃダメだから‥夜通し遊んでくれなきゃヤダ、って子とは付き合えない。
そういう子じゃ無くっても‥
いつもじゃなくても、時には、一晩中起きててほしいって言われても‥そればっかりはね。
大人として付き合うって、‥そういうことも含めて、じゃない? だから、なかなかねえ。君もそうでしょう?え? 違う。そっか。まあ、‥人それぞれだよね? 」
AM5時01分からAM00時00分(夜中の12時)までは地球にいて、AM00時01分(夜中12時)から翌朝のAM5時までは「よるの国」にいる。
「あ。‥時間だ」
「わぁ‥!! ちょっと‥! 」
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