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二章 別に生活に支障を感じなかった特異なリバーシ
4.俺の「故郷」。(side 聖)
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「え!? 」
身体がふっと軽くなり、
次の瞬間、ずんっと重くなった。
だるい、ではない。目が回る‥。立ち眩みがする。ぐるぐる回って気持ち悪い、そうちょうどそんな感じ。
「スリーピングビューティーが目覚められました! 」
なんか、メイド服きた女の子が騒いでいる‥。
スリーピングビューティーって。昨日ミチルがそんなこと言ってたな。
「王子殿下にすぐご連絡を!! 」
おお、別の「メイドさん」こっちは、メイド長って感じかな。
メイド喫茶‥かな? なにこれ‥「夢」って奴かな? 俺、夢見てるの!? うわ~! 初めての体験! 俺って夢も見ないで寝ちゃうタイプなんだよね~。
そんな俺の感激なんかお構いなしに、
「王子殿下‥ラルシュローレ第二王子殿下がおられません‥え?! 」
さっきの「メイドちゃん」大騒ぎ。
ちょっと落ち着きなって‥。頭に響くから‥。
「第二王子殿下?!
いつからここに!? ‥どちらかに行かれておられたんですか? あら、ミチル様? こんな時間にここにおいでになるなんて珍しいですね? 」
「メイドさん」ミチルをご存じで。
ってか、ここで「初めまして」は俺だけって感じだな。
「‥なんだ、ここは‥」
だけど、「ここ」は見覚えが、ある。
あそこ‥俺が住んでる東京‥とは、違う風。‥何て言うのかな、空気が違う。
ここの空気は、草原みたいないい匂いがする。
それに、日射しがもっと柔らかい。
田舎っていうか‥
懐かしい。
やっと帰って来た、って感じがする。
ああ、そうそう。俺は学生時代ここで過ごした。
ここ‥俺が下宿してた‥田舎‥
いや‥それに似てるけど‥もっと「懐かしい」‥。
学生っていっても、大学とかじゃない。たしか、初等教育‥小学校だ。
「ここは‥」
ここを俺は知っている。
俺は確かにここに昔住んでいて‥ここの小学校に行っていた。
学校っていっても、小さな教室に机を並べて‥同級生なんて、俺と幼馴染だけ。
先生は、眼鏡をかけたひょろっとした男で、俺は「インテリ眼鏡」ってあだ名付けてた。
いや、‥命名は幼馴染だっけ。
そうそう‥。ホントは、同級生は二人じゃなかったんだ。だけど、皆が俺と一緒だったらなんか、気分が悪くなるって‥。
なんだそりゃ‥どんだけ俺嫌われてるんだよ。ってそういうのじゃない。
俺は‥俺と一緒にいること、普通の人間には「無理」なんだ。
俺の魔力保有量が高すぎるから‥らしい。
魔力って‥何言ってるんだ俺。
俺まで厨二野郎の影響が‥。
いや違う。
これは「俺の」リアルな話だ。
‥話を元に戻そう。
皆には無理だから‥俺は一人ぼっちになるはずだったんだけど、幼馴染もそれにつきあってくれたんだ‥。
幼馴染は俺とずっと一緒にいたから俺の魔力に耐性があったのか、俺の両親みたいに全く魔力が無かったか‥だったのかな。
いや違う。
幼馴染は‥
「魔法使い」だった。
魔力がないわけがない‥。
耐性があったとか‥ついたとか‥俺の魔力とよっぽど相性がよかった‥とかなんだろう。
インテリ眼鏡は、そんな俺たちの先生を申し出てくれた。
インテリ眼鏡は、特殊な「魔力全調和」タイプだったんだ。どんな魔力にも馴染める特殊なタイプ。
魔力オタクで研究狂で‥でも、そんなに魔力保有量もなかったらしく、本人に使えるスキルは少なかった。
勿論魔法も使えない。
魔法が使えるのは「魔法使い」だけだ。
