リバーシ!

文月

文字の大きさ
60 / 248
七章 ヒジリは自立したい。

3.根無し草

しおりを挟む
(side ヒジリ)
 

 俺が戦うのは、誰かを傷つける為じゃなくて、自衛。
 そう考えたら、本当にすっきりした。
 だって、‥戦うって考えが本当にない。
 平和なこの国にどっぷりつかってるんだもの。
 それに‥(甘ちゃんだってわかってるけど)‥ナツミとホントは戦いたくなんかない。

 昔と一緒。
 ナツミのちょっかいが半端ないから自衛で戦う。同じ、今回のはちょっと‥ちょっと命の危険を感じるレベルで‥レベルが上がっただけ。

 そういうの‥望んでないんだけどなあ。


「君が望むなら‥て、なんか歌の歌詞みたい」
 昭和のね。
 もう流行らないなあ。

 小さくため息をついて、午後からの仕事の為に気持ちを切り替えた。
 パソコンの前に座って、ふと指についたままだったプルタブを抜こうとしたが‥

 ‥おお、プルタブ取れない。

 そういうことって割とあるが‥物が物だ。
 いい年した男が、プルタブを指にはめているってどうだ。
 『止める』っていうからには、手に力を集めなくちゃいけない‥。中指・薬指の方が手の中心って感じがする。そんな理由で取り敢えず薬指にはめたんだけど‥。
 おかしいな。抜けない。
「聖、なに遊んでんだよ」
 国見に笑われ、中川さんには
「しょぼい婚約指輪ですか? 」
 ってとんでもないこと言われた。
 ‥その発想‥!


 結局会社にいる間、そのプルタブが指から外れることは無かった。
 国見が引っ張っても、中川さんが石鹸を付けてくれても、それは取れなかった。
 佐藤さんにだけは‥見つからないようにした。(あと吉川にも)

 ‥何言われるかわからん。

「なんとなく、‥でももう少しで取れそうな気が‥」
 で、現在夕食を母さんが用意してくれている間も、俺はうんうん唸りながらプルタブと格闘していた。
 ‥おかしい、どう考えてもおかしい。プルタブと俺の指の間には隙間もあるはずだのに‥おかしい。
「ったくもう。明日になったら、何だったのっていう感じでぽろっと取れるわよ」
 台所で母さんの声がする。
 ‥無責任なことを‥。
「っっよ! 」
 そう思った瞬間、急に頭を上げてしまった。
 プルタブを引っこ抜こうと込めた力全部込めて、だ。
「聖! 急に頭を上げないで~!! 」
 母さんが叫んだのが聞こえた。
 あ、母さんに当たっちゃった。で、母さんが持ってた皿が母さんの手から離れて、俺に‥
 降ってくるはずだったのに‥?
 母さんが持ってたコロッケは、

「コロッケが‥っ! 」

 俺を綺麗に避けて、俺の横に着地した。続いて、皿が着地する。
 同じく、俺を避けて、だ。
 とん、
 と軽い音がして、着地した。
「ああ‥? 」
 その途端、プルタブがぱん、と綺麗に割れた。

 金属で何でも止めるチートなスキル

 ‥そうか、プルタブで止められるのは、この程度のものなのか。
 ボールは、プルタブでは止められなかったってことだったのか。
 あの時は、ボールの力に負けて、プルタブが割れた。それでも、‥多少なりとも軽減されていたのかもしれない。
「なるほど‥ねえ‥.」
「ヒジリ、あんた大丈夫なの?! 」
 母さんが慌てて俺を見たけれど、俺は、ただ割れたプルタブをじっと見つめていた。
 この前も、(ある意味)‥成功してたってわけか。
 多分、プルタブだったから駄目だったってこと。
 金属によって、止められるもの(強さ? )が違う。
 多分、この仮説は間違っていない。
「大丈夫‥」
 俯いたまま母さんに答えた俺は、顔が自然ににやけるのを堪えることはできなかった。
 大丈夫だ‥、寧ろ‥
 寧ろ希望が一つ生まれた‥。


