リバーシ!

文月

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一章 スリーピングビューティー

1.眠る姫に一目ぼれした‥って、ちょっと白雪姫みたい。

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 その子は、お城では「スリーピングビューティー」って呼ばれてるんだって。
 「スリーピングビューティー」つまり眠り姫ね。
 眠りの森で眠りながら、自分を目覚めさせることが出来る運命の王子様を待ってるっていう絶世の美女‥だっけ?
 まあよく話を覚えてないけど‥眠る美人の話だったよね。
 その御伽噺は‥地球人から持ってこられたんだろうかここでも知られてて、その子の別名にされてた。
 それっ位綺麗だから。
 ずっと眠ってるのに、ずっと美しいって‥もう、魔法以外の何ものでもないよね。
 そんな‥起きてるときのことを知らないお姫様に一目惚れするなんて‥ちょっと、「白雪姫」っていう御伽噺の王子様みたいじゃない?
 あの王子は‥
 眠ってる姫じゃなくって、「死んでる」姫に一目惚れ‥だったけどね。(ちょっと変態だよね)

 俺はね。
「死んでても(眠ってても)いい! 」
 なんて思わなかったよ。
 いつか、目を覚ましたお姫様を見たいって思ってた。
 運命の誰かが姫をきっと目覚めさせてくれる‥って。
 俺のキスで‥とかそんな「ドラマチック」で「ロマンチック」なことは‥でも考えたことなかったなあ。
 王子なら「本物」がいるわけだし、‥そもそも「スリーピングビューティー」はその王子‥ラルシュの婚約者なわけだしさ。

 そ! 最初っからかなわぬ恋ってやつだ。

 あ、別にラルシュが眠るお姫様に一目ぼれして婚約者にした‥とかじゃないよ。お姫様は‥そんな風には全然見えないけど、傾国級の魔力の持ち主で「世界の災厄」って呼ばれてて‥そのお目付け役? に第二王子のラルシュが抜擢された‥ってわけ。

 そんな力がある化け物は城で監視してないと危ない!

 ってことらしい。
 だから、今の眠ったまま‥って状態は別に城の誰かが仕組んだこと‥じゃないらしいけど、城の人たちにとっては「悪いことでもない」って認識されてるらしい。
 だから、婚約者であるお姫さまが目覚めなくても、特に誰も目覚めさせる努力とかしないし、誰も文句を言わない。(王子だったら「跡継ぎを‥」とか普通ならいうんだろうけど、そういうのもないってことだね)
ただ、大事に寝かされてるだけ。

 ‥かわいそうな話だよね。

 ラルシュは
「起きてくれたらな、って思う。‥力が暴走したらっていうけど‥何も起こらないのに暴走することってないと思うし。‥そのときは、私が支えられたら‥って思う」
 って言ってた。
 ラルシュも‥かわいそうだよな。
 だって、国の犠牲になってるってことだよね? 
 だけど、ラルシュが文句を言ってるのを聞いたことがない。


 ‥別に、虫も殺さぬ成人君主ってわけじゃない。
 小さい頃は一緒にいたずらもした。
 リバーシじゃないラルシュはやっぱり一日中起きてることなんてできないから、夜俺と遊ぶために昼間に寝ておかないといけない。だから、
「昼間の勉強、ずる休みしちゃった」
 っていうこともあった。
 へへって笑った顔なんて、只の「近所のガキ」と変わんないって思った。
 優しいし上品だけど、変に頑固なところもある‥普通の子供。
 遊び疲れたらおばあさんの家でついウトウトしちゃう‥普通の子供。

 そう。
 ラルシュはリバーシじゃないんだ。
 ラルシュは‥
 魔法使いなんだ。(魔法使い! )
 
 そう、夜の国には魔法があるんだ!!

 ‥今更? って思う?
 ‥でも、今まで俺の話に魔法って言葉は出て来てなかったって思うよ? (あ。スリーピングビューティーの保存状態って話の時「魔法みたい」っていったけど、それはモノの例えだからね)だってさ、魔法があるっていっても、全員使えるわけでもないし、そう生活に魔法が浸透しているってわけじゃないんだから。
 ‥そうだな。
 専門知識って感覚が近いかな。
 魔法使いは、たまたま専門知識を持って生れて来た「選ばれた人」って感じで、その就職先も城というか‥「国」以外ないって感じなんだって。
 つまり国家公務員って感じかな。
 あと、国王一家は次期国王以外、魔法使いかリバーシしか生まれなくって、ラルシュは次男らしいんだけど、三男がリバーシだって言ってた。
 ‥じゃああの時俺に会いに来たのは三男でもおかしくなかったんじゃ‥? って思ったけど、三男はそういう性格でもないんだって。
 人見知りするってことかな? それとも、下々のものとは付き合いません‥ってタイプかな? (王子様だしね)会ったことないからわかんないや。

 長男は、次期国王だから、リバーシでも魔法使いでもないらしい。(つまり、元国王もそう)
 でも、普通の人間ってわけではもちろんない。
 リバーシと魔法使いのいいとこどり‥って言ってたけど、よくわかんない。だけど、別に俺はこの国の人間じゃないから、どうでもいい。

 この国は自分の国じゃない。そんなの勿論分かってるんだけど、ラルシュから‥「そういう態度」取られて、もやもやした‥ってことが過去にあった。

 たしか、俺が「結局リバーシって何なの? 」ってラルシュに聞いた時だ‥。
 俺もラルシュもまだ10歳になったかならない時だったと思う。

「二つの国で生活をするから「リバーシ」なの? 」
 って俺が聞いたら、ラルシュが首を傾げて、
「実はね、私もよくわからないんだ」
 って恥ずかしそうな顔をした。
「この国(俺の言うところの「よるの国」だ)で生れたリバーシは、別の国との二重生活はしない。だから、二重生活をするからリバーシっていうわけではないのだと思う。‥でも、リバーシしか別の世界に留学やら移住出来ないから、もしかしたらそれが元々の名前の由来なのかもしれないね」
 って
 何でも知ってるラルシュが恥ずかしそうに「わからない」って言ったもんだから、「こいつにも分からないことあるんだ」ってあの頃の自分はちょっと嬉しくなったことを覚えてる。
 でも、なんだか違和感を感じたんだ。
 なにか‥隠されてる様な‥誤魔化されたような感覚。よそ者だからって隠すような‥「そういう態度」

 ああいう違和感って結構、頭の中にいつまでも残るもんなんだよな‥。
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