自分にも人にも厳しく、学問に対してはもっと厳しかったインテリ眼鏡は、一般の生徒には恐れられていたっけ。
そんなインテリ眼鏡が
「「あの子」は、只ものじゃない」
って俺たちの事「拾って」くれたんだ。
あの子って、‥俺かナツミの事。
そう、幼馴染はナツミっていう女の子だった。
黒髪に、赤紫‥なんか美味しそうなベリーみたいな色した目の女の子。目がくりっとしてて、きらきらしててすっごい可愛い。で、一方の俺は、‥うん、平凡。
オンザ眉で切りそろえた前髪、後ろで一つに縛った髪の毛は、ハニーブラウン。若草色の瞳。良く言えば、純朴。一文字で表現しろと言われたら(そんな状況は無い)「草」って感じ。あの、枯れかけの草って、金と緑と茶色のちょうどこのコントラストになるよね。
「先生! ナツミ」
先生に、俺が自分のスキルの説明をしている記憶が頭に甦ってきた。
ボールと花と石を、子供の頃の俺が机の前に置く
「『金属でなんでも止めるチートなスキル』! 」
そして、ボールを手に取ると、わざと自分に当たる様に、真上に掘り投げる。
そして、自然に落ちて来たボールを指輪を付けた手で「止める」。
受けたわけではない。ボールは、俺に当たる前、‥手に当たる前に止まり、そのままストンと不自然な軌跡を描いて真下に落ちた。
ナツミがキラキラした目で俺を見ている。
俺は、ナツミをちらっと見て、微笑みかけて
「次! 」
って宣言する。
あ~あ、あのドヤ顔。好きな子にいいとこ見せるぜ! って、張り切り過ぎ。
痛いわ~。
ホントに、俺はあの頃からナツミが大好きだった。
もう、ナツミが好きで好きでたまらなかった。
(若気の至りだな。だけど、まあ‥そこは大目に見てもらおう‥)
次に、俺は花を手に持つ。
ナツミを、そして先生を見て、一つ小さく頷く。
「状態変化! 液体! 」
「俺」が手にもった花を水に変える。
「状態変化! 気体! 」
そして、その水が地面に落ちる前に、蒸発させる。
ぱちぱち、とナツミが手を叩こうとするのを、俺は「チッチッチ」っていう、気障な態度で制する。
「もう一つある」
け~! なんだ、この気障な子供は!
我ながら、腹立つな‥。
俺は石を手に取り、またナツミと先生を見る。
「スキル・物質変質! 火の魔石! 」
それを軽く握る。
指の間から、ちょっと赤い光が漏れる。
先生の目が見開かれる。
そして、次に俺が手をあけると、さっきまで何の変哲もなかったただの石が、今は赤く透明に光る石に変わっている。
火の魔石に変わったのだ。
ああ、これ‥覚えてる。
懐かしい。楽しかった。
俺は、スキルがお披露目出来て、得意顔だったんだ。
魔力保有量がそれこそ化け物級に多かった俺は、魔法使いじゃないから魔法はつかえなかったけどスキルはいっぱい使えたんだ。
それこそ、考えつくようなことならなんだって‥。
考えつくっていうことは、即ち「出来る可能性がある」ことだからね。
あの後、
先生はにっこり満足そうに微笑むと
「スキルってのは、具体的な要求がある方が発動しやすい。しかも‥ユニークなのがいい。実にヒジリらしい。気に入った。
ところで、スキルは三つしか持てないはずだが‥。君は、花を水にして、蒸発させたね? これはセットなのかい? ‥あれはどういうことだい? 」
って、俺にお聞きになって、俺は
ふ、
ってまた、気障っぽく笑うと(もういい加減イライラする。我ながらイライラする。お前、そんなこと出来るような‥許されるような顔じゃねえって! あれはもっとイケメンがするスマイルだ!! 黒歴史って奴だな‥)
「物質を水に変えるスキルです。水は、固体、液体、気体になります」
って、説明した。この時、得意顔マックスだった。
「‥氷にも出来るってことかい? 」
「勿論! 」