「ふうん、成程ねえ」
 あの後すぐミチルから連絡を貰って、今はミチルの例のアパートにいる。
 いつもは直ぐにスキルの練習をするのだが、ヒジリは先に今日の話を聞いてもらった。
 何か練習の参考になるかもしれないって思ったからだ。
 ミチルにハーブティーをいれてもらって、サイドテーブルに向かい合って座る。
 一つしかないクッションをミチルは俺の為に譲ってくれ、断るのも何なので、お尻の後ろに置いてもたれるように座っている。
 ミチルはベッドにもたれるように座っている様だ。
 この部屋に、すっかり慣れてしまった自分が居て、‥ちょっと複雑な感じがする。
 先生であるミチルに全面的に時間を合わせる。でも‥どうしても、合わない時は断ったりも、する。
 俺から、「会いたい」とかいうのは、勿論だけどない。
 一度だけ練習中に12時になってしまって、‥ミチルを俺がベットに寝かしつけたことがあった。恋人とかじゃないから、合い鍵を貰っているわけではない。だから施錠も出来なかったし、‥何も言わずに帰るのもなんかはばかられて、朝までミチルの傍に座ってた。
 この頃俺は、あっち(夜の国)に帰っていない。
 ミチルだけが帰っているのだ。
 スキルの特訓ができるまで帰る気もない。
 今のまま、ナツミと戦っても勝率はゼロだ‥。
 ナツミも含めた俺の敵がこっちに来ることも‥あるかもしれないけど、こっちにいる方があっちにいるよりはずっと安全なはずだ。

 つまり逃げてるってこと。

 ‥我ながらかっこ悪い‥。
 そんなことを考えながら、ミチルのベッドサイドに座っていたら、朝が来たらしく、ミチルが目を覚ました。
 ミチルと目が合って、
 ‥しまった、ちょっと引くわな。と思って、
 つい
「‥おかえり? 」
 おはようっていうのも、変かなと思って、でも何となく頓珍漢なこと言った俺に、
 ミチルはふわっと‥それこそ花が咲くように笑って

「朝、目が覚めるのが嬉しいって、初めて思った」

 って言った。
 思わず血液がどうにかなったのか、って程顔に集まってきて、‥焦った。
 こんなに、今まで生きてきて、人に喜ばれたことがあっただろうか? って思った。
 嬉しいっていうより、‥ただ恥ずかしくって、何でだろう、凄くミチルの事愛しいって思った。
 俺は、気が付かないうちにミチルの事好きになったのだろうか? って思ったけど、‥ミチルと別れて会社でコーヒーを飲んで、国見があくびするのを見てたら、
 ‥ああそうか、あれって、眠らない総てのリバーシの憧れだ。
 って気付いた。

「朝起きて誰かがいる。そういうの、いいよね。憧れる。‥愛する人の体温を感じながら、まどろんでみたい。でもさ、‥よっぽど信用した相手しか、同じベッドで寝ることなんて出来ないよ。‥寝てる間は、それこそ、その人に命を預けることになる。だけど、‥寧ろ、その愛する人の命を自分は守ることが出来ないっていうのが‥嫌だね」
 いつもより、一割増色気のある表情で「アダルティ」なこと言った色男なミチルにちょっとドン引きしながら、
「ふうん、‥俺は、そういうのじゃなくて‥、もっとささやかなんだけどさ‥朝「あと、5分‥」って布団の暖かさをかみしめたり、‥そういうのしてみたい。‥俺たちは‥「春眠暁を覚えず」も知らないし「二度寝の幸せ」も知らないんだもんね」
 俺も、概ね同意の姿勢を示した。
 そんな俺たちのことを、ラルシュが
「そういうものなんだねぇ」
 なんて感心した様な顔で見て、何度か頷いてた。
 そんなある日の何気ない会話を、ふと思い出した。

 ‥生憎、アダルトな事情は俺たちの間にはあり得ないが、‥同類として、喜んでもらえたのは、‥まあ、いい事した‥かな‥。
 何となく、納得した。


「根無し草じゃないって、こんなにうれしいことだった思わなかった」
 あの時のことを、時々思い出しては、嬉しそうに口にするミチルには‥ちょっと‥重いかなあ‥なんて思ってしまった‥り?

