リバーシ!

文月

文字の大きさ
7 / 248
二章 別に生活に支障を感じなかった特異なリバーシ

2.ヤバい人に捕まった。(side 聖)

しおりを挟む
 ‥‥‥‥。
「‥‥‥」
 俺は、疲れの残る頭を無理やり覚醒させて、周りを確認した。
 身体を起こそうと思ったが、出来ない。
 風邪で熱が高い時の様な、倦怠感。意識もぼうっとしている。
 それでも、何とか目線を周囲に漂わせると、部屋の様子が分かって来た。
 俺の六畳半の自室じゃない。
 シングルベッドが二つ並んだ無機質な部屋。
 もう一つのベッドに座っていた男が俺に気付いて顔を覗き込んだ。
「あ、起きた? 」

 ‥誰だ? 
 頭を起こすと‥昨日の事をぼんやりと‥思い出した。
 そうだ‥確か、厨二な超能力者に拉致されて‥「時間がない」って言って‥ビジネスホテルに泊まったんだ。

 ‥なんだ? 時間がないって。
 
 拉致られて‥気が付いたら朝で、俺はベッドで眠ってた‥って考えたら凄いやばい状態だて。
 女の子なら‥
 だけど、俺は幸いなことに男で、拉致った厨二も男だった。(更に持てそうなイケメンだった)
 彼女はいない‥とか言ってたから、きっと恋愛対象も女の子なんだろう。
 安心だ(多分)
 
 きっと、めちゃ眠かった‥とか、めちゃトイレ行きたかった‥とかなんだろう。
 で、時間がない。
 うん、きっとそうだ。
 ぐるぐる考えていたらさっき俺に声をかけてきた奴‥きっと厨二な男‥と目が合った。
 相変わらず顔がいい。
 心配そうな顔。
 オリーブの瞳と、アッシュがかったオリーブの髪。
 ‥確か、ミチルだ。

 と‥一人じゃない‥!?
 やっぱりミチルは誘拐犯で、‥もう一人は共犯者的な奴か!?
 がばっと起き上がると、共犯者の男と目が合った。
 男が、ふわっと微笑む
「初めまして、だね」

 ひいぃぃい! 俺は貧乏だし、身代金とか払えないし! 臓器売買とか!? なんで俺!? 俺、なにかそういうやばい奴に目を付けられるようなことした!? 。

 きっと俺が真っ青(もしかしたら、真っ青通り越して白かったかもしれない)な顔してたからだろう、共犯者は俺を気遣って「大丈夫ですか!? 」って声をかけて来た。
 ‥いい人なのかな? ってか、いい人は誘拐とかしませんけどね‥。
「おい、‥お前、ちょっと位容赦しろよ」
 そんな俺の戸惑いを無視するように、共犯者はミチルに対して怒りを露わにしている。
 ‥仲間割れ? なんか計画と違うだろ‥的な?
 きっと、段取りの問題とか‥あったんだろう。ミチル、急遽ここに連れて来たりとか、行き当たりばったりっぽかったし。

 多分あれだ。
「誰かに見られただろ!? 」
 とかだ。
 ‥ダメだ、消される。
 俺、何もしてないのに‥意味も分からず消される‥。

 そんな‥ガクブルな俺を無視するように二人のこそこそ話(流石に俺を殺す相談は(← 多分そうだろう)小声だった)は続いている。
「ごめんごめん。俺がダウンしてる間に逃げられたらシャレになんないから、朝まで眠ってもらおうとしただけなんだけど、‥焦ったら、思った以上に強力な術をかけちゃった」
 ‥いや、それは違う。
 ただ、俺は‥昔から12時になったらゼンマイが切れたみたいに寝ちゃうんだ。
 ‥あんたに「術を掛けられた」わけじゃない。(術って‥(笑)どこまで厨二なんだ!! )

「かけちゃったじゃないだろ。何か精神に異常がでたらどうするんだよ。ただでさえ、こんな忌々しい魔道具付けられてるんだから‥」
 おいおい、共犯者もヤバい人?? そこは「術じゃないだろ!! 」って突っ込むとこじゃね?? www
 ってか‥
 ‥魔道具。
 コイツもそれを言うのか!!
 ‥イケメンだのに残念だ‥。
 (よく見ると、共犯者もイケメンだった。ミチルがさわやか系イケメンなら、こっちは癒し系‥ロイヤル系イケメンって奴? け、どいつもこいつも‥)

 で、その女の子にモテモテそうな二人組の誘拐犯が俺に何の用だっていうんだ?!

「取れそうか? 」
「‥分からない。かなり強いね‥。でも、やる。やらないと、彼女は‥もうそろそろヤバい」
 ‥ヤバい。
 ええと‥、間違えじゃなかったら、さっきからこの人たちが言ってるのは、このブレスレットで、このブレスレットが「強力な魔道具(笑)」で、これを取らないと‥
 彼女がヤバい?
 だれ、彼女。
 ‥もしかして‥
 これを誰かのものと勘違いしてます? その「彼女」のものを俺が取った‥って思ってます?!

 冗談じゃない!!

「ちょっと! さっきからなんなんですか! 説明してくださいよ! それとこれは俺のもので‥もとから! 俺のもので誰かのものを取ったとかもらった‥とかじゃないですから! 
 そもそも、あんたたち誰なんです!? ああ、あんたは聞きましたね。ミチルさんでしたっけ!? だけど俺は名前とか聞いてるんじゃなくって、あんたが何者で、俺に何の用事があって声を掛けたのか、から教えてくれ。
 昨日あんた言ってたよね! 俺はあんたのこと知らないだろうけど、自分は知ってる‥的なこと。あれはどういうことなんだ!? 」
 俺は‥
 切れた。
 普段はこんなにしゃべることってホントにないんだけど‥
 今日はしゃべるぞ!!

「俺は‥
 あんたとの関係性でいうと‥
 あんたと同じリバーシで、
 こいつ(←共犯者を指さす)は、あんたと同郷のモンだ」
 
 は?
 リバーシ? 何それ。
「あんたさ。夜、寝ないでしょ? 正確にいうと‥夢とか見ないでしょ? 24時間365日ずっと意識がはっきりしてるよね? だけど、ここでの肉体は12時になったらきっかり動かなくなるでしょ? その間意識は‥俺の場合は夜の世界に行ってるんだけど、あんたはどうなの? 」

 ‥薬やってらっしゃいます??
 やっぱ‥そういう‥(薬の売人とか)人ですか‥。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...