にや。と、あの気障な笑顔。(お願いだから、俺と先生の記憶から、あの笑顔を消してくれ。そして、ナツミの記憶からも‥)
先生はふふ、と笑う(あの笑顔がキモかったわけじゃないよね? )
「素晴らしい。でも‥さっきの三つは全部、「状態異常」だね。君にとっては‥っていうべきなのかな。君は、‥素晴らしい「状態異常」の術者だ」
「スキルじゃなかったんですか‥」
俺のテンション大暴落。
そうそう、あの時は、恥ずかしさと悔しさで、窓から飛び出して走り去りたくなった(勿論しない、それ位悲しかったってこと)
「そんなこと無いだろう。なあに、そのうちできる様になるさ。君が納得するような奴がさ」
先生は、変わらず穏やかな微笑みだ。
ナツミも俺を馬鹿になんてしてない。
「スキルっていうのは、状態の固定だ。例えば、氷を作る場合、通常ならば、状態異常の「空気中の水素と酸素から水を作り出す」っていう作業をして、その液体を容器に貯め、その液体を状態変化させ、氷にする必要がある。2ステップだ。これを、スキル化すると、oneステップで氷を作ることが出来る。ただし、その場合は、術者は氷の属性を持っていなければならないし、スキル化するのも水と氷っていう複合の属性だから、習得しにくい。だけど、それをも状態異常で出来るんだ。‥君は、常識外れた状態異常の達人だな。いうならば、状態異常の皇帝ともいえよう」
先生が、俺を慰めようと、そんなことを言ってくれた。
だけど、あの時の俺にはそんな言葉も「気休め」にしか聞こえなかったんだっけ。
多分、属性がなんだか、ってこともよくわかってなかったから。
ただ単に「なんだ、スキルじゃなかったのか‥」って、それだけ。
(それにしても、‥状態異常の皇帝ってだっさいな。厨二か)
そんな落ち込む俺に、ナツミは
「ヒジリ、凄い。私なんて、大したこと出来ないから羨ましいな」
目をキラキラ輝かせて俺をみて、ニコニコ優しく微笑みかけてくれた。
‥天使だ。
同じ年とは思えないよ。人間が出来てるよ‥。
「ナツミ‥。そんなことないよ。ナツミは魔法が使えるじゃない。私は使えないよ‥スキルだって‥あんなだったし‥」
そんなナツミに、テンション底辺の俺、愚痴る。妬む。
‥うっとうしいなおい。
男だろ。
ってか、男か?
よくわからん感じだな。
まあ、いいや。子供に性別なんてあってない様なもんだ。(個人の意見です)
「ヒジリ。元気出して。ああ、そうだ。ブレスレットあげるわ。私がつくったの。魔道具なんだよ。一応。付与は、私の一番得意なスキルでしょ? 」
そうそう。確か、ナツミは付与のスキル持ちだった。属性は、‥風だったっけ。
「わあ、綺麗。こんなの貰っていいの? 」
「いいの! だって、ヒジリは、私の大事な、幼馴染じゃない」
「ナツミ、大好き! 」
‥うん? これ以降の記憶が無い。
それに、確かに言ったな、このブレスレットは「魔道具」。
今このブレスレットは最初にナツミにもらったのとは全然違うけど‥でも、ナツミにもらったものだった。
(そうだった。思い出したよ)
何かが「付与」されているらしい魔道具。何が?? なんで、俺、それを確かめない??
そして、今の、この状態は、何??
俺はようやく起き上がることが出来た。ベッドの背もたれにもたれ、俺の手を見る。
さっきの子供の手とは違う、すらりと伸びた、華奢な手。
うん? 華奢過ぎないか??
肩に垂れる、ハニーブラウンの長い髪。
まあ、今まで眠ってたからな。髪の毛を切っていないのも致し方あるまい。髪の毛の色はおんなじだ。問題ない。きっと目の色も(見えないけど)若草色なんだろう。
あの地味なのが、きっとそのまま大きく成ったって感じなんだろう。
それよりなによりさっきから違和感が‥。
俺は、恐る恐る胸に両手を押し付ける。
‥ふわり。
ん?