 ミチルは、自分のことを時々、根無し草って言う。

「あっちと地球。どっちにも属さない根無し草」
 って。
 あっち(夜の国)に行って、もしかしたら、こっち(地球)に帰ってこれないかもしれない。
 ‥悪い魔法で封印される‥とかかな? よくわからないけど、ないとは言い切れない。
 こっち(地球)の身体が、帰ってきたら‥『無くなっている』ことがあるかもしれない。
 例えば、家が火事になって肉体が燃えてなくなってる‥とか、誰かに殺されてる‥とか。(こっちは結構簡単に想像がつく)

 そして、それはどちらにしても死とイコールなのだ。

 あっちでの死は、‥こっちで単純に『目覚めることのない突然死(植物状態? )』を表し、こっちでの死は、‥もっと悲惨だ。行き場のない精神は、‥そう長くは持たない。
「自分が知らないところで自分が死ぬ‥ってのが、怖い。身体と心が一緒‥そういう当たり前の生活がしたい。
 昔はそんなこと思わなかったから、‥年を取ったなって思う。思えば、昔は怖いもの知らずだったんだろうね。家には誰かいて、‥俺の空の身体を預けることになんの躊躇もなかった。ミチルは「一度寝てしまったら、起きない子だから」って笑われておしまい、だ。ただ、あっちの世界が面白かった。ラルシュが毎日いたわけじゃないけど、時々は起きてて、一緒に遊んだり、ただヒジリが起きるのを待って‥眺めてたり」
 ふふ、と笑うミチルには‥ちょっと引いたけど‥何となく言ってることは分かった。

 リバースの孤独は、‥自覚してしまうと、本当に深いものだから。

「いつか、そんな人が現れたらいいな」
 だけど、俺にはミチルを励ますことしか‥できないんだ。



(side ミチル) 


 ‥いつからかな、欲が出た。普通の人が羨ましいって、妬む気持ちが産まれた。愛する人を、子供をその腕に抱いて眠る人が‥ただ、羨ましい‥
 俺は、目の前で必死にスキルと格闘しているヒジリを見ながらそんなことを考えていた。
 髪を短く切って、男の様に振舞うヒジリ。だけど、ミチルにとってヒジリはいつだって、初めて会った時と同様に美しい少女だった。
 20歳を過ぎているとはとても思えない幼さの残る顔だち。艶のある美しい白い肌。ハニーブラウンの柔らかい髪。黄緑の宝石みたいな目。何もかもが儚くって綺麗なヒジリ。
 そんな彼女が、彼女を害する者の為に、強くなろうと努力している。
 俺が守ってやりたい。‥でも、きっとできないんだろうと思う。俺は、あっちの出身でもないし、戦闘系は不向きだ。

 逃げ切れるなら、逃げてしまえばいいのに。

 ‥でも、彼女はそれを許さないだろうし、それを勧めた俺を軽蔑するだろう。
 彼女に嫌われるのは、嫌だ。
 きっと、故郷である夜の国も捨てられないだろう。
 俺は、‥夜の国の出身じゃないから、‥こっちで愛する人が出来たら、‥きっと夜の国を捨てるだろう。
 今度こそは、って思ってかっては、合い鍵を渡したりする相手もいた。
「朝は、5時以降にしかこない。夜中の12時には帰って」
 初めに必ず約束をする。
 ‥そのうちどうでもよくなるだろう。そう思っても‥信用できるって俺が思えるまで、‥この約束は絶対だ。
 だけど、俺が「もういいか」って思うより先に、‥俺が信じた彼女たちは、俺の約束を「忘れて」しまう。12時前に、‥最後は追い出すように‥帰ってもらった彼女たちを見て、俺の恋は一気に冷めてしまう。
 目が覚めた時に、「‥つついてもさすっても起きない」って膨れ面をする彼女を見た時も、‥同様だ。
 いつか、もっと信用できるようになったら言うから‥そう思ってるのに。
 ‥誰かと付き合っても、未練たらしく夜の国が捨てられなかったのは‥でも俺が一番彼女たちの事信用出来てなかったのだろう。


「ヒジリ。ずっと俺の傍に居て。俺は、ヒジリの為ならあっちの世界に住んでもいい‥夜の国出身のヒジリは本来ならあっちでしか生きられないから。‥だけど、今ヒジリはここにいる。問題がある様にも思えない。‥あっちに帰らないでも、ヒジリは‥ただ生きてるだけなら、そう魔力も消費しない。だから、こっちで一緒に住もう。俺は、‥もう、根無し草ではいたくない‥。そして、ヒジリも根無し草のままではいさせない。
 俺なら、同じリバースの俺なら、ヒジリに寂しい想いなんてさせない‥」
 

 その想いは、でも、まだヒジリには言えない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...