もう一度、今度はきつめに押し付ける。
ふわり。
痛い‥。間違いなく、感触があるし、強く抑えると痛いところをみると、詰め物とかではないらしい。
気のせいっていうよりは、大きい。
‥巨乳って程でもないけど。
「おお‥」
目の前では、ミチルが大爆笑し、もう一人の男が真っ赤になって目を逸らしている。
おい、ミチル。お前、何かを知ってるのか。説明しろ。
身体がふっと軽くなり、
次の瞬間、ずんっと重くなった。
だるい、ではない。目が回る‥。立ち眩みがする。ぐるぐる回って気持ち悪い、そうちょうどそんな感じ。
「スリーピングビューティーが目覚められました! 」
なんか、メイド服きた女の子が騒いでいる‥。
スリーピングビューティーって。昨日ミチルがそんなこと言ってたな。
「王子殿下にすぐご連絡を!! 」
おお、別の「メイドさん」こっちは、メイド長って感じかな。
メイド喫茶‥かな? なにこれ‥「夢」って奴かな? 俺、夢見てるの!? うわ~! 初めての体験! 俺って夢も見ないで寝ちゃうタイプなんだよね~。
そんな俺の感激なんかお構いなしに、
「王子殿下‥ラルシュローレ第二王子殿下がおられません‥え?! 」
さっきの「メイドちゃん」大騒ぎ。
ちょっと落ち着きなって‥。頭に響くから‥。
「第二王子殿下?!
いつからここに!? ‥どちらかに行かれておられたんですか? あら、ミチル様? こんな時間にここにおいでになるなんて珍しいですね? 」
「メイドさん」ミチルをご存じで。
ってか、ここで「初めまして」は俺だけって感じだな。
「‥なんだ、ここは‥」
だけど、「ここ」は見覚えが、ある。
あそこ‥俺が住んでる東京‥とは、違う風。‥何て言うのかな、空気が違う。
ここの空気は、草原みたいないい匂いがする。
それに、日射しがもっと柔らかい。
田舎っていうか‥
懐かしい。
やっと帰って来た、って感じがする。
ああ、そうそう。俺は学生時代ここで過ごした。
ここ‥俺が下宿してた‥田舎‥
いや‥それに似てるけど‥もっと「懐かしい」‥。
学生っていっても、大学とかじゃない。たしか、初等教育‥小学校だ。
「ここは‥」
ここを俺は知っている。
俺は確かにここに昔住んでいて‥ここの小学校に行っていた。
学校っていっても、小さな教室に机を並べて‥同級生なんて、俺と幼馴染だけ。
先生は、眼鏡をかけたひょろっとした男で、俺は「インテリ眼鏡」ってあだ名付けてた。
いや、‥命名は幼馴染だっけ。
そうそう‥。ホントは、同級生は二人じゃなかったんだ。だけど、皆が俺と一緒だったらなんか、気分が悪くなるって‥。
なんだそりゃ‥どんだけ俺嫌われてるんだよ。ってそういうのじゃない。
俺は‥俺と一緒にいること、普通の人間には「無理」なんだ。
俺の魔力保有量が高すぎるから‥らしい。
魔力って‥何言ってるんだ俺。
俺まで厨二野郎の影響が‥。
いや違う。
これは「俺の」リアルな話だ。
‥話を元に戻そう。
皆には無理だから‥俺は一人ぼっちになるはずだったんだけど、幼馴染もそれにつきあってくれたんだ‥。
幼馴染は俺とずっと一緒にいたから俺の魔力に耐性があったのか、俺の両親みたいに全く魔力が無かったか‥だったのかな。
いや違う。
幼馴染は‥
「魔法使い」だった。
魔力がないわけがない‥。
耐性があったとか‥ついたとか‥俺の魔力とよっぽど相性がよかった‥とかなんだろう。
インテリ眼鏡は、そんな俺たちの先生を申し出てくれた。
インテリ眼鏡は、特殊な「魔力全調和」タイプだったんだ。どんな魔力にも馴染める特殊なタイプ。
魔力オタクで研究狂で‥でも、そんなに魔力保有量もなかったらしく、本人に使えるスキルは少なかった。
勿論魔法も使えない。
魔法が使えるのは「魔法使い」だけだ。
自分にも人にも厳しく、学問に対してはもっと厳しかったインテリ眼鏡は、一般の生徒には恐れられていたっけ。
そんなインテリ眼鏡が
「「あの子」は、只ものじゃない」
って俺たちの事「拾って」くれたんだ。
あの子って、‥俺かナツミの事。
そう、幼馴染はナツミっていう女の子だった。
黒髪に、赤紫‥なんか美味しそうなベリーみたいな色した目の女の子。目がくりっとしてて、きらきらしててすっごい可愛い。で、一方の俺は、‥うん、平凡。
オンザ眉で切りそろえた前髪、後ろで一つに縛った髪の毛は、ハニーブラウン。若草色の瞳。良く言えば、純朴。一文字で表現しろと言われたら(そんな状況は無い)「草」って感じ。あの、枯れかけの草って、金と緑と茶色のちょうどこのコントラストになるよね。
「先生! ナツミ」
先生に、俺が自分のスキルの説明をしている記憶が頭に甦ってきた。
ボールと花と石を、子供の頃の俺が机の前に置く
「『金属でなんでも止めるチートなスキル』! 」
そして、ボールを手に取ると、わざと自分に当たる様に、真上に掘り投げる。
そして、自然に落ちて来たボールを指輪を付けた手で「止める」。
受けたわけではない。ボールは、俺に当たる前、‥手に当たる前に止まり、そのままストンと不自然な軌跡を描いて真下に落ちた。
ナツミがキラキラした目で俺を見ている。
俺は、ナツミをちらっと見て、微笑みかけて
「次! 」
って宣言する。
あ~あ、あのドヤ顔。好きな子にいいとこ見せるぜ! って、張り切り過ぎ。
痛いわ~。
ホントに、俺はあの頃からナツミが大好きだった。
もう、ナツミが好きで好きでたまらなかった。
(若気の至りだな。だけど、まあ‥そこは大目に見てもらおう‥)
次に、俺は花を手に持つ。
ナツミを、そして先生を見て、一つ小さく頷く。
「状態変化! 液体! 」
「俺」が手にもった花を水に変える。
「状態変化! 気体! 」
そして、その水が地面に落ちる前に、蒸発させる。
ぱちぱち、とナツミが手を叩こうとするのを、俺は「チッチッチ」っていう、気障な態度で制する。
「もう一つある」
け~! なんだ、この気障な子供は!
我ながら、腹立つな‥。
俺は石を手に取り、またナツミと先生を見る。
「スキル・物質変質! 火の魔石! 」
それを軽く握る。
指の間から、ちょっと赤い光が漏れる。
先生の目が見開かれる。
そして、次に俺が手をあけると、さっきまで何の変哲もなかったただの石が、今は赤く透明に光る石に変わっている。
火の魔石に変わったのだ。
ああ、これ‥覚えてる。
懐かしい。楽しかった。
俺は、スキルがお披露目出来て、得意顔だったんだ。
魔力保有量がそれこそ化け物級に多かった俺は、魔法使いじゃないから魔法はつかえなかったけどスキルはいっぱい使えたんだ。
それこそ、考えつくようなことならなんだって‥。
考えつくっていうことは、即ち「出来る可能性がある」ことだからね。
あの後、
先生はにっこり満足そうに微笑むと
「スキルってのは、具体的な要求がある方が発動しやすい。しかも‥ユニークなのがいい。実にヒジリらしい。気に入った。
ところで、スキルは三つしか持てないはずだが‥。君は、花を水にして、蒸発させたね? これはセットなのかい? ‥あれはどういうことだい? 」
って、俺にお聞きになって、俺は
ふ、
ってまた、気障っぽく笑うと(もういい加減イライラする。我ながらイライラする。お前、そんなこと出来るような‥許されるような顔じゃねえって! あれはもっとイケメンがするスマイルだ!! 黒歴史って奴だな‥)
「物質を水に変えるスキルです。水は、固体、液体、気体になります」
って、説明した。この時、得意顔マックスだった。
「‥氷にも出来るってことかい? 」
「勿論! 」
にや。と、あの気障な笑顔。(お願いだから、俺と先生の記憶から、あの笑顔を消してくれ。そして、ナツミの記憶からも‥)
先生はふふ、と笑う(あの笑顔がキモかったわけじゃないよね? )
「素晴らしい。でも‥さっきの三つは全部、「状態異常」だね。君にとっては‥っていうべきなのかな。君は、‥素晴らしい「状態異常」の術者だ」
「スキルじゃなかったんですか‥」
俺のテンション大暴落。
そうそう、あの時は、恥ずかしさと悔しさで、窓から飛び出して走り去りたくなった(勿論しない、それ位悲しかったってこと)
「そんなこと無いだろう。なあに、そのうちできる様になるさ。君が納得するような奴がさ」
先生は、変わらず穏やかな微笑みだ。
ナツミも俺を馬鹿になんてしてない。
「スキルっていうのは、状態の固定だ。例えば、氷を作る場合、通常ならば、状態異常の「空気中の水素と酸素から水を作り出す」っていう作業をして、その液体を容器に貯め、その液体を状態変化させ、氷にする必要がある。2ステップだ。これを、スキル化すると、oneステップで氷を作ることが出来る。ただし、その場合は、術者は氷の属性を持っていなければならないし、スキル化するのも水と氷っていう複合の属性だから、習得しにくい。だけど、それをも状態異常で出来るんだ。‥君は、常識外れた状態異常の達人だな。いうならば、状態異常の皇帝ともいえよう」
先生が、俺を慰めようと、そんなことを言ってくれた。
だけど、あの時の俺にはそんな言葉も「気休め」にしか聞こえなかったんだっけ。
多分、属性がなんだか、ってこともよくわかってなかったから。
ただ単に「なんだ、スキルじゃなかったのか‥」って、それだけ。
(それにしても、‥状態異常の皇帝ってだっさいな。厨二か)
そんな落ち込む俺に、ナツミは
「ヒジリ、凄い。私なんて、大したこと出来ないから羨ましいな」
目をキラキラ輝かせて俺をみて、ニコニコ優しく微笑みかけてくれた。
‥天使だ。
同じ年とは思えないよ。人間が出来てるよ‥。
「ナツミ‥。そんなことないよ。ナツミは魔法が使えるじゃない。私は使えないよ‥スキルだって‥あんなだったし‥」
そんなナツミに、テンション底辺の俺、愚痴る。妬む。
‥うっとうしいなおい。
男だろ。
ってか、男か?
よくわからん感じだな。
まあ、いいや。子供に性別なんてあってない様なもんだ。(個人の意見です)
「ヒジリ。元気出して。ああ、そうだ。ブレスレットあげるわ。私がつくったの。魔道具なんだよ。一応。付与は、私の一番得意なスキルでしょ? 」
そうそう。確か、ナツミは付与のスキル持ちだった。属性は、‥風だったっけ。
「わあ、綺麗。こんなの貰っていいの? 」
「いいの! だって、ヒジリは、私の大事な、幼馴染じゃない」
「ナツミ、大好き! 」
‥うん? これ以降の記憶が無い。
それに、確かに言ったな、このブレスレットは「魔道具」。
今このブレスレットは最初にナツミにもらったのとは全然違うけど‥でも、ナツミにもらったものだった。
(そうだった。思い出したよ)
何かが「付与」されているらしい魔道具。何が?? なんで、俺、それを確かめない??
そして、今の、この状態は、何??
俺はようやく起き上がることが出来た。ベッドの背もたれにもたれ、俺の手を見る。
さっきの子供の手とは違う、すらりと伸びた、華奢な手。
うん? 華奢過ぎないか??
肩に垂れる、ハニーブラウンの長い髪。
まあ、今まで眠ってたからな。髪の毛を切っていないのも致し方あるまい。髪の毛の色はおんなじだ。問題ない。きっと目の色も(見えないけど)若草色なんだろう。
あの地味なのが、きっとそのまま大きく成ったって感じなんだろう。
それよりなによりさっきから違和感が‥。
俺は、恐る恐る胸に両手を押し付ける。
‥ふわり。
ん?
もう一度、今度はきつめに押し付ける。
ふわり。
痛い‥。間違いなく、感触があるし、強く抑えると痛いところをみると、詰め物とかではないらしい。
気のせいっていうよりは、大きい。
‥巨乳って程でもないけど。
「おお‥」
目の前では、ミチルが大爆笑し、もう一人の男が真っ赤になって目を逸らしている。
おい、ミチル。お前、何かを知ってるのか。説明しろ。
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